疑心暗鬼
勇者。ハーレムと合流
「消えた…」
戦っていたはずの魔人が目の前から消え、居た場所には、
「リジー!! ローゼル!! パイシャン!!」
気を失ってはいるが無傷な三人の姿。
「良かった!!」
三人が無事で、
「……ここは……!?」
身体能力の影響かまず最初に女騎士が目を覚ます。
「どうしてここに、私は……?」
記憶を探るように呟いて、
「そうだ。あの婚約者の所に行ったのだ!!」
「婚約者……」
そう言えば、魔獣使いが現れて、魔人と戦って――正式には魔人〈リムクライン〉は魔獣使い〈シトラ〉を庇っていただけ――婚約者を逃がしてしまったな。
「追いかけなきゃ!!」
まだ黒と決まったわけじゃないし――状況的には黒だが、人間であるという思い込みで認識が甘くなっている――。
「ローゼルは二人を起こして、先に行っている!!」
被害が広がらないうちに、それに外には、
(新庄さんを待たせてる…)
彼女を危険な目に合わせるわけにはいかない。彼女は自分に巻き込まれたただの女子高生に過ぎないのだから。
そんな事を考えて外に出ると、
「……!?」
がやがやがや
何か外が喧しいなと思っていたら、人が魔獣に襲われている。他の所では起きてもおかしくないが、ここは魔物と人間の共存する街。そんな事は出来ないと思ってはいたが急に起こるとは思わなかった。
「辞めろ!! ”抵抗できない弱き者”!!」
魔獣に人が静止の声を上げる。だが、その声を聞いたとたん怒りでますます襲い掛かってくる。
そう、怒りだ。
「………まさか、実験の失敗!?」
今まで何もなく成功していたのがおかしいのだ。何らかのきっかけで暴走したのでは。
そう判断するとその魔獣に向かって攻撃を仕掛ける。
「……………えっ!?」
勇者の剣は魔物に有効だ。その攻撃に生半可の術は通じない。だが、
「*******(何をしている。人を襲わずにこの街から逃げろと命じられたはずだ)」
魔獣に向かって話し掛ける獣人。
「*******(だが、今まで虚仮にしてくれた人間に……)」
「****(我が君の命に逆らうのか)」
そう、話し掛けている。
「……」
魔獣に知識はない。本能のみで動いている。それが話しかけると言う知恵を使う事が出来るのだろうか…。
それに、
「”命拾いしたな”」
時折、魔物らしき声が届くのはどういう事だろうか。
『えっ、湯島君。聞こえないの?』
新庄が時折魔物を見て妙な反応するのに気付いた。まるで、魔物の声が届いているような動き、魔獣使いと言うのが彼女に与えられたチートだとしたら、彼女はもしかしたら……。
「いや、今考えるのはそこじゃない」
早く婚約者を探さないと……。
そんな事を考えながら走っていると、
「……?」
町の住民が固まっているのが見える。
しかもその手には鍬や鎌。包丁などが握られていて、
「魔獣使いだ。魔獣使いが研究所を破壊したぞ!!」
と叫ぶ声。そして、固まりの中心にはさっきの魔獣使いが居た。
さてさて勇者はどうするか?




