11話
サブールの街まで近づいて行ったコウキ達は、門のところで警備兵に止められていた。
「済まないね。本来なら通しても良いんだけど、勇者を名乗る者を通して後で偽物でしたとかだったら僕たちもなんて言われるかわからないし。」
「おい、勇者様達に向かってその口調じゃまずいんじゃないか?……すみません、こいつも悪気はないんです。許してやってください。」
「い、いえ。別にそのままの口調で大丈夫ですよ。というよりもできれば畏まった喋り方はやめていただけると……」
「はい。分かりました!……痛っ。」
「馬鹿か、お前は。今その口調をやめて欲しいと言われたばかりだろうに。」
自分達が勇者の一行だと告げると、二人組の警備兵の男達は職業鑑定を使える鑑定士を呼ぶ為に控えていた人を向かわせ、自分達は事務所でコウキ達の話を聞いていた。
……とは言っても、コウキ達は出身地と勇者であること以外殆ど何も言っていないが。
「ふむ、嘘をついているようには見えないし、後は鑑定士による職業鑑定の結果だけだな。」
「そろそろ、来る頃だろ。……ん?あれじゃないか?」
見ると、かなりの速さで馬車が事務所へ向かっているところだった。
馬車が事務所の前に付けられると、中からは髪の薄くなった四十代程の男性が降りてきた。
「勇者を鑑定させてくれるってぇのは本当か!?」
馬車から降りてすぐに駆け寄り、叫んだ男。その大きさたるや事務所にいた警備兵の男達が全員振り返る程である。
「ゲイル、落ち着け。勇者様はそこにいる。……いや、まだ確定したわけじゃないが。とにかく本当に勇者の職業を持っているのかどうか確認してくれ。」
「あぁ、分かった。」
ワクワクとした様子で返事をする、ゲイルと呼ばれた鑑定士。
「行くぞ、鑑定“職業鑑定”……っ!」
意気込んで鑑定を始め、次の瞬間少し苦しそうな顔をしてから残念そうに顔を歪めるゲイル。
「?どうした、ゲイル。」
「……いや、勇者の抵抗力ってのは馬鹿にできねぇな。勇者であることは間違いねぇんだが……」
「それなら問題ないだろう?」
「あぁ、勇者様の名を騙る不届きものじゃないなら大歓迎だし。」
「そうじゃなくてな。ほら、鑑定士ってぇのはある一定の壁を超えると読み取れる情報量が一気に増えるんだ。」
「あぁ、それは聞いたことある。」
「それは本当ですか!?」
ゲイルと警備兵がが鑑定結果について話している間何気なく話を聞いていたコウキだったが、ゲイルの話を聞いてつい口を挟んでしまった。
「あ、すみません、つい興奮しちゃって。」
「いや、それは良いが……そうか、そういや坊主は鑑定士だったな。だが、そんなに珍しい話か?」
鑑定士ならば聞いたことがあるだろうと、そんな目をコウキに向けるゲイル。
「あー、それは、実は僕の鑑定も普通の鑑定士が得られると言われている情報量を超えているんです。それで、どのくらいの情報が本来得られるのかを知りたくて。」
「成る程な。まぁ、興味本位って訳か。じゃあ仕方ないな。」
「あれ?結構あっさり流しますね。中々珍しい事例だと思うんですけど。」
自分では下手に人に言ったら不味かったかもしれないと思っていたコウキとしては、少し意外であった。
「ん?ああ、いや何、ちょうど一人そういう奴を知っているんだ。……そうだ、お前さんそいつに会って行かないか?年も同じくらいだと思うしさ。」
「成る程。勿論会ってみますよ。……先に用事を済ませてからにします。」
「そうか、まぁ、よろしくな。」
そう言って、コウキに自分の住む場所を伝えると、ゲイルはどこかへ去ってしまった。