渇望
少し敵さん(笑)の話
幕間 渇望
「”これで勇者の供とはな”」
彼は呟く。退屈そうに、
「”主さま”」
その傍らには彼の側近。
「”我が君を倒したのにこれでは…我が君を馬鹿にしているとしか思えない”」
床には勇者の供として、敬愛していた我が君を倒した者達。
罠を張った。
仕掛けに引っ掛かった。
暗示を掛けたにしては、
「”弱すぎる”」
こんな者らに我が君が倒されたのかと思うと跡形もなく消し去ってしまいたい。
とっさに力を紡ごうとしたら部下に止められる。
「”主さま。壊したいのは分かりますが、この者らは”」
「”……………………ああ、そうだったな”」
こいつらは大事な素材だ。
「”すぐに用意しておけ”」
命じると動き出す部下。
それを見つつ笑いがこみ上げてくる。
我が君が時折口にしていた高位の者。
どんな存在か分からないがその者らが味方しているのだろう。
「”待ってください我が君。今から、勇者の仲間の手で勇者を滅ぼして差し上げます”」
ほんといい場所だ。
魔族の小物を利用しての実験場。多少の犠牲は出るがこの者らも我が君の仇を討てるのだ喜んで犠牲になるだろう。
………そう言えば、我が君は、小物の魔族ほど可愛がり。良く愛でていた。あんな弱い者を愛でる所だけは理解できなかったが今思うと愛でてたからあの者らも我が君の仇を討ちたいだろう。
「”魔王になる条件の一つは生み出せるか”」
人間に成りすまして行うにはいい環境だ。
あの領主達も新たな魔王の役に立てるなら幸福だろうし。
我が君を滅ぼした勇者と言う希望を人間が奪うきっかけを作ったと知れば人間達の絶望は如何程のものか。
愉悦に浸り擬態した人間の皮が剥がれそうになっていたが彼は気にしてなかった。
「どうするのかしらね」
くすくすと笑う声。
「このおもちゃが敬愛する者を倒してもいいが」
「逆に敬愛する者に倒されても面白い」
「楽しい見世物になりそうね」
数人が楽しく愉快にその劇を見ている。
この劇に用意された俳優は気付いてない。
高位の者と呼ばれた者が味方をしているのは間違ってないが、それは今までの話。自分達の楽しみのために準備していただけ。それゆえ、彼はどう転んでも悲劇の主人公にさせられる未来しか用意されてなかった。
高位の者にとっては人間も魔族もおもちゃ




