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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
獣の王の過去のお話し
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都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その1

過去話。一話で終わらせようと思ったけど無理そうなので

  第91話  都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その1

 二人の少女がそこに居た。

 一人は豪華な服を身に纏っている少女。

 もう一人はぼろぼろの服を身に纏っている少女。

 貴族のご息女と貧しい奴隷の子。

 だが、二人の顔付きは似通っていた。


 毎日手入れを欠かさない髪と肌。

 余るほどの食べ物を食べてきた健康的な体つき。

 水仕事は下働きがしていたので白魚のような艶々な指先。


 川の水で時折洗う事しかしない汚れた髪と肌。

 僅かな食べ物しか口に出来ない故のがりがりな体つき。

 水仕事など過酷な重労働を常にしているのでカサカサな指先。


 生活環境が浮き彫りになった外見の差。


 だが、それを差し引いても両者は似過ぎていて、それが貴族のご息女の怒りを買った。

 

 自分に似ているだけでも腹立たしいのに貧しい身なりで不格好で気味が悪い偽物なんて不気味だ。

 ご息女は家人に命じて、その少女を痛めつけた。


 悲鳴を上げる。

 その声も似ているのに腹が立ちますます痛めつけさせる。

 ご息女はいい事を思いつく。


 ご息女は家令に命じて、その奴隷を買った。

 専用の部屋に閉じ込め、いたぶるだけいたぶる。

 

 勉強が上手くいかない時。

 欲しい物が見つからない時。

 天気が悪い時。

 などなど。

 都合の悪い時はその奴隷を痛めつけて憂さを晴らした。


 また、家人達も日頃の鬱憤を主人によく似た奴隷を使って恨みを晴らし、その様をご息女は楽しんで見ていた。


 転機が訪れたのはある時。

 当時はまだ獣の王と呼ばれていた存在に生贄――と言う名の遊び相手――を送る時期が近付いて、選ばれたのは奴隷の少女だった。


 正式には、候補はご息女と奴隷の子二人だったのだが、いくら結界を張ってくれている偉大な王とはいえ、ご息女は今の生活を捨てたくなかったので固辞したのだ。


 奴隷の少女は怯えた。

 これ以上苦しむのか。

 もう変化に耐えられない。


 だが、

「痩せてるな。お前の食べたい物はあるか?」

 狼の耳を持つその存在は玉座に座ったまま尋ねる。

「食べたい…物…?」

 そんなの知らない食い繋いでいくのに必死だったから。

「そうか…」

 手招き。

「……?」

 近付いていいのかと不安になると、

「我が君は玉座から降りれないのだ」

 と近くに居た魔人に告げられ、近付く。

 ひょい

 抱き上げられる。

「軽いな」

 玉座に座ったまま抱き上げられて、従者らしき者らが食べ物を持ってくる。

「急にたくさん食べたら身体が驚くからな。少しずつ。そうだな…果物からだな」

 口元に持ってこられた苺。

 甘く美味しい。

「あの…」

「うん?」

 何で、今までだったら目の前で床に落とされて踏み付けられて、食べるのを強要された。

 それなのに…。

「お前は、私の生贄だからな」

 元がいいのだから、見目良くしてやろう。


「見目……」

 自分とよく似た少女。

 あの子と同じ……。


「勘違いしてるようだが、私が言った元とはその魂だ。その魂の輝きと同じ見目にしてやる」

 楽しみだな。

 子供のように、獣の王は笑った。




獣の王は育てるのが好き。


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