少女は、雨宿りをする
「急に降ってくるんだもんなぁ」
部活からの帰り道、私は急に降り出した雨に打たれ堪らず、近くにあった小さな駅の構内に入った。
いつも学校の行き帰りで見かける駅ではあったが、立ち寄ったのは初めてだ。
恐る恐る入ってみると駅員は居ないし、自動改札もない。
どうやら無人駅という奴らしかった。
入ってすぐに待ち合いの小さな空間があり、8畳ほどのスペースの中央には古臭い石油ストーブが置いてある。
床や壁はコンクリートで出来ていて、所々に小さなひび割れが見られる。それが、この空間の何とも言い難い”寂し気”の演出に一役買ってくれている。
壁際には木製のベンチが4つ置いてあり、その上には手作りみたいな座布団が数枚ずつ置かれていた。
私はベンチに腰掛けようと思ったが、先客が居たので警戒して辞めた。
多分男の人だ。
ベージュのシルクハットを顔の上に乗せて、ベンチのスペースを贅沢に3-4人分使って寝転がり、いびきを欠いていた。
春も過ぎたのに、ベージュ色のコートを着たままに眠っているので、”暑くないのかな?”というのが私の素直な感想。
(私、ピチピチの女子高生だから、この状況はちょっと危機感持っちゃうなぁ)
自分でピチピチと言ってしまうのがイタいことは、自分でもわかっていますとも。はい。
雨脚は先から強まる一方で、一向にこの場から離れられる気配はない。
(あの人、ずっと寝ててくれたらいいけど)
私はそんなことを思った。