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やっぱりボクは馬鹿だった


「ボクは……、ボクは……、必殺技を編み出していないじゃないか!!」


 源太郎は変身する際のポーズ、掛け声は完璧に習得したつもりだったし、悪の組織と戦うだけの体力も付けたつもりだった。


 しかし、最後のボス戦になった時には、どうしても必殺技が必要だ。

 それが無いと、多分ボスには勝てない。


「ここまで来たのに……」


 源太郎は後悔した。

 十五年も時間があったのに、必殺技の1つも考えてなかったとは不覚だった。


 ――だが、ふと思った。


 ――テリーヌに変身したら、クリスマスツリーの頂点に付いてるようなキラキラした星の付いたステッキ、『スターライト・シューティングスター』をきっと装備してる筈だから、それを使えばきっと必殺技は出せるのよ。そうだわ! 今は『スターライト・シューティングスター』が手元に無いんだから、必殺技を出すことは出来ないんだわ!


 思考が既に少女チックになっている事に源太郎が気づいていたかどうかはともかく、そう思い付いた途端、源太郎はすっくと立ち上がって、あの店を目指し少女の様な内股の小走りになって向った。


 果たしてその店は、まだそこにあった。

 あの頃と何も変わらない外観、何も変わらないドア、そして看板には営業中の文字。


 源太郎は意を決して、その店のドアを開けた。


「こんにちは!テリーヌです! やっとお金持ってきました!」


 テリーヌは足を踏み入れたその店内の隅々まで声が届くように、元気よく挨拶をした。


 暫くすると、店の奥からあのフードを纏った老婆が現れた。


「テリーヌって誰じゃ?」


「あ!いや、その、あの、あの、源太郎です。十五年前に一億円を持って来いって言われた橋爪源太郎です!」


「おぉ、あの時の……。そうか、やっと来たか……」


「はい! はい! そうです! そうです! あの時のテリーヌです!」


「テリーヌ?」


「あぁ、いやもうそんな事はどうでもいいでしょう? さ、ここに一億円あります。耳を揃えて持ってきました! 早くテリーヌにしてください!!」


 そう言いながら、源太郎は紙袋に乱雑に詰めてきた現金の束をドサドサっとテーブルの上に出した。


「おぉ、やっとお金が出来たのか。よく頑張ったのう。それに見た目も随分変わっていい男になりおって……」


「はい! ありがとうございます。早速テリーヌにしてください。矢張り変身ポーズをした方が良いですか?」


 源太郎は興奮気味にそう捲し立て、変身しようと両足を肩幅の広さにし、長年研究を重ねたポーズを決めるため、右腕を高々と挙げようとした時だった。


 その老婆が大きなネズミ付きのフードをおもむろに取って、初めて顔を見せた。

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