8:剣のお姫様の危機
ルーターが死にましたorz
交換をしても何故か執筆に使っているノートだけ繋がらない…
ということで直繋ぎでなんとか誤魔化して投稿です♪
よろしくお願いいたします。
「クレア大丈夫かい?」
本来私に構っていては不味いでしょうに長兄が気にして声をかけてくれます
「徹底的に私の為だけにここまでされると、逆に清々しいほどの窮地です」
傍にレインがいません、私の今までが特例過ぎました。普通は侍女は同伴させないのですね。
更に軽食だからそんなには数はないとは思いましたが、取り分けのためのナイフが一切ありません…
ここまでされると冗談みたいですさらに足の悪い御老体の杖さえ持ち込ませないとか呆れてしまいます
「…、剣姫として私の傍にずっといなさい」
またそんなことを…私はいつまでもこの世界にはいませんよ?
…剣がなくて少し不安定ですね…
「…お兄様の傍は傍で問題が」
人の波が絶えない
更に物珍しさから挨拶を望む人が多い
昼の白のドレスから着なれている暗紫と黒を基調としたドレスで目立たないようにしていましたのに…、特訓がなければ今頃愛想笑いも出来ず長兄どころか国に恥をかかせましたね
しかし、普段の剣を持つ私はそんなに恐ろしいのかしら?と考え込みます
ここまで多くの方に挨拶をされた経験がありませんし
物珍しい珍獣ですか私は…
流れる音楽とか気にする余力もなかったのか、人のざわつきと同時に演奏が止んだ事に気づきました
長兄を見ると、どうやら今回の首謀者がやってきましたね
王族が使うであろう広間のテラスからの入場ではなく、普通に皆と同じ入り口からですか
「なにアピールですかあの長髪は…」
一段高い、本来テラスから降りて使う筈の舞台に上がり挨拶をしている
長々と話をするのかと思いましたが、本当に軽く済ませて参加者の挨拶を受けている
いつも自国の場合はその舞台の端にこそっと居るのですが、逆というのも変な気分です
「こちらからは?」
長兄に挨拶に出向くものなのかと訊ねると
人が割れこちらまでの道が出来る
逆だとこんな感じなのかと感心していると
向こうからやってくるのは…長髪
もとい、この国の若き王カルマン様です
「ブレイドの宰相殿と剣姫殿は楽しんで頂けていますか?」
名前呼びを許しているわけではありませんが、なんか含みがある気がして気に入りません
「えぇ、有難うございます。カルマン殿もお忙しい中有難うございます」
長兄が挨拶を返すので、私も一歩身を引き略式のカーテシーで返す
「カルマンとお呼びください、フェルディナントとブレイドは友好国になったではありませんか」
若き王の砕けた物言いに、長兄は「有難うございます」とだけ返していた
確かこの若き王は長兄と歳が変わらないか歳下の筈です
よくよく見ていると、どこか幼く見える、長兄が歳の割に苦労して落ち着いているという話もありますが、
それにしても…
「今宵は夜空のような深くそして眩い星のごとき…いえ、それにも負けないお美しさです…」
私の姿を誉めていただいてるのでしょうけど…この方、王にしては威厳というか貫禄というか、簡単にいうと
薄っぺらい印象です
こんな人が王で大丈夫なのでしょうかと心配をしはじめてもなにやら話してるのは止まらない、話術には長けているのですね、すこし羨ましいですけど、私は沈黙こそ美徳なのでそろそろ終わらないですか?
「クレア!」
私が違和感に気づき動きましたが、遅かったです
「これは?一体…」
ホールの扉は元よりバルコニーへの大窓から全て閉じられました
参加者も大半が慌てています
そして…
「何事だ!?」
え?
長兄と顔を見合わせる
カルマン様も慌てている?
「…客人を招いての宴に水を差すとは」
いえ、おかげで友人でもある魔術研鑽師のアレクサンドライトの蘊蓄並みに長い話が切り上げられました
閉じられた入り口が開かれ、よく肥えた…短剣でどこを刺しても脂がこってり付きそうな御仁が似たような体型の人物達と群れをなしてやってきました、サプライズの何かでしょうか?
