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2話

 この世界では、職業によって人生が大きく左右される。ここで言う職業とは実際に働く仕事のことではなく、十五歳になると神から与えられると言われる一種の才能だ。


 職業には、剣士や戦士などの純粋な戦闘職や魔法使いなどのバランス型の職業、鍛治師や服飾師などの生産職と呼ばれるものまで様々だ。勿論、細かい分かれ方をしている為、挙げればきりがないが。


 そして中には特殊な職業がある。勇者や……鑑定士だ。勇者の説明は後ほどするが、鑑定士はハズレとも呼ばれる職業だ。戦闘能力は低く、何かを作ることも出来ない。この職業を喜ぶのは余程の物好きだけである。


 そう、例えば……幼馴染のアリスと共に、職業をもらった記念パーティーに出ているコウキという青年などの。 

        

「予想と期待通り鑑定士になれて良かったよ。」

 そう言って嬉しそうに笑みを浮かべるコウキにアリスも笑みを浮かべる。


「昔から鑑定士になりたがってたものね。」

 そう言ったアリスの声に、先程コウキが絡まれていた時にあげた声のような鋭さはない。彼女の発言でアガン達は苦々しげにその場に留まりアリス達を追うのを諦め、その後パーティーで会っても何も話しかけることはなかったからだろう。


「そんなことを言ったらアリスこそ、結構怖がりなのに勇者じゃないか。」

 思わずといった様子で口を挟んだのは、二人と同じく職業をもらったばかりのトール、大柄な“戦士”である。彼は幼馴染とまではいかずとも、数年程前からコウキやアリスと仲良くしていた。


 そんな風に三人で話していると、

「ねぇ、そろそろ村長の話よ。」

「そうだな、もう移動した方がいいと思う。」

 二人組の男女の声がし、コウキ達がそちらを向くと、トールと同時期からコウキやアリスと付き合いのある、優男のジンと穏やかそうな少女のミルがいた。この二人も職業をもらい、“剣士”と“神官”である。


「村長の話って、祝辞的なやつか?」

「いや、大神官様からの発表も合わせて行うみたいだ。今年はほら、アリスが……」

「あぁ」

 トールの言葉に納得したコウキ。それは昔、勇者の伝承に興味を抱き、調べたことがあるからだろう。ジンやミルは何の話か分からないようだ。


「あれ、まだ何かあったっけ?」

「勇者の伝承には必ず出てくるだろ?勇者の相棒……パートナーが」

 そう、勇者は基本的に神からの指定を受けた相棒と共に旅をし、魔王と戦う。その相棒は大神官が神から啓示を受け、主に勇者出身の近隣の村や街から選ばれる。


「成る程。」

 そう納得したジン達を引き連れ、コウキは移動を始めた。

 

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