呼ばれたかった名前
やっと使いたかったサブタイトル
第57話 呼ばれたかった名前
今まで名を封じられていた。そ翁長上書きと言う形で解放されると、今まで自分が見ていた物感じていた物は目隠しされた状態で手探りで使っていたようなものだと感じた。
身体が自由なのはこんなに軽く感じるものだろうか。
そう思うとシヅキと名を与えられた半魔はずっとしたかった事。望んでいた事を実行したくなる。
「”あの人に…”」
会いたい。話をしたい。歌っている時以外の声を聞いてみたい。
そして、
そして、
「”名前を呼んでもらいたい”」
今までの名は自分を拘束していく名で、その名で名乗りたくないし、呼ばれたくなかった。でも、それももう終わり。
名を手に入れた。
この名で呼ばれたい。
名と共に手に入れた力で、あの人を探す。早く教えたいという心のままに動き出す。そして、
「”嘘…”」
入ってしまった情報はあの人が囚われて居るとこ。
「”助けないと……”」
自分が動かなくても本当は絶対なるお方が動いた事は気付いた。知っていた。それでも、
それでも、助けに行かないと。と体が動いていた。
そして、
そして、
「”見付けた!!”」
魔獣使いと言われて人間に囲まれている。
早く助けないと………。
「なるほど、半魔の雌か」
ぐいっ
腕が掴まれる。
そちらを見ると一人の魔人。だが、
「”死にかけ……”」
崩れかけた身体。ムラがある魔力。
奇妙な奇妙な姿。
それは魔族としての核を失った姿だと本能が告げる。
このままだったらただ死が訪れるだけの者。
「”死ぬ…だと…!?”」
死と言う言葉で反応して襲ってくる殺気。格上の者の気迫は弱い者を一瞬で消滅させるが、半魔だったことが幸いして、消滅は防がれる。
「ほんといい身体だ」
狂った者はこんな歪んだ曇った眼をするんだろうか。
崩れかけた身体のまま手が延ばされる。
腐った臭い。
以前より強くなった能力が、その腐臭で使い物にならなくなる。
「”喜べ”」
何かが自分の中に入ってくる。
苦しい。
苦しい。
誰か。
誰か助けて――。
「”ふうん。いい身体だ”」
それは笑う。
「”流石半魔だ。人間として核があるから消されはしない”」
シヅキと名を貰った存在はもういない。
「”待っててくださいね。我が君”」
居るのは、主君の寵愛を手に入れるために狂った魔族のなれの果てだった。
「ねえ、ねえ、この作品の主人公って私なのよ。ないがしろになってない!!」 by真緒様
「俺だって、勇者なのにやってる事は三文芝居の道化師だし」 by勇者




