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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
魔王になりたい者
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憧れ

ドSな真緒様

  第50話  憧れ

 旨くいっている。

 誰も立ち入れないようにしてある領主の屋敷の一室――婚約者となった自分に与えられた部屋でかの者は笑う。


 最初は魔法少女だった。

「魔物と共存する術式を教えてください」

 魔法に携わる者として興味があったのだろう。好奇心と共にやってきて、あっさりこちらの手に落ちた。

 

 次は女騎士だった。

「もし、魔物が暴走した時の対策はどうなっているんだ?」

 安全面を考慮して、実際に使用可能か尋ねに来て、部下に捕らえさせた。


 最後は巫女だった。

「神の僕としてあなたのやり方を確認させてください」

 綺麗事を言いつつも興味本位なのがスケスケだった。なので、術を掛けて抵抗を封じた。 


 勇者の供を素材として使用するなら成功させないと。

「そうだな。勇者を倒すのに使わせてもらおう」

 勇者の顔が絶望に歪むのが楽しみだ。

「――何を倒すのに使わせてもらうの?」

 声がした。誰も入れないようにしたはずなのに、

「お前……」

 声の方を見るとそこには一人の少女。

 闇や夜より深い黒。それを髪と瞳に宿した少女。

「どうしてここに…」

 勇者の供に確かに居たがかつて勇者の供に居たのは、巫女。魔法少女。女騎士。

 この少女はいなかったし、認識してなかったので、気にしてなかった。

 だが、

「”私の問い掛けに答えなさい”」

 命じる声。知らないはずなのに、魂を揺さぶる。

「”我が…”」

 本能が叫んでいる。この方は、この方の存在は…。

「”我が君…”」

 涙が溢れて止まらない。お会いしたかった。死んだなんて認めたくなかった。

「”お会いしたかったです。我が君!!”」

 死んだなんて嘘だったのだ。そうだこの方が死ぬなんて…」

「”答えなさい”」

 命じる声。その時になって、反応の冷ややかさに気付く。

「”我が…”」

「”お前の王は誰?”」

 冷たい声。

「”我が…”」

「”私は命じた。弱き者を守れ。それが強き者の役割だと。それをしないお前は誰の同朋?”」

 拒絶。

「”私はお前を認めない。むろん。お前の作った眷属も認めない”」

 崩れる。

 壊れる。

「”可哀想に”」

 憐れまれる。

 どうして…。

 どうしてこうなった?


 私は我が君の為に、我が君の復讐を考えて、我が君になろうと魔王になるために、ここまで来たのに。

 どうして?

 何を間違えた?

 私は…?


「うわああああああああああああああ!!」

 叫んで、叫んで、走り出す。そうだ。我が君に見せてない。私の努力の形を。

 見せれば認めてもらえる。

 分かってもらえる。

 そうだ。きっと。そうに決まっている。


「それが駄目なのに」

 呆れて呟く声。

「認めてもらおうと思っていたらまず、魔王になれない」

 魔王と言うのは業だ。自分のしている事が正しいと思わないと出来ない。それに指針を求めるのは何かを上に置いている他ならない。

「可哀想に…」

 もう自分の庇護下ではない。

「せめて、勇者に殺される名誉だけあげよう」

 名は知っているが呼ばない。名を呼ばないのは、認識していないと同意語。

 後片付けを勇者に押し付けて、見物でもしようかと判断して、意識だけできた自分は本体に戻った。



さて勇者。出番は用意しておいたぞ

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