クーは見ている
龍帝の子供さんを合流させたかったけどその前に王女がどうなったかをお知らせ
幕間 クーは見ている
お城では勇者を追いかけていたはずの王女が戻ってからずっと騒ぎが起きている。
この地を治めてこそいないが、他の地で崇められている精霊の王がかつて生贄だった王女を自分の巫女にしたいと申し出があったと勇者からの連絡があったのだ。
城は荒れた。
生贄になって勇者と結ばれるなら勇者に選ばれたという事で国と王女の知名度が上がっただろう。だが、魔王の生贄になって戻ってきたという事は、事実がどうであれ、魔王のよって汚されたと汚名が付けられる。
そのような王女が国交で役に立つか。答えは否だ。
かつては美姫と言われていてももはやその汚名だけで後ろ指を指されるだろう。修道院に入るしか道が無い。そう思われていた。
だが、
「私はこの娘の魂が気に入りました」
精霊の王の申し入れ、そして戻ってきた王女から精霊の加護が宿っている。
王は喜んだ。
王としての公人として国の役に立つという思いと、私人として、娘が幸せになれると言う思い。
精霊の加護を持つ者はこの地に居ない。求婚も山の様に来るだろう。
だが、それに待ったを掛ける者もいる。
神殿だ。
女神ユスティを崇めるそこはこの地で最大権力を持ち、他の宗教は邪教だと取り潰そうとする、
信者の数は多く、その気になれば国をも転覆させる派閥となっているそれは王にとって頭痛の原因だった。
その教会が王に正式に、
「精霊などというモノに王女が加護を受けましたが、精霊もまた魔のモノ。王女は魔王に魅入られたまま更なる呪いを受けたのです!!」
普通の人が言えば、国家に対する反逆罪となるがそこは教会。自分達こそ正義だと思っての発言だ。
クーはずっと見ている。
そして、面白がっている。
クーは教会と言うのは嫌いだ。
大切な主を悪と決めつけているから。
クーは王族も嫌いだ。
大切な主を勇者のおまけとして扱って冷遇したから。
その二つが互いに潰し合うのをいい気味だと思っている。
このまま潰しあって消えればいいのに。
などと思っていると、お城から見える教会の屋根の上に稲光が降りるのを感じる。
自然発生じゃない。
「――なるほどね」
稲光と共に現れたのは腐乱死体のような子供――魔族だ。
「こんな偽りの神が獣の王を害したのか」
子供は教会のシンボルを蹴り、地面に落とす。
「不快だね。そう思わないか? ****」
子供の声に、同じように稲光が降りてくる。
「戦って決めた事だ。獣の王を責めるな」
声と同時に老兵と思われる存在が姿を現した。
「責めてないよ。――獣の王の優しさを甘えて、その優しさに砂を掛けた馬鹿に対して遊びたいだけだ」
「――それに対しては同意する。だが、**よ。《千華葉珠》が加護を与えた者がいるのだぞ。それをどうする?」
彼らの眼下には二人を見付けて騒ぎ出す人々。
中には攻撃をしてくるものも居るが全て届く前に消されている。
ちらりと教会関係者に助けを求める者もいるが協会関係者も自分達のメンツが潰されたが何も出来ない。
誰もが諦めた時だった。
「――何用です!!」
怯えながらも王女として責務を果たそうと姿を現す。
彼女は自分が無力なのを知っていた。勇者と少し一緒に居させてもらった時に嫌という事を思い知らされた。
だからこそ、国を支える者として逃げてはいけないと知ったのだ。
「――ふうん」
「なるほど」
二人の侵入者は面白そうに、
「――精霊王の加護を持つ者」
「――そなたの魂の価値に免じてこの場を曳こう」
それだけで消える二人。
そして、その行動が精霊の加護を得た王女の価値をあげる。
「”獣の王の僕”」
「”我らからの選別だ。偽りの神に対する一石に利用すればいい”」
クーには意味は不明だが、この騒ぎは彼の王女の価値を上げ、教会に対する不信感を与えるための代物だった。
クー「出番があった。最初に出た魔族なのにもう出番ないと思ってた」
真緒「……」
リム「でも、近くで行動してない」
アカネ「一番近いのはあたしだもの」
クー、リム「(´;ω;`)」




