特訓(?)
フルボッコの回
「そのへっぴき腰はなんだ!!」
女騎士の怒声が届く。
「なあ、あれって初心者が使う物じゃないよな」
「ああ、普通初心者は木剣を使うはずじゃ…」
ひそひそと声がしてるのを耳にして、日が昇る前からもう真上に日が来つつある中、ずっと刃こそ潰してあるがどう見ても金属だよね、という剣を持っていた両腕は体力、気力ともに力尽き、耐えに耐えていた剣を落としてしまう。
「軟弱な」
無茶言うな。いくら、前世は魔王でも今は現代日本の女子高生だ。
「…少し休憩させて…」
下さいと続けられなかった。
「そうか。じゃあ、やり方を変えよう」
普段笑わない美人が笑うと迫力あるな。じゃなくて、
「あたしが攻撃するから好きなように逃げろ」
こちらの返事も待たずに問答無用に剣をぶつけてくる。
「おい、あれって、手を抜いてないよな」
「あっ、ああ……」
ですよね。ぶつけられた箇所が痛い。鈍器で殴られるとこうなるんだなと痛みで声も出せない。
「さっさとかわせ」
無茶言うな。
「異世界人は《ちーと》というのが備わっているだろう」
ありませんから。ってか、勇者はチートがあるんですね。道理で、ただの男子高校生が魔王を倒せるわけだよ。
「こんな足手まといを勇者は何考えているんだ」
そうなのだ。女騎士にフルボッコされているのは、あのバカ勇者のせいなのだ。
「新庄さん。俺は勇者として世界を救わないといけない」
……今まで倒してない魔物を倒したいと呟いてたのを知ってるぞ。
「本当は、勇者でもない君をここに置いていった方が安全なのは分かっている」
ソウデスネ。ってか、何で人の両手を握っているんですかね。
「これは、俺のエゴだ。それは分かっている」
手汗が気持ち悪い。顔近い近い。
お前の顔なんてじっと見たくない!!
いっそ吐いてしまった方がいいんだろうか……。
ってか、突き刺さってくる殺気をどうにかしてください。
お前が手を離せば消えるんだから。
「でも、俺は君を近くで守りたいんだ」
……そういえば、こちらの時間と元の世界の時間って、同じように流れているのかな? 行方不明で心配してるかなぁ~。(現実逃避)
「旅は長く険しいものだけど、俺は君を守るから」
あちらに戻してくれる時に行方不明で探されない程度の時差がいいな。あっ、でも、それだと急に老けた事になりそうだから、この世界にいる間は歳を取らないといいな。(まだ、逃避中)
「安心してください。勇者様」
「この者は、あたし達が」
「一通り役に立つように鍛えるから!!」
……ん? 今何か不穏な言葉が、
「そう。ありがとう。リジ―。ローゼル。パイシャン!! 良かったね新庄さん!!」
ちょっと待て!! 何で決定。しかも私が希望したような言い方!!
ってか、気付いてないのかっ!!
フルボッコするいい口実が出来たという黒い笑いは。
それにこう言いだせば、勇者に良いところを見せれるという魂胆ありありだ。
と言うか。勇者そこまでするほどこの三人はこいつが好きなのか。
(好みとはかすりもしないから分からないけど………。てか、誰がこいつに興味あると言ったんだ? 私はこいつとの仲をしッとされるほど親しくないし、親しくなりたくもない!!)
勘違いの嫉妬乙。
そう言わないとやっていけない事と言うのも当然あって……。
「俺と一緒に行くために頑張ろう」
だから、希望してねぇ。
――それからというもの。
「こんなのも分からないの。お姉ちゃんおバカさんだね♪」
「やはり低俗な方には、神の高尚なお心が理解できませんか」
「お前のその動きは、餌として魔物に食べられている間勇者を逃がすしか使えないな」
と、三人三様にぼこぼこにされていた。
もう帰りたい……。
我々の業界ではご褒美です。には、なりません。そろそろ魔族を出したいな