第5話 帰還
「お~い!柊~!」
聞こえてきたのは、同じく山道を登って来た同僚達の声だった。
しかし、今の自分はフルプレートメイル。
下手に遭遇すると、いままでの怪異のように誤解され撃たれるのでは無いかと兜をいじっていると止め金のような部分が外れたのか脱ぐことができた。
「自分は此処です!」
柊巡査は声が聞こえた方へ叫んだ。
聞こえたのかざわめくような声がして近付いて来る物音が大きくなって来た。
「柊!」
撤退の命令を出した警部補が草むらの向こう側から現れた。
しかし、一旦近付くのを止めると、戸惑った様子でいたので自分から斜面を転がり落ちたら此処まで来たこと、変なサ一クルを見つけ気を失ったこと、目を覚ましたらゴブリンが現れ、殺したことを簡潔に報告した。
逆に自分が居なくなってからのことを聞くと怪我人が居たこともあり、下山して応援を連れて戻ることにし、急いで下山し、待機していた救急車に猟師の老人を引き継ぎ、登山道を封鎖していた機動隊から応援を得て戻って来たとのことであった。
「猟師のじいさん矢に毒でも有ったらしく駄目かもしれんそうだ。しかし、お前その鎧どうにかならんのか?」
っと言われても脱ぐことはできそうであったが、それ以上はどうしようもなかった。
「すげぇ、コレ柊が殺ったのか?」
ほとんどの隊員の関心はゴブリンの死体に向いており、真面目な一部の隊員がサ一クルやゴブリンの死体を写真撮影していた。
「ゴヴゴブ!!」
そこへ空気も読めず2匹のゴブリンが捜索隊の面々の前に現れた。
しかも、1匹は例の毒矢もちのゴブリンだった。
毒矢のことを知っていた面々は怯んだが柊巡査は2度目ということもあり、咄嗟に叫んでいた。
「弓矢のゴブリンは自分が!もう片方を牽制して下さい!」
叫ぶとヘルムをかぶり直し突進した。
もう1匹が邪魔をしそうになったが拳銃の集中射撃を喰らい死にはしないが動けなくなっていた。
弓矢のゴブリンはいきなり自分が正面から相対することになるとは思っていなかったのか慌てて棒立ちになっているのを真正面から腹に剣を突き刺した。
「グギギギギ」
唸るゴブリンから剣を捻りつつ引き抜き傷口を広めると、弓矢持ちのゴブリンは倒れた。
もう1匹のゴブリンは血を流しふらついてはいたが、生きていたので近付いて首をはねた。
「終わったのか?」
誰ともなく呟く。
皆牽制と言いつつ殺す気で撃っていた為、弾切れが多く再度の襲撃には耐えられない為に増援と鑑識を含めた部隊と交代で山を下りることとなった。柊巡査が最後にサ一クルを見ると花や茸は枯れ、石も砕け、原形を留めてはいなかった。
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