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アルモアの星伝説  作者: トド
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第十一話 マードラの遺跡 その三

次の日、俺たちは四番の島まで一気に進むと、壁の亀裂を爆破して出現した通路の探索を開始した。

ここはかなり広いダンジョンになっていて、道も何本も枝分かれしているようだ。


複雑な迷路のように入り組んだダンジョンを探索していくと、地下水が溜まって小さな湖が出来ている場所に出くわした。

その湖の真ん中には小さな島があり、そこに石で作られた祠の様なものが祭られていた。


「何これ?見るからに怪しいよな~」


「こりゃあ、お宝の匂いがプンプンするぜ!さっそくいただくとするか!」


俺の言葉に即座に反応したネイルが、湖の中に片足を入れようとした時、突如湖面にさざなみが発生し、巨大なナマズの魔物が勢いよく目の前で飛び跳ねた。


ざっぱ~~~ん!!!


「どっひゃ~~!!」


慌てて湖から飛びのいたネイルは、口をパクパクさせてそのまま座り込んでしまった。


「あんたバカじゃないの?あの小島まで泳いで行くつもりだったの?」


「いや、面目ねえ。目の前のお宝につられてつい・・・」


呆れた顔で言うリサに、苦笑いで答えるネイルであった。


確かに中央の小島まではわずか30メートルほどの距離しかない。その気になればあっと言う間に泳ぎ切る事が出来るだろう。あの怪魚さえいなければ・・・。


それから二時間ほど、小島の周りを悠々と周回する魔物を前に、俺たちは途方に暮れていた。

俺やネイルの物理攻撃では相手に届かないし、水の中に入れば・・・いや、考えただけでアウトだろ。

エレナの弓矢や風の魔法も水の抵抗で効果は薄いし、リサの炎の魔法など何の役にも立たないのだ。


「ふ~~~っ・・・」


成す術も無く、エレナが上を向いてため息をついた時であった。


「あっ!あれは?」


エレナの声に振り向くと、彼女は湖を囲む崖の一点を指さしていた。

見るとそびえたつ断崖の中央の部分に、一か所浸食によって出来たと思われる大きな穴が開いていた。


「ねえアレン、あの空洞に爆弾を仕掛けてみてはどうかしら?」


「なるほど!爆破でがけ崩れを起こせば、湖の一部を埋める事が出来るかもしれないな!」


俺とネイルは崖をよじ登り、出来る限り大量の岩が崩れるように爆弾をセットした。


「よし!点火するぞ!」


シュッ!


チリ、チリ、チリ・・・・ドッカーン!!


ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ・・・。


ザッパーン!!


狙い通り崩れた崖は湖の一部を埋め尽くし、中央の小島へ渡る事が出来た。


目的の場所には二つの宝箱があり、一つ目の宝箱には2000ゴールド入っていた。

そしてもう一つの宝箱には、三つ目の紋章のカケラが入っていた。


「おぉ!やったぜ!!

こいつが見つかれば、こんな場所に長居は無用だぜ!!」

ネイルはエスケープの魔法を発動させ、一気に出口へ移動した。


正面の扉の前で、プレートに三つ目の紋章のカケラをはめ込んでみた。

するとカケラは隙間なくピッタリと合わさり、その瞬間に紋章が黄金色の眩い光を放った。


ガシャン!!


扉の鍵が開いた!


中に入ると、一段と高い階段があり、その階段を登った所に、さらに玉座へと続く長い最後の階段があった。

玉座の間には、恐らく王の亡霊がいるはずだ。


ここで俺たちは体力と魔力の全回復を済ませ、装備の最終チェックを行った。


エレナには、今朝アーズの村で買った星のピアスを渡してある。

本当は沈黙効果のあるアクセサリーを装備させたかったのだが、小さな田舎の店には売っていなかったのだ。

戦法を念入りに打ち合わせ、俺たちは気合を入れて階段を登った。


大きな柱に囲まれた玉座の間には、赤いじゅうたんが敷き詰められ、奥の壁には壮大な絵画が描かれている。ただ残念なのは、そのすべてが色あせてしまっている事だ。

そしてその壁画を背に、赤いマントを着た邪悪なガイコツが、玉座に座ってこちらを睨んでいた。


身体は半透明で、頭には黄金の冠を被っている。

この亡霊がジュダの王なのであろう。


ジリジリと間合いを詰め、その恐ろしい姿がすぐ目の前に迫った瞬間、王の亡霊はカッ!と大きく口を開いた。


「我が名はランガルド!