「…」
カルマン様のお知り合いのようですね、感情が表に出すぎています
「なんのつもりだ?」
「それはこちらの台詞ですよ、友好国になったばかりのブレイドの剣姫の剣を取り上げ何をなさるおつもりですか?次期国王予定の宰相の護衛まで外させておいて」
長兄が何かをその一言で納得がいった様子です、女子の着姿には疎いのに流石です
「このような場では剣姫殿も帯剣をしないものなのかと思っていたが、まさか?」
どうやら嵌められたみたいです
「まさか、ここまで予想通りとは」
長兄、お兄様?アリオン様が全く動じていません、私としては剣一本持てなくてもどうとでもなる主人の身代わりが出来て良かったのですが…
「窮地にはあまり変わりませんよお兄様?」
「え?どういうことだ?ブレイドの?なにかご存じなのか?」
カルマン様が状況がわからずに取り残されています
こんな状態でそれでは本当すぐに死にますよ?私の主くらい無自覚に強いと関係ないようですけど…
その主は帯剣を許されないことより、脚の弱いご老人の杖を取り上げたことに抗議をしに、目の前で若干困惑顔をしている若き王のところへ向かった筈ですが…またなにか余計な面倒事に関わっていますね
こちらより面白い事になっていますね…多分
「お兄様、私かなり楽観視していますけど?」
「うちの国では見れないから見ておきなさいって、いつから入れ替わっている?」
気づいておられなかったようです流石ですねこの似非シスコンは
「クレア様がご老人の杖の事でカルマン様に申し立てをしに行かれた時にです」
剣帯もせず、カンザシもただの黒檀と白木で本物に似せてあるだけなのに気づいていなかったようです。
なにより、ヒールの高さとかで気づきませんか普通?
「相変わらず違和感を感じさせないとは…」
まぁ、立ち位置とか、全体的な身体のサイズ調整、なにより私の主人は私の生徒でもありますから
観察は十分できますし、本人了承でサイズもとらせていただいているので成り代わるのは簡単で完成度も我ながら高水準です。
外見的なものに限ってですけど
(これくらい見破れないから相手にされないのでしょうね)
そう、あのワタリツルギは悔しいことにまだ背格好が同一と言えるくらいの主人と私の入れ替わり(私の成りすましとも言う)を一目で見破っていた
そのあとも数回挑んでいますが、何故か見破られます
おかげで私の変装技能が上がりましたが…すこし不満は残ります
「それで、これからどうするのですか?」
生憎私は主人にしか興味がないので、現状把握は出来てますがどう動くべきか…あと主人がどうしているかも気がかりです。
「どうするも、向こうの出方が穏便ではすまなさそうだ」
しかし、動きがないです
していることは…
「なぜブレイドのシアロゥラと友好などと、領地を広げる気はないのか!」
「戦ってこそ国も豊かになる」
ちらちらこちらを窺いながら、カルマン様を責めている
私の主人はそんなに怖いのですか?
それにしても、このでっぷりどもは、自らの私腹のために謀反じみた事をしたのでしょうか?
何かおかしいです
こんな小物がここまでのことを出来るのでしょうか?
アリオン様と顔を見合わせていると
扉が衛士ごと中に吹き飛んできました
「…」
「本当に一人で制圧しかねないな」
杖を片手に利き手にただの鉄であろう剣をもった主人が入って…慌てて鉄の剣を廊下に置いて入ってきました、この状況でも剣を持ち込まないとか…律儀というかお馬鹿というか愛すべき主人ですが
追い縋る者がいないということは…ほぼ戦闘不能にしてしまったと言うことです。
勝手に巻き込まれて勝手に叩き伏せて勝手に終わらせる
でも、本質は恋する乙女
この主人は本当に飽きないですね
剣姫さまのちょっと本気が出されます
…私もどうなることやら( ̄▽ ̄;)