会いに来た人
取り敢えず勇者のターン
第69話 会いに来た人
闇雲に剣を振っている。
流石に勇者の剣でそれをしたらいけないので対人間用として渡された予備の剣を振り続けていると、
「――剣が可哀想だな」
一人の男性がじっとこちらを見て告げてくる。
旅人の様で、ぼろぼろのマントを羽織って、荷物を肩から下げている。一応剣は持っているが冒険者と言うには軽装過ぎる。
…………盗賊に襲われたら抵抗できないんじゃと思ってしまう。
それにしても……。
ちらっ
ついつい見てしまい。
何時の間に現れたのだろうか。気付かなかった。
それだけ、剣の練習に見せかけて闇雲に暴れていたという事か……。
「基本は知っているんだろう」
確認されて、
「……はい」
でも、守ってなかったと冷静に考えてしまうのは頭が冷えてきたからだろう。
冷静になってくると自分の行動が恥ずかしくなり、暴れたくなるがそれをするとますます恥ずかしい行為を増やしてしまうという悪循環が起きてしまうと必死に耐える。
「むしゃくしゃして暴れるのなら相手が必要だろう。相手してやろーか?」
お前に会いに来たんだけど、用件は後でもいいし、
「会いに来た…?」
「まあ、そう。でもまあ、面倒だし、後に回してもいいだろう。それくらいなら親父様も許してくれそうだし」
自分に会いに来る人………。国の関係者だろうか。それにしては護衛が居ないみたいだし。
「その人は?」
「まあ、後々。それよりも剣の稽古付き合うぜ!!」
どこからか木剣を取り出して――どこからか分からなかった。ドラ●もんの四次元ポケットみたいな魔法道具があったのかと目を輝かせてしまう程自然だったのだ――二つのうち一つを投げて渡してくれる。
「どうもな一本勝負したいと思ってもなよなよしてるからと言われて相手してもらえなくてさ」
「ああ…」
よく分かる。強そうに見えないのだ。
「じゃあ、木剣が壊れない程度の本気で」
にやっ
そんな簡単に壊れるわけないだろうと思ってしまうが、木剣をてにしてみると壊してしまうかもと相手の言葉を肯定してしまいそうになる。
常に使っている剣を考えると軽いので――いつもの剣は重すぎて負担にはならない程度だけど――持っていて力加減を間違えると大変な事になりそうだ――これでも勇者のチートの一つに身体能力向上もあるので――。
怪我させないようにしないとと決意して剣を構える。
「じゃあ、行くか」
男が告げたかと思ったら素早い動きで剣が振るわれる。
「くっ!?」
重いし、早い。受け止めるのが精一杯だ。
何だこの人!!
もしかして、勇者である自分より強いんじゃ……。
「あっ、悪い!!」
男は参った参ったと苦笑いして、
「言ってるこっちが木剣壊しちまった」
とどうやれば、繋ぎ目が四散して、木目から割れるなんて芸当が出来るんですかと問い詰めたくなった。
「勇者より強いって、そんなのが現れたら倒された私がみじめなんだけど」by真緒様
「………」by勇者
「我が君を倒したのなら最強でなくては」by魔族
「無茶言うな」by勇者




