勇者の攻撃
ギャグ回と言い切る
やる事も無く。部屋のあったベットで休んでいる時だった。
ぴくっ
「……帰ってきた」
手首を引っ張られる感触。
「お帰り」
上半身を上げると空中から巨大なクラゲ――デファルメされているが――が姿を現す。
「見つかった?」
訪ねると頷く。
可愛いなその仕草は。
「で?」
クーは自分の足を見せる。一本だけ部屋の外に向かっている。その先に居ると伝えているのだ。
「ありがとう。クー」
なでなで。
ああ。撫でていると癒されるな~。クー可愛いな~♡
「じゃあ、早速」
繋ぎを取ってみましょうかとベットから起きようとするが。
トントン
「新庄さん。居る?」
ばたん
バタバタ
「新庄さん?」
ノックをしたから入っていいとは言ってないぞ。
せっかくのくつろぎタイムだったのに邪魔しおって。
「なっ、何の用?」
とっさにクーを隠すようにシーツの下に入れたが見られてないだろうか。
「新庄さん? どうしたの?」
つかつかとこちらを覗き込んでくる。
ってか、人がいいよと言ってないのに近付くのもどうかしてないか?
そう言うのはお前の事好き好きというオーラ出している。女達にしてやれ。
こっちはいい迷惑してるんだからさ~。
「なっ、何にもないよ!!」
ってか、こんなに近いトクー見えてない?
見えたらヤバいっ!!
「真常さん?」
ばれませんように、ばれませんように。
「新庄さん」
がしっ
強く手を掴まれる。
「大丈夫だよ」
なっ、ナニガダイジョウブでしょうか…。
「泣いていたのを隠さなくていいよ」
ふぇ?
「ごめんね。一人になりたいなんて言葉を鵜呑みにして」
きらきらとたらしオーラを出しているが、それにノックアウトされている子には有効だけど、私にしてみたらドン引きだったりする。
「あの、湯島君。放して……」
「遠慮しなくていいよ。ここは、俺と君しかいないから」
してね――。
「俺は心配なんだ。新庄さんはいつも周りを気にして、一歩下がっているから」
えっと、それ、誰。
「こんな時こそ、素直になっていいんだよ」
がしっ
「ぎゃあああああ!!」
悲鳴を上げてしまうのも仕方ないだろう。
だって、だって、
抱き付いてきたのだ。
「大丈夫だよ。俺が付いてる」
いや、あんたが怖いんだ――!!
「新庄さんは俺が守るから」
った、助けて。誰でもいいから。
「あの時……」
逃げようとしてるのにこいつ力強い。逃げ出せない。
「あの時、二人になれた時は、こうなるとは思わなかったけど」
怪我の功名かな。
耳元で囁くな。気持ち悪い。
あっ、鳥肌が立ってきた。
「恥ずかしがらなくていいよ。新庄さんはほんと奥ゆかしね」
だあぁぁぁぁぁれが、恥ずかしがっているって~~!!
寝言は寝て言え!!
ってか、近い近いっ。
寄ってくんな!!
苦しい。気持ち悪い。
もう、ダメ。
バッタ―――ン
魔王の魂なのだろうか。新庄真緒の心だろうか。
勇者の攻撃に気を失うという現実逃避を選んだのは。
――だから、聞こえなかった。
「恥ずかしくて、気を失うなんて、可愛いな」
と告げる声と、
「俺も新庄さんの事好きだよ」
かってに自分の事を慕っているというバカな勇者の勘違いを――。
小話 キャラの名前は基本呼びません。