第10話 ゴブリンの巣穴討伐
契約書の作成完了につき、ガ一ディアンは調査活動を開始した。本来なら先に調査を終えて契約する予定であったが、巣穴があると分かったことから、ことは急を要すると判断したからだった。
ゴブリンからすれば、見知らぬ世界へやって来て、食糧の確保、寝床の確保が出来て仲間も集まった。
ならば、次は繁殖だというのが3人の一致した意見だった。
「ファンタジ一の定番だとゴブリン等のモンスタ一はメスが少ないか居ないからほかの人種を襲うのがお決まりだからな。」
柊は言った。
「この世界で、人種と言ったら人間しか居ないわけで、そうなると獄ケ谷の街の人が危険というわけね?」
松浦も冷静に状況判断をする。
「人が襲われると分かっていて、のんびり何かしてられません!」
井上は熱く言った。
柊は会社の初依頼が、高い士気で始まったことを内心ホッとしていた。
人は選んだ積もりであったが、いざという時に、怖じ気づいたり、逃げ出されたら、士気どころか会社の信用度にも関わってくる。
そして、巣穴を見つけた猟師が入院している病院へ行き、巣穴の場所の詳細を聞き込みしだしたのだが、非常に協力的で周囲の山の所有者にガ一ディアンの立ち入りの許可をわざわざ電話機のある所まで行き、(病院によってはプライバシーか電波対策の為か病棟に特別室を設けている所もある)直談判して出させ、地図には歩きやすい道順や巣穴が見張りやすそうな場所まで記入してくれた。
最後には、肩を負傷しているにも関わらず土下座をしようとし、泣きながら猟犬の仇を取って欲しいと頼まれたのであった。
山に入って2時間。柊と井上は手製のギリス一ツを着てゴブリンの巣穴を監視していた。
巣の入り口は縦2m、横1mほどの大きさで、こん棒を持ったゴブリン2匹が立っていた。巣穴からは時折数匹のゴブリンが出たり入ったりを繰り返していたが、装備品の違いから区別を付けて数を数えていた。
確認出来ただけで12匹がいたがまだ巣穴の奥にも居るかもしれないが、出来て1週間の巣穴なら20匹を超えることは無いと踏んだ。巣穴の近くに積まれている土砂の量もその予測を裏付けていた。
因みに松浦は、街でゴブリンが現れ無いか町役場の松本に借りた車で警戒していた。
確認出来たゴブリンの武装はこん棒が6匹、弓矢が3匹、ナイフが2匹に剣が1匹だった。
この事から全てのゴブリンが巣穴に集まり、逃げられないようにし、巣穴の出口で待ち伏せすれば、簡単に殲滅できると結論付けた。他の出口が無いことは確認済みである。
午前1時、確認されたゴブリンが全て巣穴に戻り寝静まったであろう時間帯。
柊、井上は有刺鉄線を使い、巣穴のある付近を囲い込んでいた。
これもホ一ムセンタ一で買い揃えた物の1つで害獣避けであろうか家庭菜園系のコ一ナ一の付近であった。
松浦は通販で買い求めた暗視装置で巣穴の変化を見張っていた。
有刺鉄線張りから1時間やっと包囲網が完成し、中に残るはフルプレートア一マ一を纏った柊のみである。
井上と松浦は離れた場所から監視しつつ、井上はボウガンでいざというときの援護の構えだ。
包囲網は完成し、武装もした。こそこそする必要は無い!柊は雄叫びをあげながら約50m離れた巣穴に突進した。
「オオオオオオオオッ!!」
見張りのゴブリンは1匹に減っていた、それも確認済み。
状況を判断させる間も無く両手でブロードソ一ドを持ち、脇に構えるようにして一気に突っ込んだ。ゴブリンは山肌に突き刺しになった。しかし、
「ギャギャギャア!!」
最後の力を振り絞ってか警戒の叫び声をあげる。
「それで良い。」
ぐったりと動かなくなったゴブリンの前で柊は独白する。
次いで、腰に付けていた袋から発煙筒の束を取りだし着火すると、巣穴の奥へ力の限りで投げ込む。
暫くもしないウチに咳き込みながらゴブリン達が出口へと殺到してくる中には武装すらしてないゴブリンも多いが、間合いに入る度に突き刺し、邪魔にならないように巣穴の外へと放り出す。
淡々とその作業を繰り返し、10分も経過しただろうか?飛び出してくるゴブリンは居なくなったのである。
巣穴の前の空地に目をやると其処には10匹を超えるゴブリンが倒れており、息のあるモノもいることから止めを刺していく。
更に30分後、煙がおさまったであろう巣穴に入り、ライトで照らすもゴブリンは居なかった。
巣穴から出ると、ライトをぐるぐると回し、井上と松浦に全て終わったことを伝える。
直ぐに2人は現れてゴブリンの死骸を用意していた袋に詰めていくと同時に剥ぎ取りも行う。
ナイフや剣、装飾品、貴金属で造られたであろう硬貨等の異世界を知るための資料として買い取りが行われるのだ。
最終的にゴブリン15匹を討伐、袋2つ分の戦利品を得た。時刻は朝の7時。町役場の松本に一報を入れ、3人は休むことにした。
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