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アルモアの星伝説  作者: トド
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第二十一話 第三の勇者

早朝ドワーフの街を出た俺たちは、街の東の外れにある沼への扉を開けた。

すぐ目の前には薄い霧が立ち込めた、不気味な悪魔の沼が広がっていた。


この沼の水には毒素が含まれ、歩くたびに体力が少しずつ消耗されるので、無理をすると進む事も戻る事も出来なくなり、命を落とす事になる。

沼の深さは膝上~胸のあたりで、背の低いリサでも足は底に付くのだが、水が濁っているので、常に周囲を警戒して進まないと、敵の襲撃に気づくのが遅れて命取りになる。

沼での隊列はアレン、エレナ、リサ、ネイルの順で行動した。


この悪魔の沼のどこかにある洞窟にお宝が隠されているのだが、とにかく沼の中での戦いは不利なので、周囲に警戒しつつ、また適度に回復魔法を使いながら、出来るだけ速いペースで進んだ。水中からの不意打ちに備え、アレンはガードの魔法を発動したのは言うまでない。


沼の地形に沿って東に進み、一時間が過ぎようとした時、巨大な怪魚が襲って来た。

敵は三体だが、身体の半分以上が水中にあるので、リサの炎系の魔法も、エレナの風属性の魔法も効果が半減され、戦いは不利になると思われた。

ところがそんな心配をよそに、リサはドレインの魔法を見事に使いこなし、敵に大ダメージを与えていた。

しかも敵から奪い取った体力で、沼の毒で奪われた自分の体力も補えるので、まさに一石二鳥なのだ。

それに俺とエレナがミスリル製の武器に替えたことで、攻撃力もかなり上がっており、不利な条件でも十分戦う事が出来た。


沼の中を歩き続けること三時間。リザードマンやマーマンといった水辺の魔物と戦いながら、ようやく悪魔の像がある場所にたどり着いた。

巨大な悪魔の像は、その姿を両側のかがり火に照らされ、見る者すべてに恐怖を与えた。

かがり火の炎の色がどす黒く見えるのは、恐らく沼から湧き出る天然ガスを使用しているからだろう。

この悪魔像の裏に、宝の洞窟が隠されていると思われるのだが、困った事にこの巨大な像を動かす術がどうしても見つからなかった。


「ダメだな、どうやってもこいつを動かす事が出来ねえぜ」


散々調べ尽くした結果、とうとうネイルが音を上げた。


「きっと何か方法が隠されているはずだ!

ここは一旦置いといて、別の場所を探そう」


明るいうちに解決の糸口を見つけないと、暗くなるとそれこそ命取りになると思い、この場を捨てて沼の東を探索した。


ここから東の方角は、突き出た岩や朽ちた樹木が生い茂り、迷路のようになっており、今まで以上に注意が必要だったが、苦労の末ついに別の洞窟を発見した。

洞窟の中には様々な仕掛けや隠し部屋が存在したが、アレン達はそのすべてを撃破し、そしてついに悪魔像の謎を解く鍵を握った部屋にたどり着いた。


その部屋は薄い紫色の石畳みが敷かれた美しい部屋で、奥に二体の女神像があり、その間にある宝箱の中には”光の玉”が入っていた。

そしてその壁面には黄金のプレートがはめ込まれ、文字が刻まれていた。


『王家の聖なる石を求めんとする者、悪魔像の前に立ち”あかり”を消せ』


「あかりを消せ?

これって、かがり火を消せっていう意味なのかしら?」


エレナの言葉に謎を解く可能性を感じた俺たちは、ネイルのエスケープを使い、悪魔像の所へ急いで戻った。


不気味な悪魔の像が、左右のかがり火に照らされている。

そのかがり火を二つとも消し、もう一度悪魔像を調べてみると、足元の台座の部分に文字が浮かび上がっているのに気づいた。


カ コ ノ ゾ ウ リ ノ

ヒ カ リ ガ ア シ ニ

ハ カ リ チ ホ カ ヲ

ア シ カ ラ ベ リ ヨ


「な、なんだこりゃ?

一体何の呪いなんだ?」


まったく意味の分からない文字の並びを見て、ネイルがボヤいた。


「これは何かの暗号かな?列を替えて読んでも・・・ダメだな・・・・。」


アレンもこういうのは苦手なようで、早々と行き詰ってしまった。


「エレナ、この意味わかる?」


リサなどは最初から考える気も無く、エレナに頼っていた。


「そうね~。

どういう意味なのかしら・・・」


エレナは黄金のプレートに記されていた文字を、もう一度口に出して呟いた。


『王家の聖なる石を求めんとする者、悪魔像の前に立ち“あかり”を消せ』


「灯りを消せ・・・・」


「ア カ リ を消せ・・・・」


「あっ!!私分かったかも!!」


エレナはそう言うと、俺たちの方を振り向きニッコリ微笑んだ。


「すげえ!さすがはエレナちゃんだぜ!!

