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アルモアの星伝説  作者: トド
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第一話 魔法使いの塔

この物語は、2003年に制作公開した「アルモアの星」というゲームを、小説にしたものです。

さすがにもうゲームをプレイする方はいないと思いますが、一応ネタバレとなりますので、ご了承ください。

ソーネリア城のはるか西、暗黒魔導師が住む街ジュダ。

そこには”魔法使いの塔”と呼ばれる、黒い巨大な塔がそびえ立っていた。


今その塔の前に、美しい一人の少女が腰に手を当てて突っ立っている。

目が覚めるような鮮やかな紫色のローブをまとい、長くて美しい青い髪をそよ風になびかせながら、巨大な門を見上げていた。

とても綺麗な顔立ちをしているが、よく見ると、まだ幼さが抜けきれていないようだ。

背もまだ成長の途中らしく、小柄であった。そのためか、大きな青い目をパチクリさせると、まるでお人形のように愛らしく見えるのだった。


そんな少女が重厚な門に向かい、何やら大きな声で叫んでいる。


「もぉ!なんで門が閉まっているのよ!?」


何やらえらくご立腹の様子で、よく見ると小さな足で何度も門を蹴とばしている。

もしこの場所をよく知る者が見たら、そんな少女の行為は自殺行為に見えたであろう。

なぜなら、ここは恐ろしい攻撃魔法を操る暗黒魔導師の総本山なのだから。

術者の怒りに触れ、カエルの姿にされても不思議はないのだ。


しばらくすると、その声に応じて塔の中から黒いローブをまとった、若い魔導師の男が飛び出してきた。

そして少女の顔を見るなりにっこりと微笑み、申し訳なさそうに答える。


「それが・・・。今とても大事な会議を行っているので、誰も通すなと言われているのですよぉ・・・」


予想外の返答に、少女は少しムッとした表情をしている。


「いいじゃないの!いつもここで遊んでいるんだから!」


と、若い魔導師に向かって言い返した。

どうやら二人は顔見知りのようだ。

しかし若い魔導師の答えは、いつもとは少し勝手が違った。


「いいえ、今日は絶対ダメですよ!私が叱られますから!」


いつになく強気な態度に少女もちょっと驚き、さすがに今日は無理と悟ったらしく、「けち!」そう言うと、彼に背中を向け、つまらなさそうにトコトコと歩きだした。

どうやら意外と聞き分けは良いようだ。


そして少女が塔から少し離れた場所まで来た時だった。

塔の中から「お~い!ちょっと来てくれ!!」と怒鳴る声が聞こえ、少女を見送っていた若い魔導師が、慌てて返事をしながら塔の中に戻っていく姿が見えたのである。

その様子に気づいた少女は、急いで塔の入り口まで戻ると、きょろきょろと辺りを見回し、誰も邪魔する者が居ないことを確認すると、サッと中に入って行ったのだった。


広い塔の中には、魔導師達が技術を学ぶ訓練施設や、試験を受ける会場、そして図書室や魔法のアイテムを販売する店などがあり、いつもはたくさんの人で賑わっているのだが、今日は塔自体が閉鎖されているので、人の姿は見当たらなかった。

しかし少女は、最初からそういった施設やお店には関心がなく、彼女が興味を引いたのは、若い魔導師の言っていた”大事な会議”であった。

ここへは何度も遊びに来ているのだが、そういったたいそうなイベントには今までお目にかかった事がなかったのだ。

もちろん会議の内容なんかには興味はない。そもそも”会議”の意味すらよく分かっていないのだから・・・。

彼女の興味は、その大事な会議とやらで、一体誰がここへ来ているのか?その一点のみであった。


会議が行われている場所は、塔の形状から円を描くように作られている室内の、一番奥まった場所にある。途中で誰かに見つかると、間違いなく追い出されてしまうので、少女は物陰に隠れながら、慎重に注意深く進んで行く。

