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25話

 翌日、コウキ達は王城の門の前に立っていた。

 そして、門番と思しき男に声を掛ける。


「すいません。今日、闘技場で決闘をする許可を、ハンタという男がとりに来ましたか?」

「ん?あぁ、そうだな……ということは、お前が決闘相手の勇者を名乗っている奴なのか?」

「いえ、僕では無く、この女の子が。」

 そう聞いた男は、何かを思い出したような顔をする。


「そういえば、あいつ、あの女を絶対にパーティに入れてやる!って騒いでたな。」

「そうですか。」

「あぁ……まぁ、本来ならこういう事を言うのは良くないんだろうが……頑張って勝てよ。」

 アリスを応援する素振りを見せる門番に、驚くコウキ達。

 すると、コウキ達が戸惑っているのに気付いたらしい。もう一度口を開いた。


「あの男は、仮にも勇者を名乗っているのに、むしろ治安を乱すんだ。手当たり次第に女性に声を掛けるわ、横暴な振る舞いをするわ……事態を収めるこっちの身にもなれってんだ!」

 随分と怒りが溜まっているらしい門番の男を見ていたコウキは、話している間に頭に血が上ってきたらしく、拳を握り締めて細かく震わせている男の様子に、内心苦笑いする。

 

 (こんなに嫌われるまで、色々とやらかしていたのか……これは、ますますアリスに負けてもらう訳にはいかないね。)


「……済まないな。ちょっと冷静じゃなくなっていた。」

「いえ、私も、絶対に負けられないと再確認出来ました。」

「頼む、勝ってくれ。」

「分かってます。」

 

 アリスとの会話を終えた門番は、コウキ達を通し、中にいたメイドと思しき女に任せる。


 そのまま、地下にある闘技場へと案内されるコウキ達。

 メイドが、入り口まで案内した後別れ際に、小声でアリスに声援を送っているのが聞こえたコウキは、どうせハンタに声でも掛けられたことがあるのだろうと、ため息を吐き始めた。



 闘技場に入ると、そのあまりの広さに思わず周りを見渡してしまうコウキ達。


 (これだけの地下空間を作ってどうして王城の床は抜けないんだろう?やっぱり土魔法とか金魔法による補強なのか?)


 猛烈な鑑定欲に見舞われるコウキだったが、少し離れた所にハンタが立っているのを認め、当初の予定を思い出す。


「「鑑定“解析”」」

 ハンタには聞こえない程度の大きさで呟くコウキ。同時に、ゼルスもハンタの姿に気付いたのだろう。コウキに合わせるように呟く。

 

 強い抵抗を受けて、それでも尚解析を続けるコウキ。その抵抗は明らかにアリスを鑑定した時のそれをも超えていた。


 (アリスは意志の力で押さえつけていたとはいえ、勇者の抵抗力よりも強いなんて……勇者ではなくてもかなり強いな。)

 

 そう考えながら続けていたコウキは、不意に自分の解析を足止めしていた圧力のようなものが消えるのを感じる。

 その感覚に疑問を覚えたコウキは、次の瞬間更なる疑問に襲われる。


 (転移者……?それに、魔力無効体質?どういう意味なんだ?いや、魔力無効体質は読んで字の如くだろうけど……って、あれ?じゃあ何で僕は鑑定できたんだ?)


 理解に苦しむコウキであったが、分かったことをアリスに伝えるのは忘れない。


「アリス、相手は転移者なんて情報が出てる。後、魔力無効体質だって。多分、後半は読んで字のまんまだろうから、魔法とかは効かないかもしれない。」

 自分でもよく分かっていないのに伝言ゲームをしなければならないことに、軽く疲れを感じつつも、コウキはアリスへと情報を伝える。

 コウキが横目で見れば、ゼルスは絶賛苦闘中といった表情。アリスはコウキと同じように理解に苦しんでいた。

 更に、そんな風に色々な表情をしているコウキ達を、決闘相手であるハンタが見逃す筈もなく、睨み付けていた。


 そんな四人に気付かず、審判と思しき男が前に出る。


「さて、決闘を始めたいが、少し待て。この決闘は国王陛下がご覧になる。だから陛下の御来場を待たねばならん。」

 その言葉に、流石に国王に喧嘩を売るのは避けたいのか、文句を言おうとしたハンタも大人しくなる。


 そして、無言のまま数分が経ち、

「待たせたな。此度は本物の勇者がどちらなのかを争っていると聞く。なれば、良い戦いを見せてくれることを期待する。」

 そう言いながら、この国の国王である、カタリアル・サーケード=レバンが登場する。決して衣装のせいというわけではないであろうその覇気は、まともに顔を見たコウキやアリス、ハンタをも顔を歪める程だった。


「さて、陛下のお許しも出たところで、決闘を開始する。条件は、一対一の勝負で、周りの者たちが手を出した時点で失格とする。また、この決闘では相手を殺すことは認められていない。よって、相手を殺す、或いは致死できるほどの攻撃を放った時点でも失格とする。」

 審判の言葉に頷くアリスとハンタ。


「最後に、この決闘で勝った者が、今後勇者を名乗ることとなる。それでは……開始!!」

 合図と共にアリスとハンタは、両者共に距離を詰める。


 互いに武器は剣であり、最初の一撃は甲高い音を立てて剣先がぶつかり合い、どちらの腕にも軽く痺れが走る。そこで動揺したのはハンタ。

 ハンタはこれまでの戦いの中で、自分の力がこの世界に来てから強くなっていることを感じていた。それこそ、ずっと冒険者として活動してきた戦士の男に力で勝てる程に。

 だからこそ、全力ではなくても自分の腕に痺れが走るとは思っていなかったのだろう。


 その後も、鍔迫り合いの勝負が続くが、最初に動揺したのが大きく、少しずつハンタが押され始めていた。

 

「ウオォォォォ!!」

 突如ハンタが叫び、剣を握る手に、力を入れる。

 急に力が入ったことにより、アリスは受け止めきれず、力を逃がそうとバックステップする。

 

 そして、

「『土よ、人形となって私の敵を倒しなさい。』ゴーレム生成よ。これで決め……る?」

「残念、俺に魔法は効かねぇんだよ!」

 作られた人形……ゴーレムは、立ち上がったところでハンタに触れられると、大量の土に戻って崩れ落ちた。


「ぐぅっ。」

 字面から予想はしていたものの、まさか本当に魔法が効かないとは思わなかったのか、一瞬棒立ちになったアリスに刃が迫る。

 幸い、ギリギリで避けると、次の瞬間にはまたも刃。それを回避し、受け流すアリス。

 気付けば防戦一方になっていて、常にアリスの回避により二人は移動しながら戦っていた。


 だが、

「お前……何でそんな余裕そうなんだ!」

 明らかに、ハンタよりもアリスの方が余裕を持って戦っていた。


「何でって……そりゃあ、勝ちが分かってるからよ。」

「さっきから防戦一方のくせに。……俺の勝ちなんだよ!」

「そうかしら。その割に息が上がっているみたいだけ……ど!」

 アリスの久しぶりの攻撃。それは、攻撃に集中していた上、疲れが出始めていたハンタには受け流すのは難しく、回避を選択する。

 が、

「んな!?」

 避けたタイミングで足元が思い切り滑ったハンタはこけそうになり……


「私の勝ちね。」

 首筋に当たる冷たい感触に背筋が凍るのであった。

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