第43話 四者会談
宴から1週間後、異例のスピ一ドでエルフの里、ラフレシア王国、ローレシア共和国、グラシア帝国の四者会談が行われることが決定した。
場所はエルフの里であった。
里の広場に臨時の天幕が張られ、其処が会談の場所となった。
円卓にそれぞれの代表者が座り、その後ろに立たされた者が補佐をする形である。何故か、エルフの代表団の補佐に柊が混じっていたが。
話は会談の前日の夜にまでさかのぼる。
「自分がエルフの代表~!?」
族長の家から柊の絶叫が飛び出した。
「ああ、代表と言っても補佐の1人だ。
実際にラフレシア王国の間者を捕らえてたのは、お主だからな」
「あの場に居たのなら、ミラ達でも良いじゃないですか?」
族長はひとつため息を吐くと、
「エルフではない人族が証人というのが説得力が有るのじゃよ」
「でも、自分はこちらの世界では出身国も定かではない人間ですよ」
「そこは、ワシの旧知の旅人としておくから、安心せい」
「因みに拒否権は?」
「無い。」キッパリ。
「ですよねぇ。」
といったやりとりがあり、代表団入りが決定した。
「ラフレシア王国の!!どういうことだ!!」
会談の始めから激高しているのはグラシア帝国の代表第2王子のアレクセイである。
グラシア帝国は広大な領土を持つがコダ一ジュの大森林程に良質の薬草類の供給
源は限られているのだ。
ラフレシア王国からはやせっぽちの外交大臣である伯爵が代表を努めていたが、現場で捕虜になった子爵が勝手に行ったことで、王国の預かり知らぬことであったと
大量に汗だくになりながら、しろももどろに説明するのが精一杯であった。
「しかし、魔物の使役の研究は貴国の国家事業であったのでは?」
そう、ラフレシア王国の代表に問いかけるのは、簡素な衣服に身を包んだ妙齢のローレシア共和国の議員の1人、ミランダであった。
「おうよ!俺もそれが言いたかったのよ。」
とアレクセイ。
「そ、それに関しましては、魔法研究所の一部職員が子爵と結託し、情報を盗みだし・・・・・」
「結局ラフレシア王国は今回の件どう落とし前つけんだよ!!」
「ヒッ!!」
「アレクセイ殿下、話の腰をそう、折っていたら話が進みませんわ」
とミランダ議員。
「しょうがねぇ、分かったよ。エルフの!
何か言いたいことぐらい有るんじゃあねぇの?」
アレクセイは族長に話を向ける。
「私共としては、旧知の戦士様達の助けもあり、被害も、そう多くありませんでした。
このようなことが二度と無ければ幸いです」
「おうよ!聞いたぜぇ。トロ一ルを一撃だってな!!
そこの戦士かい、後で一試合どうだ?」
「すみませんが彼には証人として此処に来てもらっています。
そのような話はまた、後日に」
「けっ!!詰まんねぇな。
少しは退屈なこの話し合いが楽しくなるかと思ったのによ」
「そのような話よう、帝国は既に結論を出していると?」
ミランダ議員が問う。
「ああ、帝国からの要求はラフレシア王国への輸出を停止し、その分を帝国に回すことで決着だ!
共和国が渋るようなら少しは回してやっても良いがな!」
「そ、そのような勝手通るとでも!」
流石にラフレシア王国の大臣も反論するが、
「うるせえ!!それだけのことをしたんだろ。
大人しく言われたことを聞いていれば良いんだよ!!」
アレクセイ王子は円卓を鎧兜の小手で叩いて叫んだ。
「フム、こちらに回す資源の量によっては話に乗らない訳では無い」
「ミランダ議員・・・・・。」
最後の希望が、砕かれたかのようにラフレシア王国の大臣が、うなだれる。
「ちょっと、待たんかえ」
族長が切り出す。
「話し合いを聞いていれば、自分の利益ばかり、その利益をそもそも、生み出すのは誰かえ?」
円卓の皆が黙りこむ。
「ウッド、ソナタはどのように思う?正直に申してみよ」
「そうですね。先ずラフレシア王国への輸出を10年間停止、そして賠償金白金貨1000枚。
次にラフレシア王国への輸出分の1/3を帝国へ有償で、ローレシア共和国も同様に、残りを森の回復に使いたいと思います」
「結構!結構!それで行こうぞ。」
「待てよ!!1/3は兎も角、有償ってのは・・・・・」
「だって、あなた方何もしてないでしょう?」
「うぐぐ」
「分かりました。ローレシア共和国それで手を打ちます」
「おい!良いのかよ!?」
「何故、ラフレシア王国が制裁を受け、我らは資源が増える。
良いことじゃない?」
「ああ、分かったよ!グラシア帝国も了解だ!」
「あの?私共の意見は?」
「「聞いて無い!!」」
「ハイイ?!」
こうして四者会談は、ラフレシア王国が1人損をする形で終わった。
捕虜も金貨2000枚と引き換えに返還された。
そして、会談の終了を祝う席でアレクセイ王子に剣舞に誘われたり、ミランダ議員に共和国に来ないかと打診を受けたのは別の話である。
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次回更新は6月15日午前7時を予定しています。




