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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
獣の王と竜の王
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龍の結婚式

鱗の重要性

  幕間  龍の結婚式

 獣の王は、自分の群れを離れるのは好まない性質だが、それが友の結婚。ましてや自分の群れのモノとの結婚式なら行くべきだと判断して来たのだ。

「久しぶりだな。獣の王」

「ラーセルでいいぞ。わざわざそんな名で呼ばなくても」

「そうか。そうか」

 獣の王にとって同格であるが、在位は長い龍帝は気さくに笑い。

「すまんな。お主の群れの一体を貰ってしまって」

「彼女が選んだならいい。意思を無視していたら群れの長として戦いを挑んだがな」

 そんな事はしないだろうと言い掛けて、

「龍帝?」

 何か急に無言になったな。

「龍帝?」

「いやはや……」

 何か言い澱んでないか。

「どうした……」

「――後ろめたいんだよね。龍帝は」

 くすくす

 笑い声と共に子供が出現する。

「冥王…」

「僕はただの番人だよ」

 生きている限り平等にあるのは死だと明言する彼は、王ではなく死者の番人だとよく言っていた。

 

 曰く、

「王であれ、罪人であれ、宗教家であれ、死は平等。人であれ、動物であれ、平等不平等の中でしか生きられない。例え、命は等しく平等であると言っても優越感。劣等感は抱いている。だけど、死だけは誰でももてる権利であり義務。問題はどう生きるか。どうその命を活かすか。だと思うよ」


 それ故、生きるモノを等しく見守ると彼は明言していた。


「久しぶり獣の王」

「久しぶり。冥お…冥府の番人。そなたも呼ばれたのか?」

「普通呼ばないよね。幸せの門出に冥府の者なんて」

「何を言う? 死の番人だからこそ、その生き方をより豊かにすると誓えるのだろう」

 龍帝は断言すると、腐乱死体のような外見なのも気にせずに、

「会いに来てくれて嬉しいぞ。友よ」

 と親愛のハグをする。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!! せっかくの婚礼衣装が~~!!」

 近くに控えていた。龍帝の側近の悲鳴が響き渡る。

「………僕の血肉がべったりついて、(側近が)可哀想に」

「何を言う。戦場では血肉の一つや二つ」

「場合を考えろ!!」

 獣の王も文句を言ってしまう。

「結婚に待ったを言いたくなった」

「その方がいいかもね。だって」

 くすっ

「逆鱗渡して了承させたしね」

「――宣戦布告をする」

「わあああ!! ばらすな番人!! 殺気を向けるな獣の王!!」

 愉快犯の冥王。慌てる龍帝。戦闘体制を取る獣の王。

 そんな三人に。

「――何王三人で遊んでいるの?」

 呆れたように現れたのは精霊の王――今回は主役を食わない程度の見目麗しい美人の姿を取っている。

「精霊王」

「千華……」

「聞こえたけど、逆鱗渡したの龍帝? すごい覚悟ね」

「あやつなら渡していいと判断したのだ」

 誇らしげに告げる龍帝。

「そこまで愛してるんだ。龍の弱点を曝すほど」

「本人の承諾なしだけどね」

 くすくす

 番人は爆弾をさっきから投げ入れている。

「――龍帝」

「殺気を向けるな。獣の王」

「向けたくなる事をしているのはそちらだろう!! 龍の力を宿している鱗。龍にとって、真名と同じ価値を持っている代物なのに」

「渡した時にあやつにも怒られた。龍の生命剥奪権をほいほい渡すなとな」

 だが、

「龍にとって、それは信頼の証。敬愛する友。生涯を共にしたい伴侶。それを渡す事は相手の捧げる想いの形だ」

「…………」

 承諾して渡してないんだろうな。こいつの事だから。

「だから、急に結婚するか。……その誓い守れよ」

「当然だ。でなきゃ、逆鱗など渡すものか」

 ただの鱗ならホイホイあげても傷まない。だけど、

「逆鱗は、生涯を掛けて渡すものだからな」


 それから幾年が過ぎ、その龍帝の末の子が魔法補助と言う目的の為だけに渡す事になるとは誰一人想像してなかった。 







ちなみに真緒様は昔過ぎて度忘れしてます

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