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追放剣姫に花束を  作者: あんパ
6/9

6:剣のお姫様の公務

今回もよろしくお願いいたします。


元の話に繋がるお話なのでご容赦ください。


「どうしても無理なのかな?」

調停式典の前日前の晩、ささやかな晩餐をと招待を受けました

正直苦手です、レインの特訓で大分マシになりましたけど、知らないひとは苦手です


なので、剣は手放せません

会食が決まった時に、長兄に剣を返してくれるよう頼みに行きました、ちなみに部屋にいる間はレインがいるので安心ですが

「出来れば【クレイス(小剣)】を… 」

何より隠しておけますし、あの小剣()はまだ産まれたばかりなのでもう少し魔力を馴染ませたい

「…あの僕の指輪以上の魔力の方か…」

出来うる限りの愛情(魔力)をそそいでいますからね

長兄はすこし考えてから

「長剣の方をレインに持たせて控えるというのなら許可するよ」

ネポス(長剣)】の方ですか

「レインいい?」

後ろに控えているレインに訊くと、レインはこの人はなにを言い出すの?という顔をして

「本来それが普通なのでは?」

何て言う、剣をずっと持っていられる侍女なんて私が知ってるのはレインとお母様くらいです

「…クレア、珍しく普通の反応のようだけど、普通は持ち込まないのだよ?」

そう言われても、剣姫になってからは剣は片時も離れず傍らにあるものでしたから

「…あと、小剣はレインに預けておくけど、レイン、この国にいる間は出さないように」

「お部屋でもでしょうか?」

レインが侍女の顔で受け応える

「魔力遮断をし過ぎると、それを不安材料として持ち出してくるからね」

二本を重ねて弱い魔法布で包み、一本と認識させる事で今はごまかしてもらっています。

「今…なら良いですね?」

レインは私よりかなり魔力感知ができるみたいで、見回すだけで大体の魔力が把握できる

今は外からの魔力感知を軽く阻害している状態みたい

レインは侍女服であるエプロンドレスの腰のあたりにリボンでまとめた風を装って小物入れ等を持っている

その小物入れを取り出すと

「まぁクレア様の為に両手剣の一・二本は入れれる様に容量はいつも開けてありますから」

長兄から小剣(クレイス)を受け取り、小物入れに入れてしまった。

いつ見ても不思議ですが、あれは昔からある魔法の品物だそうです

商人さん垂涎の鞄で、国としても貴重な便利な鞄です。

レインのはどれくらいの容量なのかは知りませんけど、確かに小さな鞄一つで荷車一つ分が収納できるだけでも凄い…剣なら何本運べるのでしょう

実はこれに対抗して王剣である古代の剣(おじいちゃん)の叡智を元にしてアレクと剣限定にして効率を良くしようとした副産物がネポス(長剣)クレイス(小剣)です

それにしても、レインの小物入れはコンパクトでいいですよね

「クレア?いつもうらやましそうに見てるけど、君の『宝剣庫』の方が凄いからね?」

そんなつもりはないのですが長兄に窘められる

「でも、食料や着替えとか、手入れの道具とか色々入っていいですよね」

私の感想に、長兄とレインがそれぞれ意外そうな顔と嬉しそうな顔をしている

「なんです?」

「いや、君が剣以外の利便性を考えた事に…正直驚いた」

「クレア様お揃いの小物入れにしましょう♪」

レインとお揃いの小物入れいいですね、容量はそんなに多くなくて良いからほしいです

失礼な長兄におねだりしましょう

「色は…紅か紫がいいです」


その夜の会食は、無難に終わったので助かりました。

気になるのは、剣を抱え持っていたレインが終始注視されていたことと、現フェルディナント国王であるカルマン様、【カルマン・ヴューデンガルト】様が明日の準備のためにという名目で同席されなかった事です