で、どういう意味なんだ?」


「灯りを消して浮かび上がった文字から、さらに“ア”と“カ”と“リ”の文字を消せばいいのよ」


コ ノ ゾ ウ ノ

ヒ ガ シ ニ

ハ チ ホ ヲ

シ ラ ベ ヨ


「この像の東に八歩を調べよ・・・って読めるわ!」


俺たちはその場所の壁を調べてみると、小さな穴が開いているのを見つけた。

その穴に光の玉を入れると、悲鳴のような音が悪魔像から聞こえ、激しい振動と共に沼の中へと沈んで行った。


ゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・


悪魔像の沈んだ後には洞窟の入り口が開き、その先には床に十字にクリスタルの張られた綺麗な部屋があった。

そこには二体の女神像の間に赤色と青色の宝箱があり、赤色の宝箱の中にはエルフのムチが、そして青色の箱の中には、ブルーに輝く美しいロイヤルストーンのネックレスが入っていた。




ドワーフの王ボルグは、玉座に深く腰掛けて考え事をしていたようだが、何やら外が騒がしい事に気づき、のそっと立ち上がった。

ちょうどそこへアレン達が扉を開けて入って来たので、ボルグは再び玉座に腰を掛けると、


「どうした、今日は何か用か?」


不愛想な顔で声を掛けた。


「うん、ドワーフの鍵を返しに」


アレンはドワーフの鍵をポケットから取り出して、ボルグに見せた。


「カギを返しに来た?ガッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・・。

そうか、やっぱりあきらめたか!だから言わねえこっちゃねえ!!

ワシが言った通り、最初から無理だったのだ!!

だが何も恥じることはないぞ、誰がやったって結果は同じだ。」


ボルグは自分の思った通りの結果が出たと勘違いし、愉快そうに笑った。


「いや、違うんです。

ロイヤルストーンはもう手に入れたので、それで鍵を返しに来たのです」


「な、な、なんだと!!?もう手に入れた?!そんなバカな!!」


ボルグは玉座から身を乗り出して、アレン達を直視した。


「えっ、へっ、へ~~~!

嘘じゃないよ、ほらっ!!」


そう言うと、リサは首に掛けていたロイヤルストーンを外し、高く上げてボルグに見せた。


それを見たボルグは、しばらく空いた口が塞がらなかったが、やがて大きくため息をつくと、「う~~~~~む」と唸った。


「こいつは驚いた!さすがはセロ殿の見込んだ連中だ!いや、数々の無礼、失礼いたした!

見た目で判断したワシの未熟を許してくれ」


ボルグはそう言うと、アレン達に深々と頭を下げた。


「い、いえ、俺たち別に何とも思っていないから・・・」


アレンは慌ててそう答えた。


「私たち、よく言われるんです。ぜんぜん、強そうに見えないって」


エレナもすぐにボルグにとりなした。


「それじゃ、カギをお返しします」


アレンがボルグにカギを渡そうとすると、ボルグが手を上げて止めた。


「いや、そのカギはもう必要ない!

沼の宝も無くなったことだ、欲に目のくらんだ人間も、もうこの沼には近寄らないだろう」


「それじゃ、この鍵はもらっておきます」


「うむ、では、お前たちが預けた大事な物をお返ししよう!」


ボルグの命令で、護衛兵がテーブルの上の宝箱の鍵を開けた。


アレンは宝箱から緑の結晶石を取り出した。

そしてイリヤの涙を取ろうとした時、思わず手が滑って下に落としてしまった。


「あっ、しまった!」


イリヤの涙はコロコロとボルグの玉座の前まで転がった。

アレンが慌ててそれを拾おうとした時、それを見たボルグがいきなり血相を変えて叫んだ。


「な、なに!!!それは?!!イリヤの涙!!!」



アレン達の周りを、武器を持った大勢のドワーフ兵が囲んでいる。

目は血走り、ボルグの命令一つで容赦なく襲い掛かる連中だ。


「答えろ!そのイリヤの涙をどこで手に入れた!!

返答次第では生かしてここから帰すわけにはゆかぬ!」


ボルグの真剣な目を見ると、これは決して脅しでは無いことがすぐに分かった。


「おい、おい!こりゃ、どうなってんだ?!