そして、会議室まで後少しの所まで来たとき、何やら言い争うような声が聞こえて来た。


「リサ様がここへ遊びに来たのですね?!」

「はい、つい今しがた・・・・」


「あなた、なぜ彼女を引き留めなかったのですか!」

「えっ?」


「そして、どうして直ぐわたくしに知らせなかったのです!!」

「は、はぁ・・・」


「もうすぐ昇級試験があると言うのに、あの子はわたくしが出した宿題を、まだ一つも提出していないのですよ!!」


「マ、マリー先生、そんな事を私に言われましても・・・」


「今日はもう絶対に許しません!!」


その会話を聞いた途端、少女の顔が真っ青になった。

どうやら少女の名はリサと言い、ここの魔法使いらしい。

そして怒鳴り声を上げているのが、教官のマリー先生。叱られているのは、先ほどの若い魔導師で、名前はリックという。

その声がこちらへどんどん近づいて来たため、リサは慌てて近くの物置へ飛び込み、所せましと置かれている道具の陰から、恐る恐る声の主の様子をうかがった。


マリー先生は、ピンク色の髪に黒いとんがり帽子が良く似合う、背がすらりと高いとても美しい魔女だった。若い魔導師たちの間ではアイドル的な存在で、リックも憧れる教官だったのだが、とにかく今はえらい剣幕でお怒りの様子。速足で歩く彼女の後ろを、リックがあたふたと追いかけて行く姿が見えた。


姿が見えなくなると、リサはホッと胸をなでおろし、辺りを見回してみた。

物置と言っても、ここは名高い魔法使いの塔である。その大雑把に積まれた道具の一つ一つが、他では簡単には手に入らない貴重な品々であることは言うまでもない。

そんな中から、一本のホウキが彼女の目に留まった。もちろん、それは魔法のホウキであり、恐らくはその昔、名をはせた魔女が愛用したと思われる、貴重な一品である事は間違いなかった。


リサはそのホウキを無造作に手に取ると、ニンマリと笑みを浮かべた。


「やった!いい物見つけちゃった!!」

「早速お外で使ってみよっと!!」


そう言うと、一目散に塔から逃げ出したのである。


彼女はまだ魔法のホウキを使った事が無い。

というか、使わせてもらえないと言った方が分かりやすいだろう。

魔法のホウキを使えるようになるには、まず重力操作と飛行力学の学科試験に合格してからになるのだが、とにかく机に向かってする勉強が大嫌いで、いつも逃げ回っていたのだ。

しかしそういう子に限って実技は大好きで、何でもやりたがるのだが、先生の話もろくに聞かず、大失敗して大目玉を食らうのは、いつの時代でも同じであった。


「よ~しっ!ここで使ってみるかな?」


塔からすこし離れた開けた場所に来ると、もう待ちきれないとばかりに、そそくさとホウキにまたがり、そして柄を握る手に少し魔力を込めてみた・・・。

すると魔法のホウキはふわふわと、地面から1メートル程の高さまで浮き上がったのだ。


「お、おおっ!!」


初めて乗る魔法のホウキが、自分の思うように動いた事に気分を良くし、「こんなの楽勝じゃん!」と、すっかりご満悦の様子。


「へっ、へっ、へ~~!じゃあ、いっくよー!!」


100メートル前方のお花畑に目標を定め、手に魔力を込めた瞬間、何と!ホウキは彼女が思った方向とは真逆の方向へ走り出し、あろうことか後ろにあった大木に激突してしまったのだ。


ドッカ~~~~ン!!!


地面にうつぶせに倒れ、まるでへしゃげたカエルのようになっている少女。


「あたたたた・・・・・・・」


お尻をさすりながら起き上がったリサは、ホウキを睨みつけ、ホウキの首根っこ?と思われる、柄の部分をガシッ!と握りしめた。


「ちょっとあんた!!」

「これはどうゆう事!?」


ホウキに向かい、額に青筋を立てて文句を言い出したのだ。

何で言う事を聞かないのか?と、ものすごい勢いでホウキを叱責しているのだ。しかし、術者に叱られて改心したホウキの話など、魔法の通ずるこの世界でも聞いたことが無い。


しばらく睨みつけていたが、言っても仕方がないとあきらめたらしく、「今度ちゃんと飛ばないと、お風呂の焚き木にしちゃうからね!!」とホウキに言い聞かせ、気を取り直してもう一度またがった。


果たして、恐らくはその昔、名をはせた魔女が愛用したと思われる貴重な魔法のホウキが、たかだか十数年生きただけと思われる少女の言う事を、「はい、分かりました!!」と、素直に聞くであろうか?