偉大なるジュダの王にして、世界を束ねし者!!」


「我が城を荒らす者どもよ!!

死を持ってその罪を償うがよい!!」


王の言葉が終わると同時に、王の前に三体の護衛兵が現れた!!


その攻撃力は、今までの敵とは比べ物にならないほど強力で、しかも三体ともリカバーの魔法を唱える事ができた。


回復量はエレナほどではないが、三体がこの魔法を使えるのは脅威であった。

さらに怪しい霧(沈黙)を発生させて、こちらの魔法を封じ込めようとしてくる。


リサはお守りを持っているので大丈夫だが、エレナは星のピアスなので心配だ。

もし、ここでエレナの魔法が使えなくなれば、恐らく俺たちに勝ち目はないだろう。


とにかく前衛の護衛兵を早く倒したかった俺は、剣ではなく戦闘に特化した大きな爆弾で攻撃した。

これなら敵全体に、かなりのダメージを与える事が出来るからだ。


リサはひたすらファイアⅡで攻撃し、エレナはトルネードで攻撃しながら、全員のダメージ量を見てリカバーで回復もやってのけた。


ネイルは覚えたてのマジックバリアで敵の攻撃魔法を防御した後、ムチで攻撃をしながら、さらに味方の戦闘不能状態解除の準備も怠らなかった。

ネイルの素早さはずば抜けているので、緊急の場合は即座に回復役に回ってもらうのだ。


お互いが回復魔法を使えるので、戦闘は簡単には終わらなかった。

だが七つ目の大きな爆弾が炸裂した瞬間、前衛の護衛兵一体が倒れた。

そこからは防御態勢を捨てて、ひたすら攻撃に徹したため、一気に勝負の片が付いた。

ついに王の亡霊は、断末魔の叫びと共にこの世から姿を消したのだ・・・・。


消滅した王の玉座の前には、女神の薬(体力と魔力を全回復)一つと、マードラの鍵が落ちていた。


俺たちはその鍵で、牢獄の部屋にあった宝物庫を開くと、中には三つの宝箱があり、天使の薬二つ(戦闘不能から回復させ、体力を50%回復)と、万能薬三つ、そして“ミューゼの書”を手に入れた!




次の日の朝。

アーズの村を出てジュダの街へ帰ると言う時、いきなりネイルが皆を呼び止めた。

「へい!せっかくここまで来たんだしよ、地図に書いていた残り二つの×印を調査してみねえか?」


「これって、急いでいるんじゃなかったのか?」

俺がミューゼの書を振り上げてそう言うと。


「へっ、へっ、へっ・・・・・。

そう来ると思ったぜ!」

そう言うと、ネイルは何故か急にニヤニヤと笑いだした。


(ぎょっ!なんだこの不気味な笑いは?)

そう、それは前にマードラの遺跡から出た時に見せた、あのニャニャ顔だった。


「ちょっと!あんた!!

