12話
警備兵の事務所から出て、目的地へと向かうコウキ達。警備兵に教えてもらったその場所は、
「着いたね。へえ、ここが冒険者ギルド、か。」
冒険者ギルドは、冒険者と呼ばれる者達が自分達の特性を活かして人々の依頼を解決する、いわば何でも屋と言っても良いところである。
その主な依頼の一つにモンスターの討伐依頼があり、
「フォレストウルフの変異種の情報が手に入るかもしれないからね。」
変異種とは何か分かるかもしれないと思い、来たのであった。
「変異種の情報は解析しても良く分からなかったんでしょう?」
「うん、なんか魔力濃度がある程度高い場所で育ったとは書かれてるんだけど、それ以上の情報がすごい読み取りにくいんだ。」
「そう、なら少しでも分かれば良いんだけど。」
そんなことを話しているコウキ達であるが、冒険者ギルドは、その性質上表通りで人通りの多いところにあり、更には冒険者達が利用する訳で……
「ん?何だこの坊主達は。遊ぶなら他所にしろ。」
「おい、落ち着けハレスト。冒険者登録じゃないのか?」
「あぁ、もうそんな時期か。悪かったな、悪戯かと思ったんだ。」
絡まれるのかと思い、身構えたコウキとアリスだが、すぐに男が引き下がったことにより力を抜く。
どうやら新しく職業をもらったので冒険者登録をしに来た人間だと思われたらしい。だが、コウキもアリスも誤解を解こうとしない。説明と騒動が起きるのが面倒だったためだ。
中に入っていく二人組の男を見て、
「僕たちもそろそろ入ろうか。」
「そうね。」
ギルドへ入るのであった。
コウキ達が中に入ると、周りからは視線を向けられる。それは、アリスが勇者だと知っていた……訳でもなく、
「おい、あの嬢ちゃん凄え別嬪だぜ。」
「ん?おぉ、ほんとだ。ありゃ登録に来たのか?」
「俺、声掛けようかな。」
「やめときなさいよ。ほら、隣の男の子。」
入った瞬間にはこの有様であり、コウキとしては先程の男は良く何も言わなかったな、と現実逃避を始めていた。
「どうしよう、コウキ。私、外で待ってた方が良いかな?」
「いや、今さら外に出た方がまずいんじゃない?取り敢えず受付の人に聞いてみようよ。」
そう言いながら、受付へと行くコウキ達。一番近くにある受付へと辿り着くと、
「こんにちは。今日は冒険者登録に来たの?」
声を掛けられる。
当然、答えは違うので首を振り、コウキは、
「いいえ。お手数ですが変異種という存在について教えていただけませんか?」
そう、直球で質問した。
「変異種?亜種や上位種ではなく?」
「はい、変異種です。」
「失礼ながら、その変異種というのは一体……?」
「私達にも分かりません。見たことのないモンスターが出てきて、鑑定したらフォレストウルフの変異種と出た……らしいです。そうでしょ?コウキ。」
「もしかして、あなた方だけでモンスターと遭遇したのですか!?変異種というのは分かりませんが、フォレストウルフはそこまで危険度が高くないとは言え……」
「え、ちゃんと倒しましたよ。証拠もありますし。」
「分かりました。取り敢えず職員の中に解析を使える鑑定士がいるので、ここにそのモンスターの素材を出してもらえますか?」
「え?ここにですか?乗らないでしょ。」
カウンターを指さした職員に、思わず口に出すコウキ。
「空間拡張した袋に入っているんですか?ですが、フォレストウルフですよね。その素材ならここに置けるかと。」
剥ぎ取りをしていないフォレストウルフが入っているから置けないと危惧したのかと、勘違いした職員。
「うーん。分かりました。取り敢えず床に置きますね……ぐ、よいしょっ、と」
「ちょっと、何を……え?えぇ!?」
勝手に床に置いたコウキに文句を言おうとして、出てきたモンスターの大きさに驚く職員。
驚いたのは職員だけではない。冒険者達も騒ぎ始め、その場は一時騒然となるのであった。
「さて、こちらで話を聞きましょう。」
予想以上のモンスターの大きさに驚いていた職員であったが、そこはギルド職員の本領発揮というべきか、すぐに気持ちを切り替えたらしい。広い場所に行くことを提案し、コウキ達は一も二もなく頷いた。
「ここは?」
「会議室と言ったところでしょうか。モンスターの対策を話し合ったりするのに使うので、説明の為ある程度スペースがあるんです。……もう一度見せていただけますか?」
「はい。」
流石に二度目では驚くことはなく、職員も落ち着いている。
「ふむ、やはりフォレストウルフとは思えない程の大きさですねぇ。姿形は原種と殆ど同じに見えるのですが……やはり専門家が来るのを待つべきですね。」
「専門家、ですか?」
「えぇ、大体の街には鑑定士が集まって研究所を作っているんです。このサブールの街も例外ではなくて、先程そこの所長とモンスター研究の係長を呼んだところですよ。」
いつの間にそんなことをしていたのかと、コウキが驚いていると、
「何だって今日はこんな忙しいんだ?いつもは何も無い……ん?」
ちょうど部屋に入ってきた髪の薄い四十代程の男と目が合う。
それは紛れもなく
「え?ゲイルさん?」
つい先程会ったばかりの鑑定士であった。