いや、確かに魔法の存在するこの世界では、人は皆驚くほど長寿である。見かけの年齢は当てはまらない。幼く見えても100歳を軽く超す者も確かに存在するのだが、一般的には成人になってから寿命が延びるのが、普通なのである。

それよりも脅して言う事を聞いてくれるのなら、難しい重力操作や飛行力学の勉強なんて全く意味の無い物になってしまうのである。


「わかった?よ~し!行くよ~~!!レッツゴー!!!」


リサの掛け声で、ホウキはひょいっと、1メートルほど浮き上がった。

とてもスムーズに、あたかもそれが当然であるかのように・・・。


ひょっとして、さっきの文句は呪文の詠唱だったのか?と思えるほど、少女の声に合わせて動いたのである。

そして今度はうまく行くと思われた瞬間、ホウキがクリン!と半回転したのだ。

逆さまになる少女。

彼女の美しい青い髪の毛が逆立って、今にも地面に着きそうになっている。


「えっ?えっ?えっ?」


やはり、名をはせた魔女が愛用したと思われる貴重な魔法のホウキは、プライドが高かったのであろう。

慌てるリサをしり目に、ものすごいスピードで加速して行く。


キーーーーーーーーーーーーーン・・・・・・・


「あ~~~~~~~れぇ~~~~~~~~~っ・・・・・・・」


少女の悲痛な叫び声は、遥か北の方向へと消えて行った・・・・。




一方、塔の会議室では、重要な会議が開かれている最中であった。

大きなテーブルに設えられた椅子に座っているのは、たったの三名。

その周囲を100名の屈強な護衛の兵士が取り囲んでいる。

この様子を見ただけで、この者たちが只者では無いことは明白であった。


最初に口を開いたのは、この塔の主ガルダインだった。


「国王自ら、このような所へおいでになるとは・・・。

何かよほどの事がおありのようですな?」


彼は漆黒のローブに身を包み、深々とフードを被っているため、顔はよく見えない。

しかし白い見事な髭を蓄え、時折フードの間から見えるその鋭い目は、恐ろしいほどの覇気を放ち、ただの老人ではない事は一目瞭然であった。

それは護衛の兵士たちの緊張した態度を見ても明らかである。

何しろここは、最強と言われる攻撃魔法を操る暗黒魔導師の総本山であり、自分たちの目の前にいるのが、そこの総帥なのだから。

彼らは全員が武勇に長けた、選ばれし兵士たちである。だがこの塔の主の前では、その力など何の役にも立たない事を十分に理解しているのだ。


国王と呼ばれたその人物は、魔導師の街ジュダを含めた広大な領土を治めている、ソーネリアの国王フラム王その人であった。

立派な体格に威厳のある銀色の髭を蓄え、威風堂々としたその姿は、いかにも大国の王に相応しい人物であった。


「賢者ガルダイン。そなたの予言は見事に的中したぞ!」


「ワシの予言・・・。近いうちに予期せぬ災いが起こるかも知れぬと、国王に進言した、その事ですかな?」


「うむ、その通りじゃ!」


国王の横に座っているもう一人の男。痩せ型で温厚そうな初老の紳士、ソーネリアの大臣アルバートが王の言葉を引き継いだ。


「黒の賢者ガルダイン殿。実は数日前、我がソーネリアの街におびただしい数の魔物が現れ、若い娘をさらう凶事が発生したのです」


「さよう!どこから湧き出たものか、今まで見た事もない邪悪な魔物じゃ!幸い、そなたの進言に従い、警備を強化していたため事なきを得たが、危ないところであった・・・」


