9:剣のお姫様…始動
今回もよろしくお願いいたします
視点を一点に据えたものに再構築し直そうとも考えていますが
まずは一区切りつくまで頑張ります!
剣姫が二人になった会場はざわめきがひどいものだった
…まぁ衛士と扉を吹き飛ばしての入場では仕方がない
よく勘違いされているけど
剣姫は最強の意味でも称号でもない
剣聖とか剣帝と同列と勘違いされているが(剣王もブレイドの王の意味である場合がある)、あくまでブレイドの姫であり、王剣である古代剣を抜けた姫であるだけで後は本人の本質と資質によるものになる
うちの愛妹は、愚鈍なほど剣にのみ生きてしまっただけ…いや、たまに恋とか宣うのは無視をしているけど
そんな妹を恐ろしいものを観る目でみられるのは面白くない
そんな妹はというと、こちらに気づいたのか足早にやってくると
「カルマン殿、探しました!」
隣で状況把握ができていない若き王に略式のカーテシーを決めると
「足腰の弱い老人の杖を奪うとはどのようなおつもりですか!?」
うん、妹には無駄に強固そうな装備に身を固めた衛士もでっぷり大臣も関係ない、気にもしていないのだろう
囲みにあっさり入ってくる
「いかようなつもりかお聞かせ願う前に、この杖をご老人に…」
会場内に居る筈の老人を見失ったらしい、入った時に確認しているのを見ていたのでおかしい
「け、剣姫殿?」
気が付くと既にレインはクレアの背後に控えていた、変装はまだ解いていないが誰が見ても別人なのに、先程までは誰もがその別人の方を妹と思っていたのだから感心させられる
「カルマン殿聞いておられますか?」
状況も妹には関係がない…
「はい?」
状況についてこれないのか若き王は困惑したままだ、妹の呼び掛けに応えるので精一杯の様子だ、その原因の一端は妹とその侍女にあるので申し訳ないとは思うがそろそろ現実を見ていただかないと困る
うちの妹は優しすぎて詰めが甘いのが欠点なのだから
「囲まれていますね?」
レインが妹に状況を手短に伝えてくれたようだ、大臣どもを含めて衛士達に囲まれている
「これから、『ざまぁ』が始まるのですか?」
首をかしげながら訊く、可愛いなぁ本当、兄は心配だよ本当
そして侍女よ、要約しすぎだ…
若き王のやり方に利潤を貪れなくなった無能な大臣どもが何かに唆されての行動の様だが…何も見えてこない
「…カルマン殿?」
珍しく妹が人見知りを堪えて若き王に問う、…先程のは怒りと勢いで人見知りを忘れていたに違いない
「ひとまず、全員倒してしまってもよろしいですか?」
妹よ面倒くさくなったね、そういうところは父に似てしまったね
「クレア、その杖でいいのかい?」
律儀なこの妹はあくまで許可を得ようと考えているのだろう
「そうでした、杖!杖の持ち込みは許可をいただけませんか?」
件の杖を慌てて見せ、許可を迫る
妹よこの状況でその愚鈍なほどの律儀さを通すなら先に頼むものがあるだろう…
「き、許可します、杖の持ち込みを許可します」
カルマン殿…貴方もか…
その言葉に反応した衛士とでっぷりが動いた
…なぜ剣を先に了承させない
君は剣の姫でしょう?
まぁ、そこがわが妹なのだけど
「剣さえなければ…」
何て言っているものもいるね、さっきこの妹が持っていて慌てて廊下に置いてきた鉄の剣ぽいものは誰の持ち物だったのだろうか、見かけの割りに業物だよねあれ?我が国でもクレアが倉庫から見つけてくる業物級ではあったと思う?
つまり、杖だけでそこそこの相手から無理矢理借りてきたのだろう
「剣がなければですか、剣のない女子供に多数で挑むのがこの国とは…底が知れましたね」
カルマン殿が沈痛な面持ちになってしまったよ
そして
「もうかまうか!王もろとも捕らえろ!」
…捕らえるのでいいとか優しいね
うちの妹はもっと優しいよ?
「剣がなければ剣姫なぞただの小娘!」
そこのでっぷりさん、小娘と言っておいて良かったね
本人は少し背が高いのをかなり気にしているから少し喜んでるよ、手加減してくれるんじゃないかな?
