龍帝の子供達
複数形だけど一人しか今は出てない
第72話 龍帝の子供達
木剣を壊してから、
「悪い、悪い。力を抜くのが甘かったわ」
と言って剣をぶつけているが、
(こいつ。やっぱり強い)
勇者と言う名前で胡坐をかいていたわけではないが、それにしても……。
剣を交えるとそれにどんどん引きずり込まれていく。
悩んでいた事を忘れるほどに。
そんな単純な事をしていたが、ひとまず身体を動かした事で溜まってた鬱憤も晴らす事が出来る。
「ありがとな」
はあはあ
息を切らして、休憩をする。
「とりあえず頭がすっきりしたよ」
礼を言うと、
「――なら、良かった」
すらっ
木剣では無く真剣が目の前に突き付けられる。
「えっ…!?」
「迷っている奴に戦いを吹っ掛けるのは違うと思うし、それなら身体を動かして鬱憤を晴らさせてやろうと思ったんだよな」
もういいよな。
そう告げてくる声は真剣で、だけど、どこか楽し気、
「あの…」
とっさに勝てない。と感じてしまった。
何者か分からないが、実力はそっちの方が上だ。
「お前…じゃなくて、貴方。何者ですか?」
今更だが訪ねてしまうのは、目の前の人が正体不明でも好印象を抱いたから。
………………あの魔獣使いのように知らないでいる事に躊躇ったのだ。
「へぇ!? 俺が分からない?」
てっきり予想付いてると思ったのにな。と首を傾げ――それでも剣はぶれない――。
「獣の王を倒したから分かりそうだと思ったのに」
「………獣の王?」
何だそれは?
「お前」
急に声が冷たく敵意あるモノに豹変した。
「………自分が倒した存在を知らずに戦ったわけ?」
怒りを目に宿し、睨んでくる。
「戦った…?」
いつ、どれと?
「獣の王。《慈悲深き獣の王》……この地の魔王だ」
呆れたような声。
「親父様の言う通りだな。勇者と言う名はあるが偽物か」
偽物?
「人を偽物呼ばわりするのか?」
何を根拠に。
正直不快だったが、まだ冷静に言葉を返そうと努める。
…………何か勘違いしているかもしれない。
「戦う相手を知らずに敬意を持たずに戦うのが勇者の所業か? 魔王であれ、勇者であれ、戦うなら相手の事を理解して戦うものだ。………親父様の格言だ」
………自分ちの考えで攻撃しようとして、偽物呼ばわりか……。
「いい加減にしろよ!!」
何様のつもりだ。
「龍帝の息子だ」
青年が言葉を返すと、その顔。剣を持つ手が一瞬で鱗に包まれた。
ちなみに4兄弟。




