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平々凡々な俺は修羅場に憧れる  作者: 生方 形
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やはりこれは俺の憧れる修羅場じゃない

 あれは引っ越して来て数日経った晩の話だ。

 俺が結実から教えてもらったスーパーで、食材とお楽しみのシュークリームを入れた袋をぶら下げて帰ってくると、何やら俺の隣の部屋から怒鳴り声が聞こえる。てかこの距離で聞こえんのかよ…どんだけ騒がしくやってんだ…。

 …少しだけ気になったので俺はわざとドアの前をゆっくり通り少し聞き耳を立てる。…いやそこまでガッツリ聞き耳立てたわけじゃないよ?あくまで聞こえてきただけだからね?


 そんな俺に天罰が下ったのかは知らんが、勢いよくドアが開いて男が転がってきた。開いたドアに顔面をぶつけた俺は、その転がってきた男に巻き込まれて転がる。そしてシュークリームは袋の中で無残に潰れる。…そこまで悪いことしたっけ?

 そのまま扉の前の壁に激突し、俺は男の下敷きになった。ちくしょーついてねーよバカヤロー、と思ったのもつかの間で、ズンッという擬音が聞こえそうなくらいの衝撃が来た。


 な、なんなんだ…?


 どうにかして上の男の隙間から何が起きているのか確認した。最初に見たのはかなりの美人、髪はそこまで長くないのだろうか、それとも癖っ毛なのか、後ろに束ねはしているが纏まりは無くパイナップルの葉みたいだ。

 そして次の感想がめちゃめちゃ怖いだ。美人が怒ると怖いってのはマジだな、なんも言えないよ?こんなの。


「てめえらは家を出た娘の子を…、またお人形様にして、お飾りにして利用するつもりか!!!!」


 うわ、上の男性の顔面勢いよく蹴り飛ばしたよ、こっわ。よく見るとこいつは筋肉質な肉体の上、立派なスーツ着てるからそういう家系の雇われに見える、もうスーツぼろっぼろに汚れて気の毒だけど…。


「うちの旦那がいない時を狙ってきやがって!!この娘に何かしたらどうなるか分かってんだろうな!!!?」


 …ほんとにこの人、そういう家系の娘さんなんだろうか?言葉遣いが信じられないんだけど。

 蹴りが効いたのか、スーツの男は這う這うの体で逃げてく。おーはえーなぁ。


「あん?なんだお前?」


 まあそうなりますよねー…。あっちょっ待って脚あげないで!踏みつぶそうとしないで!


「おかあさん?もう出て大丈夫?」

 この時出てきた少女が咲で、これが俺と咲のファーストコンタクトだった。

読んでくれてありがとうございます。

つたない文章ですがよろしくお願いします。

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