名を与える意味
もふもふのためなら死ねる
第29話 名を与える意味
同族……。
「”魔族が? そんなはずは!?”」
「”残念ですが、事実です”」
「”それは・・・”」
何でだと尋ねようとしかけた時、
「新庄さん~」
と勇者が探している声が耳に届く。
「”…行ってくる”」
「”はい”」
もふもふ天国から離れるのは辛いが戻らないと怪しまれる。
「良かった!! 姿が見えないから探したよ」
心配そうに言われたのでさすがに申し訳ないと思ったら、
「いや、でもこの行方不明がイベントだったのかっ!?」
………前言撤回。
(なんで、こんな奴がいいんだろう。女の子って)
いまだに分からない。
「ごめんね。少し散歩していた」
取り敢えずそう誤魔化しておこう。
「…新庄さん」
「ん、何?」
「よくそんな体力あるね。さっきまで荷物持っていたのに」
あっ、しまった。そういえば荷物持ちにさせられてた。もふもふの力で回復したけど。
(もふもふってすごいな)
そんな事を考えていたら、どこかで弱い魔力の流れを感じる。
「新庄さん?」
呼び掛けられたが答えずに、そちらに向かう。
「狐……?」
ただの狐じゃない。夕日のようなオレンジ掛かった毛並み。その尾は二つ。
魔獣だ。
キイ…キイ…
弱々しい声。
このままではすぐに死んでしまうだろう。
「”名は?”」
問い掛けても答えられない。そんな気力もないのだ。
「新庄さん。それは魔物で…」
勇者が慌てて引き離そうとする。どこかで警鐘がなっている。
これ以上したら正体がばれる。
それでも。
それでも、私は魔族を守る王だ。
「”ラーセルシェードが汝に名を与える。名はアカネ”」
茜色の空からとっさに名付けた。
狐の魔獣は魔王である私に認識され、名を貰ったことで消えかけた魔力が戻ってくる。
「”もう、大丈夫”」
ほっと、声を掛けるが、すぐに勇者の方を伺う。
「しっ、新庄さん?」
信じられない者を見る目でじっとこちらを見ている勇者。
ばれた。
「……」
後悔はしてない。死にたくはないから攻撃されたら全力で逃げるつもりだ。
「新庄さん……。もしかして………」
どくんどくん
「魔獣使いだったの!!」
「ふぇっ!?」
なんだそれ、
「そっか、だからチート能力でなかったんだね!!」
………えっと、ドウイウ事?
正体がばれると思ってたのにその反応が分からない。
罠なんだろうか……。
答えは出ない。
勇者の真意は次回




