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第24話 交渉 2

 里の人手を総動員して、宴の準備が行われ、夜のとばりが下りる頃。

 宴の準備は整った。



 里の中心部に設けられた広場の真ん中のかがり火の前で、族長が口上を述べる。


 「今日は良き日じゃ。

 行方知れずになっとったミラリアが帰還し、里に新たな風を吹き込んでくれおった。

 異世界の騎士団ガ一ディアンとの間に多量の香辛料の交易の同盟を取り付け、里はますますの発展を遂げていくじゃあろう。

 疑うものは宴の料理を食して見よ!これは異世界から妖精の加護によりもたらされた物である!

 では、乾杯!」


 「「乾杯!!」」


 里のエルフ達も唱和し、宴が始まった。


 集まったエルフは約300人、里の殆どのエルフが集まっていた。


 皆、食べた事の無い物、珍しい味付けに舌鼓をうった。


 エルフ達の中には今回の宴の主賓である柊とミラリアに話し掛ける者も少なからず居たが、柊の存在を良くなく思っている者も里の中には少なからず居るようであった。


 しかし、里の方針としてガ一ディアンを受け入れ、人族との交易を成り立たせるという決定には異議を唱える事ができず、ただ片隅で集団を形成していた。


 宴は一晩中続き、殆どの者が朝日を拝む事となった。






 「痛っ~まだ頭痛いよ。」


 「ドワ一フの火酒ほどじゃないけど、エルフの秘酒をアレほど飲めば二日酔い位なるわよ」


 夜が明けて、柊はミラの実家にお邪魔して朝食を頂いていた。


 「柊さん、うちのじゃじゃ馬娘を連れ戻してくれてどうも、ありがとうございます」


 机の上に追加でサラダの入った皿を置いたのは、ミラの母親であるラミリアである。


 「じゃじゃ馬は無いでしょう、じゃじゃ馬は!」


 ミラは反撃を試みるが、


 「ちょっと森に入って来るって言って出掛けて1週間近く帰って来なかった子が何を言っているのかしら?」


 「ヴっ?!」


 ラミリアの返しに撃沈される。


 「まあまあ、そのおかげで私達はミラに会えたんですし悪い事ばかりでは、有りませんよ。」


 柊も擁護するが母は強しである。客であるにも関わらず一緒に説教を受けてしまった。



 朝食後、昨夜の宴の痕跡の残る里の中を柊とミラは歩いていた。


 「誠、何処に向かっているの?」


 ミラは不思議そうに尋ねる。

 訪れたばかりの里に柊の知己がそう居るとは思えなかったからだ。


 「族長の何処だよ。昨夜の宴で僕ら世界の品物の良さは分かって貰えたと思う。けど一度に全部売り出すと最初は良くても、インパクトが無くなって行くと思うんだ。

 だから、販売する品物の発表の順番とかを話し合おうと思ってね。」


 「へぇ~、色々と考えているのね!」




 そうこうしている間に族長の家に着いていた。ノックをするて、最初の日に族長の後ろに控えていた男性のエルフが出て来た。


 「サトレアさん、族長はいらっしゃいますか?」 


 ミラが尋ねると男性、サトレアは、


 「居るには、居るんだが・・・・・」


と口を濁した。


 すると、家の中から、


 「柊殿達か入って貰え」


と病人のような族長の声が聞こえた。


 柊とミラは、恐る恐る中に入って見ると、氷水を入れた革袋を頭に当てた族長が机に伏せていた。


 「族長どうなされたのですか?」


 柊が思わず聞くと、


 サトレアが冷たい口調で、


 「ただの二日酔いですね。

 毒見じゃと言って全部の種類のお酒に手を出すからこうなるのです。」


 「にゃにを!危険が無いか事前に調べるのは、おさとして当然の事じゃ!!」


 「だからといって、1人でやる事も、何杯もおかわりすることは無いでしょう!!」


 「ううっ」


 ついに族長が言い負かされてしまった。  

 大丈夫かな?この里。


 「客人とあればしょうがない、仕方ない」


 「ポイズンキュア!」


 呪文のようなものを唱えると、そこにはしゃっきりとした族長が居た。 



 「それで、昨日の今日で何用かな柊殿?」


 「ええ、利益の配分については取り決めを交わした通りですが、販売する品物についてお話が。」


 「成る程、昨日実際に試させて貰ったが、あれだけの品々じゃ。

 前言を撤回する様だが、手に入れんと軍を送り込む国が表れかねん。

 そこで品物の種類を絞って販売して行こうという訳じゃな?」


 「流石は族長、話が早い。私としましては、まだこの世界で流通している砂糖と胡椒から販売を始めたく思います。作物だから、と言い訳も効きますので。」


 「それだけでも、充分な利益じゃ。 

 柊殿と精霊に感謝を。

 して、今回はどの位の量を持ち込まれたのじゃ?」


 「宴で多少消費しましたが、砂糖と胡椒それぞれ10kgずつですな。」



 「何と!そんなに!それだけで一生暮らして行けそうなものよな。

 里を訪れる人族の商人の驚く様が目に浮かぶようじゃわい」


 「それでは、あくまで品物はアストレア氏族が手に入れた物を販売すると、いう形でお願いいたします。」


 「ウム、分かっておるが、継続的な付き合いを頼むぞ柊殿?」


 「それは間違いなく」


 「人族の商人が訪れるのは、何事も無ければ、2日後の予定じゃ。楽しみに待っとしょうぞ」




 

 




 

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次回更新は5月8日午前7時を予定しています。

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