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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
魔王になりたい者
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恋する者達

ロミオとジュリエット

  第41話  恋する者達

 長期滞在を言い渡されて、さっそく昨日の路地に向かう。

 朝も早い時間。その声はもう聞こえてきた。

「恋の歌かな……」

 恋愛のれの字も興味ないが歌詞を聞けば意味も分かる。

「……」

 そちらに向かうと案の定シトラの姿。そして、

「……」

 二階の窓だった。魔族が逃げられないように強度に創られた格子。その格子の中に一人の魔族が居る。


 見た目は魔族の中でも上位種である魔人と同じ人間の部分が多いが、その魔力の質は魔獣より弱い。人間よりは強いが、……あの魔法少女より弱いだろう。ウサギの耳を持つ女性の魔族は耳を動かしてじっとシトラの歌を聞き入っている。


 でも、何より雄弁なのは眼差し。熱を含んだその眼差しは自身も相手も燃やし尽くしそうな力を宿していて、たった一つの言葉を紡いでいる。

「”~~♪”」

 シトラの方も眼差しを気付いている。その熱に対して彼もまた熱を宿した眼差しを向け、恋の歌をただ一人に向ける。

 そこは二人の世界。誰も立ち入れない。

「また、あんたかい!! 毎日毎日うるさいんだよ!!」

 ばしゃああ

 シトラに掛けられる水。掃除か何かに使用した水は汚れていて、二階の魔族がとっさに手を伸ばしてしまうが当然届かない。

「”風邪ひいてしまう!!”」

 拭いてあげたいとせめて何かないかと探して、彼女が出したのは刺繍の綺麗なハンカチ。

 ひらひらとそれを落として祈るように見る。

「”それで拭いてください!!”」

 告げるが、

「まだ起きてたんだね!! ったく、せっかくの客から貰ったのを落として!!」

 シトラに水を掛けた人がそのハンカチを拾う。

「”……”」

 届かない好意に目に涙を溜めていく。

「”安心しろ”」

 そっと風の術で声を届け、旅をしている内に持つようになったタオルの代用に使用している布をシトラの頭に乗せて拭き出す。

「マオ…」

「おはようございます」

 のんきな挨拶。

「すみません。待ち合わせに使ってまして」

 とその水を掛けた女性に謝る。

「なら、さっさと移動してもらいたいね。こっちは今から休むとこなんでね」

 すみませんと頭を下げてその場からシトラを連れて去る。

「……」

「”……”」

 シトラと二階の魔族の視線が絡み合う。それを見ていると二人を引き離したようで後味が悪いが、あのままいてもどうにもならないだろう。

「……勘弁して」

 気分は主人公達を引き裂く邪魔者だ。


 取り敢えず、落ち着いた場所で綺麗に拭き取り、そっと風の術で乾かして風邪引かない様にする。

「”……もういいかな”」

 聞かれたくない話題は古代文明語で聞けばいいと口を開くと、

「”ありがとう…”」

「”………全然。ありがたく思って無い言い方ね。……で、あの魔族。もしかして、人間の血が混ざっているのかな?”」

 って、分かる訳ないか。

「”なっ、何で分かったんですか!!”」

 動揺しているシトラ。

「”………えっと。何となく”」 

 何となくとしか言えないよな。それに、

「”もしかしてだけど…あの店って……”」

 あの店を具体的に訪ねたいが、単語が見つからない。いや、それよりも、

(ああいう店をどう言えばいいの?)

 いわゆる風俗店なのだが、こちらの世界での言い回しが分からないのだ。

 色町とか花街とかいろんな言い回しは日本語にはあるが、こちらではどう言えば…。

「”…春を売ってます”」

 ああ、そう言えばいいのかって、

「”…個人的な疑問だけど。買うの?”」

 魔族をそういう対象に見るものだろうか……。

「”…まあ、色々。見た目が人間の部分があるから、動物の部分を気にしなければ綺麗だし、……征服欲とか。魔族に苦しめられたからという思いがああいう欲に繋がったと言うか…”」

「………」

 外見女子高生がする会話ではないと思いつつも、ついつい言ってしまう。

「”………これだから人間は”」

「”そんな事で人間を一括りしないで欲しいな。そうじゃない者もいるから”」

 と力無く告げてくる声。

「”ああ、ごめんなさい”」

 その数少ない例外に謝った。



 

シトラとの話は少し続くよ

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