ご飯は、可もなく不可もなくでした、お城の料理はえてしてこれくらいなのでしょう。

家庭の味(お母さんの手料理)が出るうちの城が特殊なのは理解はしています。

そうですね、母の手料理が食べられなくなるのは少し寂しいですね




「やはり顔を出しませんでしたね」

夕食後のお茶もすみ、用意された部屋に戻る。

愛する妹君は侍女から受け取った長剣を嬉しそうに剣帯に通して自分に用意された部屋に戻っていった、かなり緊張していたから今日はそのまま寝かしておこう

「やはり、うちの妹は危険視されてるね」

補佐兼護衛のブレビスが侍女を下がらせて戻ってくる

「何人かが必死に剣の魔力を見定めようとしていましたね」

本当に和平をすすめているのだろうかと疑わしく思うけど、剣姫の剣では用心どころか警戒されても仕方ない

彼等にしてみたら一番の警戒対象であり懸念対象なのだから

「それにしても、提案した本人が現れないとは何でしょうか?」

提案した若き国王カルマン殿が最後まで現れず、相手側が終始恐縮していた

「まぁ、無礼とか言い出してクレアが暴れるとでも思っていたのかもね」

我が親愛なる妹は【剣姫】と呼ばれている、実はこの称号は歴史上何人も持っていたらしいけど、国内では王に次ぐ憧れや尊敬、そして畏怖の対象だった

特に国王が所持するはずの古代の剣、王剣を所持する【剣姫】は恐怖の対象でもあったらしい

…王剣と古代剣の両方どころか複数所持者である剣姫(親愛なる妹)はそんな伝承を覆す国民人気なのだけど…兄馬鹿とあの渡り繋ぐ者に言われているのは無視をしよう

国の伝承や歴史でもこの扱いだったとしたら…敵国になりうる他国ではどうなるか?


…恐怖しかない

実際戦場での彼女を見たものは、味方は希望を見いだすが、敵なら?

そんな彼女(剣姫)を招く…

意図がわからない

こちらとしては抑止力にもなるのでありがたい申し出ではあるし、本当の和平を求めるなら、本当の【現世の剣姫(うちの妹)】の姿を知ってほしいと思っているから受けた話ではある、しかしどこか引っ掛かるのは否めない


その引っ掛かる方が当たるのは世の常なのだけど




「白にしたんだね」

長兄の言葉に意味を考える

「クレア様、褒められてるんですよ♪言葉が足りませんけどね」

レインがこそっと耳打ちしてくれる

「侍女達の総意です」

レインを含めた侍女達がこれを薦めてきた、白はあまり着ないので少し気恥ずかしい。

普段は赤か薄紫を好んで着ているので白はなにか落ち着きません。

白は何かあった気がしますし…

そんな事より、私の愛するシアロゥラ・ブレイド国の為に、確りフェルディナント国との調停式に挑みます。

長剣(ネポス)の柄を握っては出れませんから、白のドレスに合わせて用意してくれた白地に鮮やかな蒼と金糸で飾られた剣帯を軽く握り、長兄に続いた


「拍子抜けしたね」

調停式も終わり、夜の催しまでの休憩として長兄や重鎮たちと休憩としてお茶をしている

何事もなかった、黒髪長髪の若きフェルディナント王、カルマン・ヴューデンガルト様は長兄に引けを取らない立派さでした。

私同様式典参加が苦手でその為に昨日は自分から言い出した晩餐会にも出れなかったそうです。

そうい事になっていますね

「クレア様、大丈夫ですか?まだ調子は戻りませんか?」

レインが剣帯を握ったままで固い表情の私に扇で風を送ってくれている

折角白のドレスに会わせて白と蒼の布に金糸で飾ってくれた剣帯が皺になってしまい申し訳ないです

「姫様は本当に人前が苦手ですな」

心配しているのか揶揄しているのかわからないけど一人がそう言うと

「しかし、以前なら絶対に参列頂けませんでしたしね」

すみません、あの頃は本当ご迷惑をおかけしてます

王族の努めとか、母さ…母を真似て、公務をしないから兎に角剣を振るうことにしていました

…あの頃の私はかなり怖かったと思います

今ほどの腕もなければ、必死で剣を振るうことしかできませんでしたから

怖いというより、気持ち悪く異質なものでしたね

前の私のままなら、私が同席していたら、皆さんこんな会話も出来なかったでしょう

それくらい不気味な存在だったと思います



「…」

控えの侍女に目配せし、私は一旦クレア様の傍を離れる

クレア様はかなり消耗している、剣を振る事以外は普通より優秀でしかない方が頑張っていました。

自国の式典でさえ緊張してぎこちない笑顔をしているクレア様

今日は固まりすぎていて、朝から…無理して作った笑顔は剣姫の噂そのものな、怖い笑みを浮かべた侵略者、殺戮者にしか見えなかった。

侍女達総出で考えて式典用のドレスを白にして、軽い化粧も合わせて表情を明るく見せ、遠目には凛々しく見えるように誤魔化せていたとは思うけど

式典中、ただの置物(オブジェ)と化していたクレア様の出席は本当に必要だったのかしら?

