女神が囁く喜劇の調べ
いいのかよ。女神がホイホイ出てきて
第77話 女神が囁く喜劇の調べ
《逃げらてしまいました》
女神が困ったように眉を顰める。
「ユスティ様。なぜここに」
神託にしても協会ではないと出来ないと思っていたのに、
《非常事態が起きたからです》
非常事態。あの、
「魔物の女神と言うのが関係あるのですか…」
《……察しが良くて助かります》
女神は悲し気に目を伏せて、
《……勇者。わたくしは貴方に残念なお知らせをしないといけなくなりました》
未然に防ぎたかったのですが、辛そうにはらはらと涙を流す。
男ならその涙を拭いたい。そう思わせる代物。
《あなたが巻き込んだと思っている少女。彼の者は……》
辛そうな表情を女神としての役目で抑え込んだ。そう思わせる仕草をして、
《彼の者は、魔物の神が用意した魔物の勇者です》
迷いつつもそう断言して、
《あなたの倒すべき敵です》
と神のお告げと言う形で戦う事を命じる。
*
くすくすくす
「駒を使用する許可が欲しいと言って来た時は何するのかと思っていたけど、面白い趣向をしてくれるものね」
ゲームマスターをしている女性は鈴を鳴らすように笑う。
「何故、魔王だと言わないんだ?」
まだゲームの参加者である青年が不思議そうに首を傾げる。
「簡単よ」
くすくす
「魔物と言って自我も知識もない。そう伝えてきたのにまさか彼の者が魔族だと言ってごらんなさい。彼の者自身で自我も知識もあると明言してしまうわ」
魔王は魔族――いや、この場合魔物――から発生するが、勇者は異世界から召喚された立場だ。
「いわば部外者を無理やり現場に送り込んだだけよ。代理戦争なら理解できるが、代理じゃなければ自分が勇者として祭られていたという事に正義を見出せないわよ」
茶番劇としては最高だわ。
「ユスティは人間の勇者を使い。ラシェルは魔王に協力を仰ぐ。どちらもゲームとしてはルール違反だけど面白ければいいし」
それにしても、
「こんな茶番劇が起こるとは、本来なら勇者に倒された時点で私達と同じモノに進化しているはずの魔王が異世界で勇者の近くに居るとはね」
一体。どういうカラクリなのかしら。
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「人間を高位の者にする実験は成功したから次は魔王を高位の者にする実験をしていたのにそれは失敗だったからな」
ゲームに負けた見物客が忌々しそうに口を挟む。
「まあ、いいじゃない。勇者が新しいも王になるか。かつての魔王が再び魔王になるか。……それとも」
賭けの内容はまだたくさんある。どちらに転んでも娯楽にしかならなかった。
高位の者にする実験の内容がユスティと真緒様に影響してます。(ラシェルは別)




