捨て子と砂漠と…
タバコを吸い終わり歩いていると、
かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえた。
周りを見渡すと
路地裏にダンボールがあることに気がついた。
近づいてみると泣き声が大きくなっていた。
「おいおい、まさかとは思うが…」
恐る恐るダンボールの中を覗くと
そこには一面に毛布が広がっていた。
毛布をどけると予想通りそこには
小さくて元気な赤ん坊がいた。
「物騒な世の中になったな。」
と思いつつも赤ん坊を抱えると、
赤ん坊の背中には手紙がついていた。
えーと、
「この子を見つけてくださった方、
迷惑だと承知していますが、どうかこの子を育てて
ください、お願いします。まだ名前はありません。」
か。
仕方ない、ここで見つけたのもなにかの縁だ。
しかし…この赤ん坊には申し訳ないが
あいにく俺は貧乏どころか死に損ないだ、
赤ん坊を育てる余裕なんてない。
まぁ養護施設?とかにでも預けようか。
今は真夜中だから明日の朝にでも行ってみようか。
〔家〕
「さて、今日は寝ようか。」
まさか二十歳の誕生日に見知らぬ赤ん坊と
一緒に寝ることになるとは思わなかった。
数時間後…
「なんだ?やけに暑いな…下もザラザラしていて」
まるで灼熱の炎の中にいるようだと
朦朧としている意識の中で思った。
そのまま寝ようとしても
暑すぎて眠ることができない。
「あー!暑い!」
暑すぎて目が覚めるとそこは砂漠の中だった。
「は?!え?なにここ?!……
あ!そういえば赤ん坊は?」
赤ん坊の存在を思い出した俺は周りを見渡した。
すると、近くにぐっすりと眠っている赤ん坊がいた。
「こんな砂漠の中でよく眠れるぜ。とは言っても、
この状況どうすれば良いんだ?まぁこんなところで
グズグズしていても仕方ない。とりあえずブラブラしてみるか。」
そう思い立った俺は隣で眠っている赤ん坊を抱えると
砂漠の中を歩き始めた。
数時間後…
「あぁ…暑い。喉がカラカラだ。誰か、、、」
もう俺の体力は限界に近づいていた。
しかし、まだ赤ん坊は眠っている。
本当に眠っているのか、それとも…
なんて心配をしながら少しずつ歩いていると、
遠くの方に棒みたいなのが
立っていることに気がついた。
もしかしたら人がいるかもしれないという期待をもち
最後の力を振り絞り棒の見える方へ走っていった。
徐々に近づいて見える棒が何なのか、
ようやく気付いた。
なんと、
そこには立派で巨大な一本の木がそびえ立っていた。
気付いたことはそれだけではなかった。
この状況で一番欲しかったもの。
そう、その木の周りにはオアシスがあった。
これでようやく水が飲めるわけだが
ここでもう一つ俺にとっては嬉しい出来事があった。
その嬉しいこととは
木の周りにはオアシスだけではなく、ぼんやりとした
人影が見えた。
「こんな砂漠の中だ。人とのつながりは大事だからな。迷惑ごとにはならないように慎重に話をしよう。」そう、この考え自体が甘かった。
なんと、ここは砂漠の中で遭難する人を襲い、
身ぐるみや、金を強奪し、人を簡単にあやめるようなやつらのたまり場…
そう不幸なことにここは『盗賊』のたまり場だった。