おめえの持っているそのイリヤの涙ってのは、一体何なんだよ!!」


さすがのネイルも、いつものにやけた顔はどこかへぶっ飛んでしまっている。


エレナはボルグがイリヤの涙を知っている事を不審に思い、アレンに耳打ちした。


「血相変えて怒鳴っているところを見ると、それ、あの人の大切な物なのかしら?」


「どこで拾ったの?悪魔の沼?」


リサは初めて見たイリヤの涙を、まじまじと見つめながらアレンに尋ねた。


「これは・・・。

どこで手に入れたかって、言われても・・・」


「何だと!!貴様、答えられないと言うのか?!」


「おい、おい、あのおっさんマジでヤバイぜ!!

なあ、そんな物さっさとあのおっさんに渡して、ここからずらかろうぜ!」


「ダメだ!このイリヤの涙は、父さんから預かった大切な物なんだから!!」


アレンはネイルにそう言うと、ボルグの方へ向き直り大声で答えた。


「これは、どこかで手に入れた物ではない!!

俺が父さんから預かった、大切な物だ!!絶対に渡せない!!」


そう言うとスラリと剣を抜き、攻撃の構えを取った。


「ちっ!しゃあねえ、やるか!!」


ネイルの一声で、エレナ、リサも即座に戦闘態勢を取り、まさに一触即発の緊張状態となった。


そしてドワーフ兵が一斉に斬りかかろうとした瞬間、ボルグは大声で兵士を制した。


「待て!!!」


「父親から預かった物だと?うむむ・・・・・・・・・・。

貴様!出身地はどこだ!!」


アレンは攻撃の構えを崩さず、その問いに答えた。


「ドルドガ!」


「ドルドガ?!」


ボルグはアレンを初めて見た時から、気になって仕方がなかった疑問が、今ようやく解決した。


「あ~~~~~~っ!!想い出したぞ!!!」


「お前!アレンじゃないのか?ジェイド殿の息子の!!」


「えっ!!どうして、俺や父さんの名前を?!!」


「ガッ、ハッ、ハッ、ハッ!!やっぱりそうか!!

いや~~~っ!!こんな立派な青年になっておるから、今まで全く気が付かなかったぞ!!」


ボルグは玉座から飛び出し、そう言うと嬉しそうにアレンの肩を叩いた。

その瞬間、アレンの体は軽く2メートル程ぶっ飛んでしまった。

だがそんな事はお構いなしに、ボルグは玉座の前まで戻ると、


「アレン、こっちへ来い!こっちへ!!」


そう言って、アレンを自分の横へ並ばせると、部下へ向かって声を張り上げた。


「おい!!お前たち、よく聞け!!

ここにいるアレンはな!!ワシの親友のジェイドの息子だ!!」


「おおーーーーーーーーっ!!」


ドワーフ兵たちは、全員驚きの声を上げた。


「いや、最初に会った時から、どこかで見た事があるような気がしていたのだ!!

まさか、あの泣き虫で、寝しょんべんたれのアレンが、こんな立派な青年になっておるとはな!!ガッ、ハッ、ハッ、ハッ!!こりゃ、わからぬはずだ!!」


ボルグは愉快そうに笑い飛ばしたが、アレンは恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。

リサとエレナが顔を見合わせて笑っている姿が見えたのだ。

だが次の瞬間、リサ達が驚くとんでもない爆弾発言が飛び出した。


「お前たちには、前に話した事があると思うが、アレンの父、ジェイド殿は・・・。

魔王を倒した伝説の勇者の一人!誇り高き“マイヤの騎士”だ!!」


「ええ~~~~~っ!!!」


リサ達が驚いて飛び跳ねた!

当のアレンは、何の事かまだ飲み込めず、ポカンと口を開けている。


「アレンのお父さんが?」


「おじいちゃんが捜していた、黙示録第三巻を持つ・・・。」


「あの伝説の勇者の末裔かよ?やってらんねえな!?」


アレンはハッ!と我に返ると、ボルグに尋ねた。


「ちょ、ちょっと・・・。それはどういうこと?」


「お前、親父殿から何も聞いとらんのか?」


「う、うん。」


「よし!それではワシが話してやろう」


ボルグは玉座にドッカと腰かけると、アレン達に説明した。


「アルモア王と共に闇の大魔王を倒したのは、暗黒魔導師のヴェルガ、聖魔導士のジェロム、そしてイリヤ王妃の妹君であるマイヤ様だ!」


「え~~~~っ!第三の勇者って、女の人だったの?」


リサが驚いて尋ねた。


「そうだ!剣を取れば、キングラム一の腕前と言われた騎士だ!!」


「おいアレン!おめえ、すげえ由緒正しい家柄じゃねえか?なのに、なんでもっと目立たねえんだ?」


「そんな事いったって・・・」


「リサの家を見てみろ!すんげえお屋敷に住んでいるのに、おめえの家は平屋のボロ屋じゃねえか!不公平だと思わねえか?

