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お前、魔法少女になってみたくないかえ?


 店内に入ると中は薄暗く、少しお香の様な匂いがしたが、人の気配はなかった。


「すみません……」


 源太郎は殆ど装飾されていない店内を見回しながら、奥に向かって声を掛けた。


「すみません、誰か居ませんか……?」


 再び声を掛けると、


「いらっしゃいませ」

と言いながら酷く腰が曲がった老婆が、全身を覆うフード付きのマントの様なものを羽織って奥から現れた。


「うっ……」


 ちょっと異様な風体に源太郎は驚いた。


 近くまでその老婆がそろりそろりと歩いて来て、少し明るくなった所でその全身をはっきりと見ると更に驚いた。


 『ふ、フードに耳が付いているなんて!』


明らかに魔女の様な出立ちをしているのに、千葉の方にあるネズミ王国の主人公の様な大きな耳付きのフードに意表を突かれた。

そして、それが意外に可愛かった。


「あの……」


「なんじゃ?」


「この店は何の店ですか?」


「何と言えばいいかのぅ……」


 耳付きフードの老婆は何て答えればいいのか迷っている様だった。


「コスプレ関係か何かですか?」


「コスプレ……? あぁ、そうじゃの、まぁ似たようなもんかの」


「なるほど。じゃ、お婆さんもコスプレですか?」


「そう見えるかの? これは店員の制服的な感じを意識して誂えたんじゃが、何処かおかしいかえ?」


「い、いえ、それならそれでいいんですが……」


 源太郎はそれ以上突っ込めない雰囲気の老婆に圧倒されていた。


「それで、ここは……」


「あぁ、この店はな、お前の様なブ男を変身させる、そうじゃのぅ、エステみたいなもんじゃ」


「エステ!!」



衝撃的な発言が幾つかあった。


 ――ブ男……

 ――でも、それはいい。

 ――自分でも分かってる事だ。


 それよりも気になったのは、『エステ』の方だった。


店内を逆さまにひっくり返してみても、エステなんて高級感溢れるイメージとは真逆の位置にある雰囲気の店。


 ――ここで肩を揉んだり、顔の脂を取ったり、爪に絵を描いたり、髪を金髪に染めたり、耳掃除をしたりするのかな……?


源太郎の想像するエステの知識はその程度だった。


「あの、エステって言うと……」


「ま、エステと言ってもな、ちょいとマッサージ等をして、小奇麗な感じにするエステとは違うんじゃよ」


「はぁ。ではどんな事をするのですか?」


「お前、魔法少女になってみたくないかえ?」


「え??」


今度は稲妻に打たれた様な衝撃を受けた。


「ま、魔法少女って……?」


 ――魔法少女って言うと、アレかな、ステッキとか持ってフリフリのミニスカートを穿いて、胸の所に大きなハートの飾りが付いたペンダントを掛けて、小さめのハットみたいなのを斜めに頭に付け、パンチラをギリギリしない角度を保って必殺技を出し、悪いヤツラを退治するボクが超絶憧れている、あの魔法少女か?


 源太郎は自分の思い描く憧れの萌え切った魔法少女を全力で想像し、すっかり間抜けな表情を晒していた。


「何アホ面をしとるんじゃ。それより、魔法少女になりたくないのかえ?」


「いやいや、ちょっとそれは今のボクがやったら通報されるレベルの酷さかと」


 源太郎は自分のルックスの欠点は自覚していた。


「そりゃ、今のお前が衣装だけ身に付ければそうじゃろうな」


「ですよね……。だったら無茶はしない方がいいかと」


「わしが言ってるのはそういうんじゃない」


「どういう事ですか?」


「お前の見た目も何もかも全部魔法少女に変えてしまうのじゃ」


「それって、ボクがあの可愛い魔法少女になってしまうって事ですか?」


「その通りじゃ」


 それは源太郎にとっては正に夢の様な話だった。

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