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10話

 森を歩き続けて十五分程経った頃、コウキとアリスはある程度開けた場所へ出ていた。


「ここなら十分にテントを張るスペースがありそうね。」

「そう?焚火とテント二つって考えると少し狭くない?」

「え?焚火はわかるけど……何でテント二つ?」

「いや、そりゃそうでしょ。同じテントで寝るわけにもいかないし。」

 アリスとの二人旅で同じテントに寝るなど、コウキとしては後であらぬ嫌疑を掛けられるリスクを考えれば絶対に回避したかった。


「でも、前に泊まりがけで探索した時は一緒のテントで寝たじゃない。」

「あのね、それ五年くらい前の話じゃなかった?それにその時は大人がいたし。」

 ため息を吐きながらやれやれと言わんばかりに首を振るコウキ。その姿にアリスは馬鹿にされたと感じたのか、

「あー、成る程ねぇ。そっかそっか、コウキったら私のことを意識しちゃって寝れないから別のテントが良いなんて……」

「は?」

 コウキから冷たい視線を感じ、口をつぐむアリス。そのまま数十秒見つめ合い、

「ごめんなさい。」

 先に折れたのはアリスの方だった。


「確かに、勇者と相棒が同じテントって、少し外聞悪いもんね。」

 そう言いながら少し残念そうなアリスには気づかないまま、コウキは少し安堵する。アリスが言ったことが実は図星だった為だ。


「でも、野営はここで良いんじゃない?少し狭いけど絶対に無理ってほどではないでしょ。」

「……まぁ、確かに。」

 コウキとしても疲れていて休みたかったので、特に反対はしない。そこで彼らは野営の準備を進めるのであった。




 野営を始め、食事中。コウキはこれからのことを確認する。


「この森を突っ切るんだから取り敢えずサブールの街に向かうんだよね。」

「えぇ、そのつもりよ。」

「ってことは、食料にはまだ余裕はありそうだね。」

「元々向かう予定だった街とは距離が全然違うもの。」

 本来なら彼らは一週間程かけて、別の街へ行く予定だった。しかし、半ば強引に村を飛び出してすぐに見つけられないよう予定と別のルートを進んだ為、明日中歩けばサブールの街に着くことになりそうだった。


「元々向かう予定だったギエロの街と違ってサブールの街はあんまり噂を聞かないわよね。」

「ギエロは国でも有数の都市だからね。サブール経由でギエロへ行ってもいいし、そのまま王都に向かってもいいけど、その辺りはどうする?」

 コウキもアリスも王都に行く必要があるとは思っていた。それは装備を整える必要があるほか、お金がないからであった。


 因みにこの世界では大国であるレバンともう一つの国以外では通貨単位は統一されている。それはその二カ国以外では貨幣価値を変えているような余裕はなく、むしろ統一することによって、国同士の繋がりを強くし、大国に対抗できるようにする為である。

 だが、レバンではそれを気にする必要はない、よって独自の通貨単位であるジェンを定めていた。


 話は戻り、王都では勇者としての特別待遇が受けられ、装備やアイテムの充実の為、軍資金が用意される。これは何も世界のためなどという殊勝な理由だけではなく、勇者の好感度を上げて、レバンに縛り付けたいという下心がある。

 それでももらえるのだからと彼らは受け取るつもりであった。

「資金もなしにギエロに行ってもあまり意味はないでしょう。ここは王都に先に行くべきだと思うわ。」

「分かった。」

 細かい予定は決められない為、後は雑談をしながら食事を楽しむ二人だった。




 夜中、コウキ達は見張りを先にアリスで後にコウキにすることにした。その為、コウキはアリスが見張りの間寝る必要があった。

 しかし……

 (眠れない……)


 理由は明白、見張りするためにそのままにしてある焚火の近くに座りながら、アリスが泣いていたからだ。それも無理はない。昼間に両親を殺されたばかりなのだ、吹っ切れたように見えても内心の整理をつけるには時間がかかるだろう。


 (ここで出て行ってもアリスは表面だけ平気な振りして無理をする。そんなことになるくらいならそのままにしておく方が良いだろう。)


 自分には何もできないということを不甲斐なく思いつつ、アリスのことを気にしていたコウキは、結局交代まで寝れず、一晩中起きたままであった。




 コウキが寝不足のまま出発し、歩き続けて何事もなく(途中、ゴブリンが何度か群れで出てきたが全てアリスが剣だけで倒して)進み、日が沈むかという頃、彼らは森の外周に到達し、サブールの街をその目で捉えていた。

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