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第9話 初依頼

 会社を立ち上げて1週間、モンスタ一の情報収集方法は3つに分けられた。

 

 1つ目は、一般人からの情報。匿名サイト等で、何処其処でなにを見たっというものでガセネタも多いが迅速に情報を集めることができる。

 

 2つ目は、実際に被害に遭っている人物からの情報だ。

 公的機関へも通報したが、待ちきれない人物からのものである。

 比較的情報が確かで通報者の敷地内または近所で、発生源があることから解決すると、国からの報酬以外にお礼金が二次的にもらえることの多い美味しい事案だ。事前の交渉は必要であるが。


 3つ目は、政府、地方自治体の発表する情報である。

 比較的情報は遅いが、情報の確かさは3つの中で一番である。被害者が既に出ている場合も多いが。


 数は少ないが既に数社誕生しているモンスタ一の駆除会社はこれらの情報を駆使して情報を集める。

 また、直接会社に依頼が来ることも多いが、命のかかった仕事であるから、受ける、受けないは基本的に自由であるが、受け手の無い依頼は自衛隊をだすのを嫌がる政府の決定により、重武装した各県警があたるが、殉職者が出るのも珍しく無い情勢であった。



 そんな中に、ガ一ディアンへの初依頼が舞い込んだ。

 依頼主はとある地方自治体からで、ゴブリンの群れが現れて、家畜の被害や、怪我人も出ているというものであった。


 成功報酬もお役所仕事にしては高値が提示されており、早速社員全員での会議が始まった。

 柊と井上がゴブリンという手頃な相手であることから、賛成の意思を示すと松浦が待ったをかけた。

 情報は、ゴブリンの目撃証言と被害者、そして家畜が襲われて被害が出ているということがはっきりしているだけで、数も、本当にゴブリンだけかも分からない。

 そんな状況で依頼を受けたら解決に何時までかかるかも分からない。

 ここは、現地の状況を調べて、モンスタ一の駆除日数を定める等の対策が必要だと一気にまくし立てたのである。

 柊と井上はただ頷くしかなかった。


 初依頼ということで、少し浮かれていたのかもしれないと柊は思い、

 「すまなかった」

と松浦に頭を下げた、すると、松浦は慌てて、

 「ち、違うんです、私の考えじゃなくて本の受け売りで・・・・」

と両手を振りながら答えた。

 松浦も携帯小説で異世界物を読んだことがあり、ガ一ディアンに入ってからも読み返し、初クエストの重要な点などをメモ帳に書き込んで来る程の熱の入れようだった。

 ク一ルな女性だと思っていた松浦の意外な一面だった。

 

 それからは、3人でさまざまな状況を想定し、ホ一ムセンタ一等で買い物をし、準備を進めていった。



 依頼主の町役場に対して、メ一ルで取り合えず現地に行き、状況を調査して依頼を受けるかの判断をすると返信すると、1時間もしないうちに交通費、宿泊費は町で負担するので、直ぐにでも調査に来て欲しいというメ一ルが返って来た。

 余程切迫しているのだろうと話し合い、現地に到着後直ぐにでも依頼を受けられる準備をしてあったことから明日調査に向かうことを決めて依頼主へ連絡した。


 中身を色々と改造した中型トラックを井上が運転すること、4時間あまり(井上は自衛隊の任期中に運良く大型免許を取得していた)到着したのは、地域の温泉と地元の特産物を上手く生かして、観光客の誘致に成功した少し田舎のム一ドを残した街であった。


 街のやや中心から離れた場所にあった町役場に向かうと、ずっと待っていたのだろうか?中年の男性が走ってトラックに向かって来た。

 「ガ一ディアンの方々ですか?」

 息を切らしながら、男性は助手席に座っていた柊に声を掛けて来た。


 因みに松浦は後部座席でこの地域の情報等を集めていた。

 「始めまして、ガ一ディアン代表の柊誠といいます。貴方は?」

 そこで男性は礼を失していたことに気付いたのか、名刺を取り出し、

 「獄ケ谷町役場観光課の松本と申します。今回は良くぞ来て下さいました!」

と叫ぶように自己紹介をした。

 そこで松浦が後部座席から顔を出し、

 「ここでの長話も何ですから場所を変えては?」

と提案した。

 松本も、

 「そ、そうですな。では、応接室の方へ」

と一行を町役場内へと案内した。


 あの秋の事件からはや数ヵ月、肌寒くなってきた時期に暖房の効いた応接室は心地よかった。

 松本から今回の依頼について再度聞き込みと新しい事実が判明してきた。

 

 始まりは1週間前に鶏を飼っている家の犬がやたらと吠えていたことから、家主が庭に出てみると鶏小屋に子供くらいの緑一色の肌をした生き物が5~6匹群がっていたのである。

 家主は直ぐにTVでやっている異世界法というものの対象である特定危険未確認生物だと気が付き、犬を抱えて家に入り、110番通報した。

 駐在所の駐在さんと応援の警察官が駆け付けた時にはもう居なくなっていたが、目撃情報から対象が緑小鬼、通称ゴブリンであることは特定されたが、下関の山道での事件の記憶も新しい。  


 警察としては、戸締まりを呼び掛け上に報告し、適合者を派遣してもらうのを待つしかなかった。

 しかし、被害に遭った家主の知人の猟師がそんな化け物の数匹退治してやると猟犬を連れて1人山に入ってしまったのである。

 

 山に入ること3時間、猟犬がゴブリンの痕跡を見つけて追い出した。

 暫くして猟師は山の中腹に自然にできたはずの知っている穴がゴブリンによって広げられ巣穴となっていることを知った。


 流石にこれはマズイと思って引き返そうとした猟師だったが、既にゴブリンに見つかっており、追跡を受けた。

 石や矢が無数に飛んで来てそのうちの1発の石が猟師を肩に当たり速く歩くのが困難になって来た。 


 それを見た猟犬は主人を守らんと、ゴブリンの群れに飛び込み猟師は何とか下山したが、猟犬は帰って来なかった。

 猟師は直ぐさま町役場に駆け込みゴブリンが巣を作っていることを告げた。

 猟師が街の名士ということもあり、町役場は大騒ぎになり、適合者が派遣されるのを待つと手遅れになると考え、一番被害が大きくなりそうな観光課の松本が適合者誘致の責任者になったのである。


 それらの情報を聞き、松浦が提示した契約書は 


 ・ゴブリンの巣穴を全滅させること


 ・全滅させた後に3日間ゴブリンが目撃されなければ依頼達成

  

 ・巣穴について黙っていたことから、成功報酬を1.2倍とすること


 ・別種の特定危険未確認生物が発見されたなら報酬の増額


等であった。

 報酬については直ぐに決まったが、依頼達成が最短で3日ということに残党を心配していた松本であったが、それこそ、派遣されて来るであろう適合者に頼れば良いと、松浦が押しきった。


 斯くして、ガ一ディアン初依頼が開始された。




 



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