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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
魔王になりたい者
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種は芽吹いた

勇者は実は疑っている

  第51話  種は芽吹いた

 新庄に案内されて辿り着いたのは、

「工場…?」

 こんなのあったっけ、覚えてない。こんな大きくて目立つのなら街に来た時に気付いてもおかしくないのに、

「この中に三人は連れて行かれてたよ」

 心配そうに顔色が悪い新庄を見る自分は怪しまれてないかと挙動不審になってぎくしゃくしてる。

「湯島君?」

 どうかしたのかと窺う瞳。

「いっ、いや…。なんでも、何でもないからっ!!」

 いかにも何かありますと言ってるような自分の態度に、しまったと後悔するが、

「ふうん。なら、いいけど」

 気にしていない様だ。

(気にしてない。じゃあ、やっぱり…あれは気のせいだったんだ)

 そうだ。気のせいに決まっている。

 巻き込んでしまった。自分が守らないといけない対象。

 その彼女に。

『我が君』

 と呼んでいた魔物の声なんて、気のせいだ。


『魔物に知性はありません』

 この世界に来てすぐの頃。神殿の関係者が説明してくれた。

『我らの神。ユスティ様のお言葉はこうなってます。《かの者は獣。人に近しいのは見た目のみ、人を喰らい。人で遊ぶ、残虐なモノ。生まれは不明、その在り方も不明。ただ生まれ、ただ消える》となってます』

 動物に言葉は通じない。言語チートを与えられたのに動物の言葉は分からなかった。同じように、魔物の言葉も分からない。

『研究とかはされたのですか?』

 動物学者とかみたい居ないのだろうかと尋ねると、

『それが…』

 そう言う者が現れると、その者達は必ず魔獣使いとして覚醒してしまう。

『原因は不明ですが、魔物に近くなりすぎて変貌してしまうのがその理由かと』

 それゆえの禁忌。

『なら、魔物は神殿の情報しか無いのですね』

 情報が足りないと思ったのは最初の頃。最後になるとただ倒すという作業に代わっていた。

 倒せば倒すだけ信頼も実力も付く、ゲームの様だと思えて、行われる事もただのイベントにしか思えない。


(ああ。そうか、これはそういうイベント化。怪しい仲間が現れて、敵か味方か判断する)

 間違えたら裏切りイベントに行くんだろうな。そういう仕様だと言われたら納得してしまった。

「うわっ!! 怖いな~」

 危うく引っ掛かる所だった。


「湯島君」

 新庄が呼び掛けてくる。その際、何か――魔物の鳴き声――に反応する新庄も気のせいだろう。

 鳴き声が、言葉として聞こえたのは疲れていたからだろう。じゃなかったら今まで言語チートがなかったのに、急に聞こえるなんてありえないし。

「湯島君?」

「ごめん。ぼんやりしてた。新庄さんは危ないからここで待ってて」

 そうだよな。新庄は巻き込んだだけで何の力もない普通の女の子だし、疑うなんて悪いよな。


 そんな事を言い聞かせている段階で、疑っているという事実に蓋をする。

 無意識のうちに勇者は考えていた。

 巻き込んでしまったから非力でいてくれないと困る。

 そんな本音があるのに当の本人は気付いてない。


 そして、かの者の方もこの世界に来た異世界人であるという立場であるので、与えられていない情報があった。

 行動を共にしている巫女。神殿の関係者としか認識してないので気にしてなかったが、名に力が宿る世界なのに、神殿の神に名があり、伝わっている。

 その意味をまだ。誰も気付いてない。


 


真緒様ピンチ

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