国王は沈痛な面持ちで、そう付け加えた。

そしてさらに大臣は言葉を続ける。


「我がソーネリアの街だけではなく、ドリガンの街にも同じ事が起こったそうです」


大臣の言葉にガルダインは少し頷き、そしてこう答えた。


「じゃが、あの街にはネルソンがおる。したがって、ここも被害をこうむる事はなかった・・・」


「その通りです!あの街には聖魔導士ネルソン殿がおられますゆえ」


「うむ、ネルソンへは、ワシから”ある事”を告げておいた。今回の事は十分予期していたのであろう!」


ガルダインの言葉が気になった王は、即座にガルダインへ質問する。


「ある事・・・・と申されるか。それは此度の予言に関する事じゃな?ぜひワシにもお聞かせ願いたい」


国王の問いに、ガルダインが右手を軽く前に差し出した。

すると、淡い緑色の閃光が辺りを照らし、一冊の本がテーブルの上に出現した。

魔法の力で出現させたのである。


「これをご覧いただきたい」

「む!その本は一体?」


この場にいた者たちは、一斉にその美しく装飾された一冊の本に注目した。


「これは”アルモアの伝説”を語った、”キングラムの黙示録”じゃ」


「な、なんと!!アルモア王と共に魔王を倒した、三人の勇者に渡されたという、あの伝説の黙示録!?」


「さよう!この黙示録は時が来るまで封印されておったのです」


「時が来るまで?では、今そなたがその本の封印を解いたと言うことは、その時が訪れたと言う事なのじゃな?」


「暗黒魔導師の総帥であり、偉大なる賢者の一人ガルダインよ!

何を根拠に”その時”と言われるのか?!」


王の質問に、ガルダインはゆっくりと視線を上に向け、天井に向かって呪文を唱えた。

すると綺麗な壁画が描かれた天井に、美しい星空が映し出されたのである。

そしてそこに輝く赤い大きな星を指さしこう言った。


「天上に燦然と輝く、あのアルモアの星がワシに告げたのです。

時は来た!勇者ヴェルガの子ガルダインよ!!時を誤るなかれ・・・とな」


「な、なんと!!で、では、まさかあの伝説の魔王が再び蘇ったと言うのか!!?」


王の絶叫ともいえる叫びに、その場にいた全員が凍り付いた。


しばしの沈黙の後、大臣のアルバートは慌ててガルダインに尋ねる。


「そ、それでガルダイン殿!その黙示録には一体何と記されておるのですか?」


アルバートの質問に、ガルダインはパラパラとページをめくりながら、ゆっくりと答えた。


「古い文字ゆえ、解読できぬ部分もあるのじゃが、概ねこの本には魔王との戦いの事、そして魔王を倒す方法が事細やかに記されておる。

まるで、再び魔王が復活する事を予期していたかの如く。いや、間違いなくその事は分かっておったのじゃろう」


伝説の魔王が復活する事が分かっていた・・・。

ガルダインの確定とも言える言葉に、王は驚いた。


「なに?魔王が再び現れる事が分かっておったじゃと?それは一体どう言う事じゃ!?」


「今はまだ分かりませぬ。が、この黙示録を調べてゆけば、その謎もやがて解けることでしょう。ともかく、いずれ魔王が復活する事を知った事は確かじゃ。そして、その時に備えてこの黙示録を作ったと思われます」


「おぉ!偉大なるキングラムよ!!

では、その黙示録があれば魔王を恐れる事は無いのじゃな!!

