魔族達の真実
もっふもふ
第9話 魔族達の真実
「”私が分かるなら。教えなさい。私が死んだ後に何があったのか?”」
ざわざわと誰が話すか迷うように互いの顔を見渡している。
(見事に動物だな~)
モフモフしてる。触りたい。
…そう言えば学校で係をやる時生き物係をよくしたな。(しみじみ)昔から―ー前世から――動物好きだったんだな。
動物と何かが異なる魔獣。動物に人間の部位が混ざっている獣人。人間に近いが動物の部位のある魔人も居るのだが、そういうのは強い方なので流石にここに居ない。
ここに居るのは、魔獣と獣人だけみたいだ。
「”…我が君? ですよね?”」
おずおずと訪ねてくるのは胴体のみ人間の姿をしている黒い山羊の獣人。
「”分かるだろう?”」
くすりと笑い、
「”私がそうだと”」
魔族は魔力で分かる。でも、そんなに気にするなら。
「”ラーセルシェード”」
息をのむ気配。
「”私のかつての名はラーセルシェード。それが証となるか?”」
当然なる。
この世界では、同格。もしくは格上じゃないと名を呼べない。
ある、昔話をしよう。
昔とある魔王が自分の治めている地域全員の前に見える様にして、名前を名乗った。
人間達はその名を口にしたが最後。
魔力を持たない者はその場で絶命し、魔力を持つ者は発狂してじわじわと死んでいった。
口に出さなくても文字として残そうとした者も同様に亡くなり、魔王の名は口にしてはいけないものとなった。
ただし例外がある。まず、最初に言った同格。格上なら当然呼べる。ちなみに勇者は魔王と同格であるがその事実は知らされていない。
そしてもう一つは、魔王公認の場合。
例えば魔王が自分の使いを出す時に分かりやすくするために、
「私の名を口にしていい」
と許可すると名前を出しても大丈夫。名を口に出せる事で偽物は出なくなるので、一番分かりやすい嘘発見器だったりする。
昔話の魔王は名乗っただけで、呼んでいいと許可してないのだ。
実は、この同格というのが今回の問題にも関わってくるのだが。
「”聞かせてくれるか?”」
訪ねると誰が告げるか譲り合い――そんなに私が怖いか?――最初に口を開いた獣人が、
「”申し訳ありません。我が君。貴方様のご意志であった。他の魔王の侵攻を許してしまって!!”」
そう、おそらく、勇者を召喚しようとした者達は魔王という存在は一体だけだと勘違いしている。それプラス。
「”魔族だけじゃなく。霧の向こうの人も侵略しに来てるな”」
まさか、霧の弊害がここに来るとは思わなかった。
もふもふのターンはまだ続く。