たまには甘えたっていいじゃない。人間だもの。
お久しぶりです。ちまちま書いて聞けたらと思うので気が向いたら読んでいただけたらと思います。
――――前略父上様、あなたのエロ本のおかげで辺鄙な土地に下宿が決まった挙句、
大学生活が始まる前に仕送りが打ち切りとなることが確定いたしました。
しいてはこの言葉をお呪い事とさせていただきます。-----
「いや君…?文字にすると確かに字面は似てるけど意味合いも発音も微塵も似てないからね?」
いやナチュラルに人の心のモノローグ読まないでくださいよ、杏莉さん…
うわ、自分の中で考えてた小ネタ読まれたらめちゃ恥ずかしいな…。てかなんで俺の部屋に勝手に入ってきてるんですか?
「今も声に出てたからね?」
「うっそだろお!!!??」
我ながらなんとも間抜けな声が出るもんだと感心する。
まさか入学式前に仕送りが打ち切りになるなんて悩み、この世の大学生が経験したことがあるのか。
例えば家計の事情やら重めの事情なら俺だって納得できる。
ただ俺に関しては比較的安めの学費の大学に入り、実家の方が大学に近いというのにほぼ島流し状態だ。
いや大学に通わせてくれる、学費を払っている両親には感謝しかないが。
だったら実家通いさせてくれ。
何故より離れた場所に親父の小遣いを用いてまで一人暮らしをさせるのか。
この思いは甘えなどではないと思う。
「君。なんかメール見て落ち込んでるけど、もしかして何かあった?」
杏莉さん…。今は唯々貴女に甘えていたいです。
思わず泣きそうな顔になり杏莉さんを見つめる。勝手に部屋に入っていることに関しては百歩譲って。
「私に何が出来るかわからないけどさ。こうしてもらったし出来ることなら何でもやってあげたいと思ってるんだよ?」
嗚呼…。これが実は俺が求めていたもの…。母性か…。
ストッ……。
聞きなれない音が、俺の部屋の入り口から聞こえた。
思わず杏莉さんに抱き着いていて、ぬくもりを、母性を感じていたはずなのに、春先だからか寒気がする。
つうっ…と首筋をなぞる冷や汗。
”おにいさん?”
どっと冷や汗が量を増した。
この暖かさから離れなければならない。そう直感させるほどの危機。
しかし恐怖がそうさせてくれない。
『あれは刃物だ。人を十分に殺しうる。肉を割くためのものだ。』
脳内になぜかこんな声が響いた。お終いかもしれない。
「おにいさん。何をしているんですか?」
目に見えなくとも圧倒的な質量。
――――圧し潰される――――
何か分からないが、何かがそう囁いた。
「んっ…」
その一言。たった一言だった。杏莉さんをおそらく俺は恐怖で強く抱きしめてしまったのだ。
それが引き金だったことは理性よりも本能が察している。
「説明させてくれないか。」
覚悟は決めた。誰も傷つかせはしない。俺も傷つきはしない。
目指すは平穏。
そもそも俺は修羅場に憧れはしたが、こんなものは望んじゃいない。
暴力沙汰が多すぎる。もう少しキャッキャうふふな…。
望むものでもなかったのか。
ある種の悟りなのだろう。
ただ俺は守りたいもののために。実は気に入っているこいつらとの関係、生活のために。
命を張ろう。