そうであろう?黒の賢者ガルダイン!!」


急き込んで尋ねる王に対し、ガルダインは進言した。


「王よ!ここから先はお人払いを・・・」



兵士たちが出てゆくのを待ち、ガルダインはゆっくりと口を開いた。


「この黙示録は、魔王を倒したのち、三人の勇者に渡された全部で三巻からなる記録じゃ。

ワシの持つこの記録は第一巻。”究極の魔法ゾルド”の事が書かれておる」


「究極の魔法ゾルド!!?」


「さよう!魔王を倒すために編み出された魔法」


「死者を蘇らせる魔法じゃ!!」


「!!!」


「な、なんと!!死者を蘇らせる魔法と!!?」


「さよう!とても危険な魔法です。なぜなら、この魔法を使えば不死身の軍団!死を恐れぬ軍団!つまり、最強の兵を持つ支配者になれるのです」


「だから、時が来るまで封印した・・・。そう言う事じゃな?」


ガルダインは王の言葉に深く頷き、そして言葉をつづけた。


「黙示録の第二巻は、白の賢者ネルソンが持っております。目録を見てみると、第二巻にはゾルドと対をなす”ハマン”と言う魔法の事が記されておるようじゃ」


「対をなす魔法?!」


「ゾルドと対を成す魔法ハマン!?対を成すとはどういう意味じゃ?」


フラム王は大きく目を見開き、ガルダインに尋ねた。


「ネルソンに聞かねば詳しい事は分からぬが、ゾルドが生を与える魔法であるなら、ハマンは死を与える魔法と思われます」


「死を与える魔法!?何と、それは恐ろしい魔法でございますな・・・」


そう言うと、大臣は顔をしかめた。


「うむ、これこそが魔王を倒す決定的な魔法と思われる!」


ガルダインは王の前でそう断言した。


「魔王を倒す決定的な魔法!!!?」


「そして黙示録の第三巻には、このゾルドとハマンの魔法がある場所。そして魔法を使う方法が記されておる」


「では、その二つの魔法があれば、伝説の魔王を恐れる必要がないのじゃな?」


フラム王は期待に目を輝かせながら、ガルダインに尋ねた。


しかしその王の質問に対し、ガルダインは少し考えてから、ゆっくりと口を開く。


「だが、ここに困った事が起きたのです」


「なっ?」

「困ったこと、とは・・・・・」


王と大臣は、ガルダインの言葉を固唾を呑んで見守った・・・。


「黙示録の第三巻の持ち主が分かりませぬ」


「!!!!!!?」


「な、なんじゃと!?持ち主が分からぬと!!?」


「そ、それではゾルドとハマンを使えぬではないか!!!」


「あぁ!何たる事だ!!」


落胆する王に代わり、大臣のアルバートは慌ててガルダインに尋ねた。


「しかし第三の黙示録も、あなたと同じく魔王を倒した勇者の手に渡されたはずでは?」


「さよう・・・。だが、その者の消息を記す物は何一つ残されてはおらぬ」


「そ、そんな!!」


絶句する王と大臣。


「何か深い訳があるのであろう・・・・。

なぜなら、その者とは王家に最も近い一族と言われておるからです」


「キングラム王家の一族!?」


「いずれにせよ、ワシは近いうちにネルソンと会わねばならぬ。

だが、その前に一つ気になる事がある」


「気になる事と申されますと?」


フラム王と大臣は、ガルダインの口から二つの魔法に関する打開策が聞けるのではないかと、期待を込めて見守った。

しかしガルダインの口から出た言葉は、その真逆、さらなる問題であった。


ガルダインは、フラム王に魔物の襲来を予言し、街を警戒するよう警告したが、それにははっきりとした根拠があったのだ。


最近の魔物の活性化を警戒し、塔の上から様子を窺っていたガルダインは、ソーネリアの北西に位置する場所から、邪悪な気が立ち込めているのを見つけたのだ。その近くには国の警備も届かぬプルネという小さな村があったため、ガルダインは配下の魔導師に密かに命じ、村の警備をさせていた。そして予感は見事に的中し、おびただしい数の魔物が村を襲ったのだ。


通常なら国の兵士1000人規模で当たらねばならない脅威であったが、村を守らせていたのは、たった三名の暗黒魔導師であった。

だが結果は、村人に一人の犠牲者も出さぬまま、さも当たり前のように魔物どもを駆逐してのけたのである。


今回の件だけではなく、こういった事例は過去に幾つもあった。

そのため、人々は暗黒魔導師の事を魔人のように恐れ、そして神の様に敬うのである。


ガルダインは今回の事件と、この会議で知り得た二つの事件、ドリガンの街とソーネリアの街が襲われた事件とを時系列で合わせ見て、ある危惧の念をいだいたのである。


「概ね魔物は西から東へと、その行動を起こしておる。ワシの住むジュダの街は、まだ襲われておらぬが・・・」


王と大臣はガルダインの言葉にハッとなった。


「ドリガン、プルネ、ソーネリア・・・とくれば、次に襲われるのは・・・」


「鉱山の村、ドルドガ!!!」


「急いで兵を派遣しよう!間に合ってくれればよいが!!」


慌てる王に、ガルダインは静かに答える。


「望みはまだある。今、あの村には”蛇使いのネイル”という男がおるはず」

「どうやらあの男の動きが、村の運命を左右しそうじゃな・・・・」


ガルダインの言葉を聞き、大臣は尋ねた。


「蛇使いのネイル!?その者は、あなたと同じ暗黒魔導師なのですか?」


「いや!その者は・・・・・・・」

























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― 新着の感想 ―
[一言] 当時リアルタイムでプレイさせていただいたものです。 まさかこのような活動をされていたとは…。ご健在で何よりです。 これから少しづつ昔を懐かしみつつ読み進めさせていただきます!
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