おめえ、もっと目立つようにアピールしろよ!何ならオレがソーネリアの王様に掛け合ってやろうか?」


「い、いいよ、そんな事しなくても・・。」


(なんの話をしとるんじゃ、この二人は?)


ボルグはしばし呆気に取られていたが、


「ウオッホン!!」と咳払いをすると、話を続けた。


「実は、マイヤ様の一族が表に出なかったのには理由がある!」


「表に出なかった理由?」


リサは同じ勇者の末裔なのか、興味津々で話を聞いていた。


「そうだ!マイヤ様の一族は、ある秘密の任務のために、表社会から姿を消したのだ」


「秘密の任務?なんだ、そりゃ?」


「ある御方をお守りする、重要な任務だ!ところで、お前たちはどこまで知っておるのだ?つまり、伝説の魔王の事について・・・。」


「魔王はアルモア王に倒されたけど、本当は死んでなくて~。

しかも、こないだ復活したって!」


リサがあっけらかんと答えた。


「お、お前たち!どうしてそんな事を知っておるのだ?」


これにはさすがのボルグもビックリである。


「おじいちゃんが言ってた!!」


「??お、おじいちゃん?」


意味が分からず、ボルグもかなり戸惑っているようなので、エレナがリサの代わりに答えた。


「リサのおじいちゃん、暗黒魔導師のガルダイン様なの」


「な、な、な、なにーーーっ!暗黒魔導師のガルダイン殿!!?」


「なるほど、それでこの娘は暗黒魔法を!?」


ボルグは噴き出した汗を、慌てて拭った。


「秘密の任務って、なにさ?早く教えて!!」


相変わらずリサはマイペースである。


「うむ、いま言ったように、実は魔王は死んではいなかった。

それが分かったのは、イリヤ王妃に掛けられた呪いが解けなかったからだ!!」


「石にされた話の事かい?」


ネイルが尋ねた。


「そうだ!いかなる呪いも、かけた本人が死ねば、術も解けるはず」


「イリヤの呪文は解けなかったんだ・・・」


エレナがポツンと呟いた。


「そうだ!魔王の肉体は滅びたが、魂は生き残った!このままにしていたのでは、いずれ必ず蘇ってしまう。そう考えたキングラムの人々は、ある呪文をあみだした」


「死を与える魔法ハマン!!だが、その魔法を使えるお方は世界に一人しかおらぬ。

その御方とは、キングラムの王位継承者である・・・。

風の谷、テローペの巫女!!」


「テローペの巫女!!?」


エレナの顔が一瞬強張ったように見えた。


「魔王を倒す事の出来るのは、ハマンの魔法を使えるテローペの巫女様だけ・・・。

自分の姉を石にされたマイヤ様は、自ら進んで巫女をお守りする任務。

つまり!巫女の護り手となったのだ!」


「巫女の護り手・・・。」


アレンは何か心に刺さるモノを感じた。


「だから敵に知れぬよう、時が来るまで密かに隠されてきたのだ!!」


「アレンよ!!キングラムでは、魔王を倒したマイヤ様の功績を称え、以来最高の騎士に与えられる称号を「マイヤの騎士」と呼ぶようになった。

アレン!お前の父親は、誇り高きマイヤの騎士だ!!お前も立派な青年に成長した!!これからマイヤの騎士を名乗るがよい!!」


「マイヤの騎士・・・巫女の護り手・・・。」


アレンは自分の知らない父の事を聞かされ、頭の中が混乱していたが、マイヤの騎士の称号をもらった事で、今までにない強い使命感で全身が震えた。

そして、どうしても気になる事があり、ボルグに尋ねた。


「ねえ、ボルグのおじさん!テローペの巫女って、一体どんなお方なの?」


「それが、実はワシもまだお会いした事がないのだ!」


「一年前、ワシは巫女様に会えるのをとても楽しみにしておったのだが・・・。

いざ、テローペに行かんとした時、いきなり火山が爆発しおって!ワシの一隊だけが、取り残されてしまったのだ!