クレア様に無理強いさせたことに少し不満を持ちながら、貸与されている部屋のひとつに戻り、衛士の方に身分を確認していただき急ぎ部屋に入り、クレア様がはやく復調出来そうなものをと考える


…柑橘系のものと蜂蜜を混ぜた飲物を気に入っていらっしゃるので、それに必要な『此方で手に入り辛いもの』を公魔法庫から取り出し、今度は厨房に向かった



「ありがとう、少し調子が戻ったわ」

口調も気を付けないと…それくらいには回復できた。途中から長兄が長剣(ネポス)の柄を握っていいと許可を出してくれて助かりました。

それに合わせてかレインが炭酸水をメインにした冷たくて甘いさっぱりした飲物を持ってきてくれた。

皆の分も持ってくるのは鼻が高い、私の侍女は優秀ですから

私や長兄は飲み慣れていますけど、炭酸にあまりなれてない方は喉ごしに驚いていました。

長兄はあまり振る舞わないのでしょうね、渡り繋ぐ者のもたらす文化に関しては多少猜疑心をお持ちですから

今も少し難しい顔をして、グラスをブレビスに渡していた。


「ここにも渡り繋ぐ者の文化は少しあるみたいです」

そんな長兄を見ていたら、こそっとレインが教えてくれる

「レモネードを造っていたのですが…」

調理場を借りたお礼で振る舞ったけど、驚いた様子もなく飲み慣れた感じでもあり

『剣の国はこっちが好みなのか…』と炭酸にではなく、炭酸水の瓶に注視していたそうです

渡り繋ぐ者はどこにでも現れますね

「こちらで用意できるものでの文化は歓迎なのですけど」

希にこちらの文明に大きく干渉するものを持ち込む者もいるらしく、ツルギはそういうものを回収破壊することもしているみたい

あと、こちら(この世界)にないものを高値で販売していたりもあるらしいけど、それに関しては少し緩い。

ブレイド国(うち)は上質な調味料が普通に生産できているが、向こうの世界(異世界)の上質な砂糖や塩・胡椒を持ち込んでお小遣い稼ぎをする者もいる

魔法鞄や私の宝剣庫みたいなゲートの術に近いものを使ってしているとツルギから教えてもらった

ツルギも繋がった世界の通貨を手にいれるためにそういうものを多少持ち歩いているから全てを否定は出来ないと言っていた

ちなみに、私は彼の持ち込む物の中で【星の形の砂糖菓子(コンフォート)】が大好きです

作り方も国にも知らされていて、母も作ってくれますが、彼が私の為に持ってきてくれる色とりどりの星の砂糖菓子、あれは特別で瓶を入れ替えて部屋に飾ってみたり、少量を小瓶にいれて薬かお守りみたいにしています

もちろん、食べますよ?

保存食としても良いものなので、長兄は白一色の簡単なものを渋々軍の保存食に採用しています

城内でたまに出回るのは母の作ったものと、私がツルギから貰ったもののお裾分けです

「この国にも繋がりはあるのですね」

なにか不思議な気分になり

星の入った小瓶をドレスの上から押さえて確認をしてみたりしていた

皆に言わせるとそれは私が不安を感じている時にする癖らしいです


何故か嫌な感じが収まらないのです



ブレイド国の保存食は改善されて好評ではありますが…保存食には変わりありません。

クレアがそこまで食に拘りがないタイプなので遠征中の食事に不満が無い為改善されなかった様です。

…一緒の物を食べるため、周りも何も言えないというある意味酷い環境。


また次回もよろしくお願いいたします。

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