「…」
無言で突き出された杖に胸装甲を見事に凹まされた衛士が囲みの輪から外れて転がっていく
急かされたのか勢いよく出た分見事に突き返された形になる
普通の剣士の剣だったら見事に即死だっだろう、先読みをし最大効率で合わせられるから出来る技だ
その一撃だけで空気が変わった
「たかが木の棒ではないか!」
同僚が吹き飛ばされて及び腰になった衛士に檄が飛ばされる
「まず杖を狙え!」
普通はそうなる
しかし、普通が通らない
杖を狙って降り下ろされた剣は杖に当たることなく、衛士は剣を降り下ろしきるまえに懐に潜り込まれ杖で突き飛ばされた、突き飛ばされた先には同じく剣を構えた同僚がいて巻き込んで転がっていった
「…鍛練はそこそこされていますね」
妹には違いがわかるらしい、私にしてみると減俸ものなお粗末さに見えてしまう
「構うな!一斉に…」
その言葉に剣を振り上げた衛士たちの剣が柄元から切り落とされた
「仕込み杖だったか!」
妹のもつ杖は高級ではあれ仕込み杖ではない
仕込み杖だとしてここまでの力量差を見せつけられて仕掛けてくるものはいないだろう…
その時
破裂音が響くのと妹が杖を振り抜き何かを打ち返したのはほぼ同時だった、遠くの壁に穴が穿たれた
「…困りました」
杖を目の高さに持ち眉根をよせている、流石に攻撃が速過ぎるのかと心配を…
「あまりやると杖が壊れます」
速い何かを打ち返したことは気にしていないようだ
「人か!?」
回りから声が上がる、失礼な話だ
「鉄包筒の鉄菱を打ち返すか…」
鉄の礫を速く打ち出す仕掛けのものらしい
妹はどうやら知ってる様子だから、渡る者の持ち込んだ知識から作られたのだろう
衛士たちが剣からその筒に持ち替える
「…当たらないとは思いますが」
妹が一瞥してから、私に呼び掛ける
「指輪を貸してください」
剣を普段握るため指輪等をしない妹は剣以外の魔力付与されたものを持たない
…指輪は婚約指輪と結婚指輪だけにしたいという発言は無視をしている…
基本妹は魔力を他から取り入れない、取り入れる必要がないらしい
セラ母さんの血なのか地力がまず異常だったのに、さらに王剣の影響か魔剣に携わった影響か魔術師が羨む程の魔力保有者である
その妹が私が余剰魔力を貯めるだけにしている指輪を貸せという
つまり
「何をする気なのかな?」
答える前に指輪が抜き取られ、彼女はそれを握ると
「開け!!」
それだけを言うと回りを囲むようになにかが大量に降ってきて壁を作っていく
振ってくる剣らしきものが組み合わさる金属音とその壁に何か金属(先ほどの礫だろう)同士が打ち合う鈍い音が同時にいくつもいくつも鳴り響く
「思ったより威力がないです」
暫くすると音は鳴りやみ外では「次の筒は?」と言う声が聞こえる、連続して使えないらしい
妹は
「暫くは攻撃はないですけど」
漸く自体が飲み込めた若き王に向くと
「あれが我が国への対抗手段ですか?」
顔色を見る限りは、知らされていないのだろう
妹が言っていた「当たらないとは思いますが」は、熟練度をさしているのだろう
それを言うと妹は一瞬考えると
「カルマン殿、私の待剣許可をお願いします」
あくまで律儀なのだが、この降らせた鉄は剣ではないのかな?
「それは、粘りの強い剣型の鉄塊です」
そう言えばそんな事を報告されていた
「この粘性のある鉄だから跳弾もしなければ外からの攻撃にも耐えられます」
「ちょうだん?」
知らない言葉だ
「あの筒からでる鉄の礫を跳ね返してしまうと、要らない怪我人が増えます」
私の妹は本当に優しい
杖をレインに預け、レインから小剣と唯一公式で持参した長剣を預かる
「ちなみに、これは二本ではなくもともと一本のものです」
そんないいわけじみた解説をカルマン殿にしてくれるが、カルマン殿は今はそれどころではないだろう。
妹は剣をレイン以外には極力触らせたがらない(昔はレインにも触らせなかった)ので良く見ていなかったがあの文開きじみた細さの小剣は確かに長剣の柄のあたりに収まった
ニホントウというもののコヅカというものを参考にしたものらしい
また渡る者の知識かと少し面白くない、ニホンというのが特に気に触った
また小剣を外し、妹が自分の魔力を注ぎ「エクレール来て」と呟いた、非殺を旨としている妹が一番愛用している剣の名前と記憶している
剣身が光を放つとまた直ぐに長剣に差し込むようにとりつけるとその長剣を両手でもつ
妹には決まった型がない
自然に剣をもっているだけだ
そこが恐ろしいと剣に覚えのある者達は口を揃えて言う
侍女も同じ事を言っていた記憶がある
「さて、ちょっと伏せてください」
妹が剣を軽やかに振るう
見た目は軽やかに見えるのに、なにか衝撃波じみたものが放たれたのか剣の形をした鉄塊の障壁が床に平行に吹き飛ばされ囲みの衛士に大盾の突撃の如く迫る
先程ホールに入る時に扉で同じ様なことをしていたがあれを普通に振るえている時点で衛士達は力量の差を知るべきだと思う
先に剣姫は最強の称号では無いと言ったが
うちの妹が
剣聖・剣帝に及ばないとは
私は一言も言っていない
ブレイドの剣姫は剣においては…剣聖・剣帝を凌駕できると思うのは兄馬鹿かもしれない
ありがとうございます。
剣姫さま本気モード(仮)です
剣をちゃんと(?)許可を得て携えているので普段の地の方が出始めます
元々一本だったと言っていますが、本人も二本と認識しているので気に病んでいたみたいです。