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第32話 組合2

 「エルフを捕らえさえすれば良いことと、おっしゃいますが、それが後々どのよう

な結果を招き兼ねないのか理解した上での発言でしょうか?」



 柊は怒りを押さえ込みながら言った。


 「最初に言った筈だ。公益の為ならば、異世界のヒトモドキなどどうでも良いのだ」


 中央の男は、悪びれる様子も無く、言い切った。


 「ふっっざけるな!!!エルフはミラは物何かじゃあ無いんだ!!何様だ、お前ら


は!」


 遂に柊の堪忍袋の限界だった。


 「そうよ!ミラは笑いもし、怒りもする人間よ!!」


 井上も声を張り上げる。


 「エルフの実態を世間が知れば、あなた方は何て呼ばれるんでしょうね」 


 松浦も冷静に見えて、怒りをにじませていた。


 2人共短い間ではあったが、柊の通訳でミラとの生活を楽しんでいた。

 片言なら意思疎通が出来ていたほどである。

 生まれた世界は違えども彼女達は確かに友達だった


しかし、そうは受け取れないのが男達である。



 「ミラだと!個体識別が出来ていたのか!!」


 「会話は出来たのか?文明レベルは?」


 「他にエルフはどのくらい居るのだ?」


 

 男達はガヤガヤと騒ぎ出した。


 「もう少しまともな人間は居ないのかよ!この国は!!」


 柊は泣きたくなった。


 「自分は、俺は自衛官になる時、自らの身もかえりみず、国民の為に尽くすと宣誓した。


 守りたい人がいる。ああ、確かに守りたいと思った人達は沢山居たさ。しかし、その代表である、あんたらがそれで、どうするよ!?」


 井上も発言する。


 「私も自衛官を退官した身ですが、あの宣誓は忘れられません!」


 井上は、既に泣き出していた。


 松浦は井上の肩を抱き抱えると静かに男達の方を見ていた。




 男達の反応は様々であった。


 何を言っているんだコイツらは?と馬鹿にしたような顔をする者、何か思い出しているのか虚空を見つめる者、黙って拳を握り締める者、表情を見せない者、携帯電話で、何処かに連絡している者などであった。




 「それでは、自分達は帰らせてもらいます。」


 柊が言うと、


 「待て!そんな勝手許さんぞ!!」


 何か言いたそうにしていた高齢の男が、根拠も無く柊達を引き止めようとしたが、


 中央の男がそれを遮った。


 「守りたい人がいる、か。柊代表、元の所属は?」


 「はい、元陸上自衛隊第117普通科連隊陸曹候補士、柊誠陸士長です」



 「金貨のことは一旦保留としよう。エルフの人権上の話もな。」


 「しかし、それは・・・・・・・。」


 まだ、食い下がる男達に中央の男は一瞥する。


 「彼らの協力が得られない現状、これ以上の拘束は違法であると判断するが如何(いか)に?」


 残っていた男達も黙り込む。



 柊達は、黙って組合の建物を後にした。








 「守りたい人がいる。か、私は本当に正しいのか・・・・・」


 男の独白に答えるものは居ない。







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次回更新は5月24日午前7時を予定しています。

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