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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
魔王になりたい者
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魔獣使いの真実

真緒様は置いてきぼり

  第52話  魔獣使いの真実

 廃工場。その正体はとある実験の拠点。

 そこに計画の指揮者。領主の娘の婚約者になって、実験を進めていたかの者が出現する。

 現れるのは気にならない。だが、これはどういう事だろう。

「”うわああああああああ!!”」

 半狂乱になって、暴れながら、見えない何かから逃げている。

「”お方様!!”」

「”お方様!? どうなされたのですか!?”」

 側近が慌てて近付くが、

「”くっ、来るな!! そんな目で見るな!!”」

 腕を動かし暴れ、部下を寄せ付けない。

「”お方様……”」

 その目に部下は映ってない。何かに怯えている。

「”どうして…”」

 信じたくない。信じられない。

 絶望を宿した声が言葉を紡ぐ。

「”貴方様の為に、貴方様のかたきを討つのに、どうして、どうして…”」

 貴方様が止めるのですか。

 部下は彼が何を言っているのか分からない。ただ、分かるのは、居もしない何かに怯え、現実を見ていない。


 彼は絶望していた。そして、

「”……………勇者の供を連れて来い”」

 しばらく続くかと思った狂乱が止まり、命じる。

「”は、はい”」

 バタバタと走って、連れてくるように命じる側近。

「”そうだ。なら、見せてみよう”」

 認められなくては、あの方に褒めてもらわないと。

 目に宿るのは狂気。

「”勇者を倒して、私を認めてもらわないと”」

 

 勇者の亡骸を連れて、玉座に座るかの方の前で跪く。

『”我が君。かのにっくき勇者を倒しました”』

 そう見せる自分。そこでかの君が――顔は思い描けなかった――。

『”そうか。流石、我が最愛な部下だな***”』

 と名を呼んで下さる。


 そんな妄想を抱いて、

「”勇者の供は私自ら実験しよう”」

「”お待ちください!! お方様!!」

 慌てて止める側近。

                                  ・・・・・・・・・・・・・

「”勇者の供は魔族に対して理解力は弱いです。今までの成功例から見ると魔族を理解しようとする人間が魔族と交じりやすくなってます。そんな危険を冒しても!!”」

「”だからこそだ”」

 危険を冒さないと認めてくださらない。あの方に見せれば名誉はまだ挽回できる。

「”だからこそやってみる価値がある”」

 そう告げると同時に、

 

 きいいいいいい

 

 古くなって開けにくくなっている扉が開く。

「見付けたぞ!!」

 そこのは、勇者の姿。

「って、婚約者さん?」

 何でここにと尋ねる声に、嗤う。

「”まさか、運に見放されたという事か……”」

 信じたくない。ここまで上手くいっていたのだ。こんなところで…、

「……勇者様もここに来られたのですか?」

 そうだ。こんなところで終わらない。

「えっと、婚約者さん? "も"ってどういう事ですか?」

 不思議そうに尋ねてくるので、

「この場所は魔物の廃棄場所なんですが、そこで怪しい実験をしていると部下から連絡がありまして」

 そうだ。誤魔化せばいい。気付かれてない。ここを乗り切って油断させれば…。


「”我が君の命に従わないのか”」

「……我が君の命に従わないのか……」

 不意に声がして、

「”私の命をはき違えてる。我が君は、お怒りだ”」

「えっと、私の命をはき違えている。我が君は、お怒りだ…と言ってるけど」

 黒い鎧。自分が作り出した実験体に引き連れられた筈の青年が、どこからか現れた一匹の魔人によって救出されて、そう勇者に分かるように通訳している。

「えっと、魔人…!?」

 戸惑う勇者に構っていられない。そこに居る魔人から感じるのは力。そう、王に認められたという自信が力になっている。

「婚約者さん…?」

 勇者がどういう事か尋ねようとして居るがそんなの気にしていられない。問題はどうしてただの人間が我らの言葉を理解できるかだ。

「”………そういう事か”」

 やがて、それに気付く。

「お前。魔獣使いだな!!」

 だが、チャンスだ。勇者をこいつの足止めに使える。

「魔獣使い…?」

 信じられないと青年を見る勇者。

「ええ。もしかしたらこの黒幕はそこの魔獣使いかもしれません」

 魔獣使いは都合のいい存在だ。人にとっても魔族にとっても。


 魔族を理解しようとして、魔族と心通わせる人間は総じて魔獣使いと言われる。

 人間にしても魔族にしても都合が悪くなったらこう言えばいい。

「魔獣使いに利用された」

 と――。


 

真緒様は合流できるか

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