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魔法少女になりたいの!


 源太郎は毎週毎週秋葉原に溺れる程通いつめ、魔法少女物に萌えまくり、部屋の中もフィギュアやポスターにびっしりと囲まれた、絵に描いたようなオタクだった。

 だから、その魔法少女自体になれるなんて、それこそ究極の夢、死んでもいいとさえ思った。


「で、でも、そんな事って在り得ないと思うんですけど……」


「どうしてじゃ?」


「まず、ボクは男だし、少女になれる理由がないですよ」


「甘いの、若いの。まだまだじゃの」


「え?」


「いいか、若いの、よく聞け。世の中にはお前の知らない事がまだまだ沢山あるんじゃよ?」


「もしかして、本当にボクが、このボクが『魔法少女テリーヌ』になれるんですか!?」


「テリーヌってなんじゃ?」


「あ、いや、その、あの」


 源太郎はいつも誰かに渾名で呼ばれた時、自分の中でテリーを勝手にテリーヌに変換して応えていた。


 『おい、テリー。ちょっとコーヒー買ってきてくれ』

 (ねー、テリーヌ。ティータイムにしない?あ、でも今日はコーヒーの方がいいな)


 『テリー、お前なんかくせーぞ。風呂にちゃんと入ってんのかよ?』

 (テリーヌ~。今度一緒に温泉行かない?)


 源太郎はとにかくポジティブシンキングだった。


「ま、名前なんぞ、自分で好きに付けるがいい。それで魔法少女になってみたいのかえ?」


「もちろんです!!」


 源太郎は胸を張って、右手を高々と挙げ、全身全霊でそう答えた。


「それなら、一億円持っておいで」


「えーーー」


「何が『えー』じゃ。無料でそんなサービスする店が何処にある。それに別に今直ぐじゃなくても構わん」


「では、分割払いでもいいですか?カードなら、あっ、一億もショッピング出来ないか……」


「分割はだめじゃ。きっちり耳揃えて現金で持ってこないとだめじゃ」


「そんなぁ……。ボクそんな大金もってないし」


「だから、今直ぐじゃなくてもなくても良いと言っておろうが」


「そう言われても、一億なんて必死で仕事しまくっても十年やそこらじゃとても貯められないですよ?」


「だったら、十年でも二十年でも必死で仕事でも悪い事でもして貯めればよかろう」


「悪い事って……。それで貯まった頃には、この店が無くなってるとかだと困るし」


「それはない。絶対にじゃ」


「本当ですか? でも、何十年もお金を作るのに時間が掛かったら、ボクはお爺さんになってしまうし……」


「心配なら、いつでも見に来ればいいじゃろ。それに魔法少女になってしまえば、その時のお前の本当の年齢など関係なくなるぞ?」


「あぁ! なるほど、そうなんですね。分かりました。テリーヌになるために死ぬ気で頑張ります!」


「テリーヌってなんじゃ?」


 それから源太郎は一億を稼ぐために死ぬ気で働いた。


 それまでやっていたコンビニの弁当を盛り付けるだけの流れ作業を止めて、朝から深夜まで可能な限り仕事をして、禿げ上がるのも気にせず、秋葉原に行くのも、萌えグッズを買うのも諦めて必死で仕事をして、貯金しまくった。


 全ては『テリーヌ』になるためだった。


 どんなに辛くて大変でも、いつか『テリーヌ』になれると思えば全ての苦労を乗り越える事が出来た。

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