第27話 帰還
異世界から帰還した途端雨が降っており、びしょびしょに濡れてしまった。
これもまた、世界間移動の弊害だなっと柊は思った。
GPS付き携帯でガ一ディアンの事務所に電話をすると、
「社長ですか?」
と松浦が電話に出た。
この番号でガ一ディアンの事務所に電話をかけるのは柊だけなので、当たり前ではあるが。
「ああ、此方の世界に帰って来たぞ。
1週間振り位か?例の場所に出たが、雨に濡れて敵わん。
迎えに来る際は着替えを頼む。」
と柊は要件を簡潔に言った。
「了解しました。井上と向かいます。
社長が留守の間も討伐依頼が入って大変でした。
他にご用件はありますか?」
「留守中すまなかったな。
取り合えず異世界の金貨が有るから取引所に行って換金しよう。
話しはそれからにする。」
「分かりました。では、駐車場でお待ち下さい。直ぐに向かいます。」
「ああ、よろしく頼む。」
と言い、柊は電話を切り、以前の依頼でも、利用した駐車場へと向かった。
待つこと2時間程すると、見覚えの有る中型トラックが駐車場に入って来た。
助手席から松浦が傘を差して降りて来た。
「お久しぶりです。
社長!着替えは後部コンテナに置いてあります。」
と傘を差し出して来ながら言った。
「社~長!!」
助手席の窓からは井上が身を乗り出して、手を振っていた。
それらを感じて帰ってきたのだと柊は実感した。
「こ、ここここの金貨はどうしたので?」
適合者の為の取引所の係員は慌てながら、柊達に問うて来た。
今まで、討伐の戦利品として、少数の鉄貨や、銅貨、銀貨を扱ってきたが、金貨しかも50枚という数に驚いたのである。
「説明しても良いが、もっと上役の人間を頼む。」
柊は言い切った。
「それは、私では不服と?」
係員は不満そうに言った。
「そう言っている。」
柊は言い返した。
「分かりました。」
係員は奥の部屋に入って行くと、暫くして、別の係員がやって来た。
「当センタ一を預かります田上と申します。
何か大切な話しがあるとか?」
「この場所には他に耳目が無いから、はっきり言うが、この金貨は異世界に行って手に入れて来た物だ。
買い取りは、その点を考慮して行って欲しい。
情報は別の料金だ。信じる信じないはソチラの勝手だ。」
「危険生物達のやって来る異世界に行って、帰って来たと?まさか?」
「事実のみを報告している。
後はソチラで調べて結論を出してくれ。」
「分かりました。金の現在の相場から金貨1枚5万円とし、50枚あることから250万円、付加価値とを足して300万円で買い取りさせていただきます。
正し、後日、事情聴取をさせていただく場合があります。」
「了解ですが、情報もタダではありませんからね。」
そう言って、柊達は取引所を後にしたが、その後取引所を始めとした各異世界法案に関する部署が大騒ぎになったのは、言うまでもない。
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次回更新は5月14日午前7時を予定しています。




