勇者の迷走 見守るしか出来ない者
勇者はタイトルのわりに空気です
第66話 勇者の迷走 見守るしか出来ない者
魔物との共存(笑)の街から出て、近くの村で宿を取っていた。
「あれっ?」
珍しいな。勇者が一人でいる。
いつもなら、その腕に魔法少女なり、くっ付きはしないが隣に巫女なり、背中に女騎士が居るはずなのに……。
………忙しくて一緒に居られないのだろうか。
いつも蚊帳の外にされて、情報が届かない――まあ、風の術とかクーを通して情報は仕入れられるが――が、あの街の復興作業とかの連絡も定期的に入ってきているみたいだし。
そんな憶測を立てていたが、すぐに違う事に気付かされた。
勇者の身に纏う空気がピリピリしているのだ。
「……」
表情が硬い。そして、苛立っている。
勇者の証である剣を闇雲に振っている姿は城を出る前に教えられた剣技などの戦闘に適したスタイルからかけ離れて滅茶苦茶で、剣に詳しくないが変な癖が付いてしまいそうだ。
………女騎士が近くに来て止めないかな。
きょろきょろと辺りを探すが見つからない。
ならば、巫女とか魔法少女とか……。
「そおっとしてあげて」
探していた一人魔法少女が杖を持ってやってくる。
「魔法少女………」
「一人になりたい。そう言われた…今回の件は足手纏いだった私達は口出す権利はない」
口出す権利……。
「でも止めないの?」
「……だって、私達は人を殺した事で自分を責めている勇者に掛ける言葉は無い!!」
殺した事で自分を責めていると理由を告げられて、なるほどと考える。
巫女からすれば、魔獣使いと言う存在自体悪。殺して当然。
女騎士からすると戦いに出ているので人死には見慣れている。
「じゃあ、貴方は……?」
言えるんじゃないの。
「……………………矜持の問題もあるのよ。誰が、弱っているところを人に見せたいと思う? 特に、勇者として信奉している私たち三人に」
「………」
近付いたら傷を隠すだろう。必死になって、
「追い詰めちゃうのよ」
歯がゆいそんな言い方。
「………」
そんなシリアスの中。
言えない。
まさか、殺したと思っている魔獣使いと言われて責められていたシトラを生き返らせていますなんて。
冷や汗が出るのは仕方ないだろう。まさか、それを責めての行動だと思ってなかったし。
生きて今は魔族になりましたなんて言っても信じないだろうし、今度こそシトラが危険だ。
「………湯島君は、今回は二度目じゃ」
それでもそう言ってしまうのは、前世の記憶に魔獣使いを殺したのがあったような…気がしたのだ。
「勇者の名前を軽々しく口にしないの!! 魔族に知られたら名の束縛を受けるでしょう。……悪の魔獣使いは倒したわ」
「………………」
………魔族の親玉はもう名前知ってますとは命が惜しいので言わない。
「でも、今回のは、魔獣使いでも正しい事をしていた。巫女の様に存在全てが悪とは言わないし、魔法というモノを知りたい者としては魔獣使いと言うのは興味がそそられる。悪じゃないなら教鞭を取ってもらいたいほどね」
何か後半問題発言だった気が……。
そうか、魔法少女はオタク気質があったんだな。今気付いた。
「………」
若干現実逃避していたが、魔法少女がじっと見て見ているのに気付く、
「んっ?」
「話がある。来てくれるかな♡」
ありっ、さっきまでのシリアス口調が消えたぞ。それに、話をしたくないと本能が訴えているけど、
「…………………………はい」
断るという選択肢は与えないと脅しに近い空気を纏われて、渋々そう言うしかなかった。
魔「ちょっと、こっち来いよ!!」
真「(びくびく)はっ、はい!!」
校舎裏に呼び出される。
脳裏に流れるドナドナのBGM。
いじめいくない。でも、真緒様はこんなイメージ。