なによ、その顔! 気持ち悪いんだけど!!」

リサが間髪入れずに突っ込んだ。


「へっ、へっ、へっ・・・・

おめえら! 聞いて驚くなよ!!」


「ど、どうしたの?」

エレナはちょっと怯えた様子で尋ねた。


「テレポートの魔法を習得したぜ!!」


「は?」


俺はネイルの言っている意味がよく分からず、聞き直した。


「おめえな、そこはマヌケな顔をするとこじゃねえだろ!!」

ニヤニヤしていたネイルは、今度は急に怒りだした。


「アレン!おめえジュダからアーズの村へ来るのにどれだけ掛かった?」

「寄り道したから九日かかったよ」


「だろ?」

「だがよ、俺のテレポートの魔法を使えば、一瞬で行けるんだよ!!」


「一瞬で!!!」


「え~~~~っ!!?」


これは俺たちにとってはビックリ仰天であった。


「あんた、いつの間に覚えたのさ!?」

さすがにリサも驚いて聞いた。


「どこの街や村にも一瞬で行けるのかい?」


俺の質問に、ネイルはどや顔で答えた。


「おめえら、街や村の入り口には看板娘が必ず立っているを知っているだろ?

その娘に俺が話かけていたのを見た事があるだろ」


「あぁ、あれはネイルがデートに誘っていたんじゃ・・・・」


「あたりめえだ!!

俺がかわい子ちゃんを見逃すわけがねえだろ!」


(やっぱり口説いていたのか・・・しかしそんな偉そうに言うことか?)


「で、そのついでにだ!

あの娘たちに街の座標を刻印してもらっていたんだよ!」


「座標?」


「そうさ、テレポートの魔法を使うには、魔法陣が刻印されたのプレートに、行きたい場所の座標を刻む必要があるんだ」


「そうなのリサ?」

エレナがリサに尋ねた。


「うん、テレポートに使う魔法のプレートは、魔法使いの塔で売っているよ。

でもテレポートの魔法を使える人って、ほんのごく一部の人だけなのよね」


「ネイルが座標を刻印してもらっていたのは知っているけど、女の子を口説く口実にテレポートの魔法を悪用しているんだと思ってた・・・・」


「本当に使えるなんて、ちょっと信じられない!かなりショックかも・・・」


「へっ、へっ、へ~!

どうだ!俺のすごさが分かったか!!」


大きな顔をするのが得意なネイルの顔が、面積で表すと畳み10畳ぐらいの大きさに膨れ上がっている。


「だからよ、ちょっと行ってみようぜ!」


結局俺たちはネイルに押し切られる形で、二つの×印を調べることにした。


アーズの村の横を流れる大きな川に沿って北へ進み、その源流となっている山脈を西に進むと、大平原へたどり着く。

大平原はここから東と西に分かれており、×印はそれぞれの行き着く先にあった。

俺たちは最初に、東の×印の場所へ行くことにした。


大平原を東にしばらく進むと、やがて大きな山に囲まれた深い森に出た。

そこからは山沿いに森を北へ進むと、大きな湖のある山の麓にたどり着き、そこには小さな庵がポツンとあった。

ここが×印の場所で間違いなかったが、ジュダの街から最初の印にあった庵と同じで、鍵が掛かっている。

どうやらここが、まだ誰も会った事のないと言う、火山の近くに住む賢者の家らしい。


「賢者の家の鍵を空ける方法が分からないと、どうしょうもねえなぁ~」


ネイルは残念がったが、こればかりはどうしょうもなかった。


最初の調査は空振りに終わり、三日後の朝には次の×印へ到着した。

そこはジュダの街から真っすぐ北に上がった所にある巨大な火山の麓で、炎の洞窟と呼ばれる所であった。


洞窟の中に入ると、そこはものすごい熱気で、息をするのも苦しい場所だった。

マグマが地面から染み出し、炎と熱気ですべての物が焼き尽くされそうな洞窟だったが、奥には二体の女神像が建ち並び、その間には地下へ降りる階段が設えてある。


見るからに「ここにはお宝がありますよ!」と言った洞窟だけに、そこへ行けないネイルは地団駄を踏んで悔しがっていた。


そんな訳で、結局×印の四か所は今の俺たちではどうする事も出来ず、あきらめるしかなかった。

ネイルは未練がましく、しばらく炎の洞窟を睨んでいたが、気を取り直して自慢のテレポートを俺たちに発動した。


俺たちは一瞬でジュダの街まで飛ばされた。

ネイルのどや顔は少々ムカつくが、確かにこの魔法にはそれだけの価値はあったのだ。




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