それ以来、何とかテローペに行く道はないか、必死に捜索したのだが・・・。

残念な事に、見つけることができなかった」


「だが、聞くところによれば、テローペの巫女様は、とてもお美しいお方だそうだ!」


アレンはその言葉を聞くと、すぐにエレナの方を向き、


「へ~~っ・・・。

じゃあ、ひょっとしたら・・・エレナがテローペの巫女だったりして?」


「えっ?」


唐突なアレンの言葉に、エレナはビクッとなった。


「なに?」


ボルグはそう言うとアレンの横へ行き、そしてまじまじとエレナを見た。


「う~~~~む。

なるほど!これは確かに美しい娘さんだ・・・。

しかもそのような身なりをしておるが、高貴な気品さえ感じられる。

いや、本当に美しい娘さんだ!!」


ボルグの言葉にエレナの顔は真っ赤になり、顔を隠して後ろを向いてしまった。

しかしアレンはエレナが褒められたことが嬉しくて、ついつい感情が顔に出てしまった。


「うん?こらアレン!!お前、なにニヤニヤしておるのだ?

おっ!そうか!!さては、お前たち恋人同士なのだな!!?」


「ガッ、ハッ、ハッ、ハッ!!こやつ、なかなかやりおるわい!!」


ボカッ!!!


ボルグは愉快そうにアレンの肩を叩いた。


だがボルグの怪力で叩かれたアレンは、まるで踏みつぶされたカエルのように、その場にベチャっとつぶれてしまった。

しかしボルグはそんな事はお構いなしに、


「よし!!魔王を倒し、再びこの国に平和が訪れたら、ワシがお前たちのために、世界一立派な結婚式を挙げてやる!!!楽しみに待っておれ!!」


「ガッ、ハッ、ハッ、ハッ!!」


そう言うと、笑いながら玉座へ戻って行った。


「ねえ、アレン大丈夫?」


エレナは慌てて、つぶれているアレンを助け起こした。


「あたた・・・・」


「まあ!大変!!鼻血が出ているわ!

ちょっと待ってね、いま手当してあげるから・・・」


エレナは急いで応急処置を施した。


「鼻血は止まったけど、おでこもすりむいているわ。

また後でお薬塗らなくちゃ・・・・」


「ありがとうエレナ。もう大丈夫だよ」


アレンはフラフラしながら前を向いた。


ボルグは玉座に戻ると、今度はリサに話しかけた。


「ところで、小さい娘さん。

ガルダイン殿はどうしておられるのか?キングラムの招集に応じ、すでにテローペに行っておられると思うが・・・」


「えっ?キングラムからの招集?そんなのなかったよ!」


「なに?!キングラムから連絡が来ていないだと?そんなバカな!!一年前に行っているはずだ!」


「おい、おい、そりゃおかしいぜ!!ガルダインさんは、最近になってようやくテローペの巫女の事を知ったんだぜ!!」


「いま、おじいちゃん達、テローペに行くために、ソーネリアの王様とネルソン様とで、王の道の復旧作業をしているのよ!」


「なに?!王の道の復旧作業だと?ばかな!あの道はキングラムによって封印されているはず」


その疑問にはネイルが答えた。


「ガルダインさんが、封印を解いたんだよ!だが、火山の爆発で道がつぶれ、思うように作業が進まねえようだぜ」


「なんと!!王の道の封印が解けただと!!ならば、こんな所でモタモタしておられぬ!!一刻も早く王の道を直し、テローペに行かなくては!!」


「それがダメなんだよ。

ソーネリアからドリガンに行く道が、魔物に壊されてしまったんだ」


アレンがレゼムの街で聞いた情報を説明した。


だがボルグはこの辺りの地形を熟知していた。


「ソーネリアから行くことが出来ぬなら、谷の入り口の旧道から、ドリガンへ抜ければよい!!」


「えっ?そんな道あんの?」


リサの質問に、ボルグは大きく頷いた。


「ああ、あるとも!おそらく火山の爆発で、岩がゴロゴロ転がっているだろうが・・・。ワシらドワーフは、岩を砕いたり、洞窟を作ったりするのが得意な種族だ。

ドリガンへ抜ける道ぐらい、何とかなる。

あのカルデラ湖を越える事を思えば、簡単な事だ!!」


そう言うと、ボルグは兵士たちに大声で命令した。


「おい!ワシらも王の道の復旧作業に行くぞ!!急いで準備をしろ!!!」


「ははーーーーーーつ!!」


兵士達は一斉にこの部屋から駆け出した。


「アレン!ワシは三日後にドリガンへ向かうぞ!!」





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