お帰り
タイトルで察してください
第267話 お帰り
溜息一つ。
「本当に帰ってしまうのですか……」
召喚された場所に居るのは今は一緒に旅をしてきた者達だけ。
「ああ……」
帰るのを止めようと思っていたのは最初だけだった。今は帰る気満々。
少し離れた所では新庄が新たに魔王になったシトラと冥王。精霊王。そして、龍の末っ子が繋いで龍帝と別れを言い合っている。
「これ以上俺が居てもね」
告げると仲間達が沈痛な面持ちになる。
「もう……」
会えないの……?
魔法少女の問い掛け。
「……」
答えられない。
奇跡は一回。
それが二回も起きた。
三回目は……。
「会えないだろうな」
異世界に言って勇者になった。それ何というゲーム? そんな奇跡普通は起きない。
だから……。
「お別れだ」
その言葉で抱き付いてくる仲間達。
別れたくない。
言葉ではなく態度で示される。
「みんな……」
それが嬉しかった。
ここに居ていいんだと言われた気がして。
ここに来れて良かった。
そして、
「分かれるのが辛いな……」
涙が零れる。
一度した別れだ。
もう会えないと思ったのが会えたのだ。
「なら!!」
巫女が叫ぶ。
「なら残ってください!!」
…………。
「そうだね……」
でも。
「もう決めたから」
思い直してくれたかと喜んだ三人の悲しげな顔。
「女泣かせ」
どこか揶揄う様に新庄が告げる。
「新庄さんは別れ話は」
「言い方が嫌だな。――済んだよ。もう会えないと思っていたのに再び会えたのが僥倖だった。そう言われた」
後、死んだら僕の元においでとも言われたな。
参ったと言いながらもどこか嬉しそうだ。
「さて。――帰るか」
新庄は迷いが無い様だ。
「新庄さんは……迷わないね」
当然。
新庄は笑う。
誇り高く。
「迷いは民を惑わせるからな」
王の矜持を持って――。
「叶わないな……」
新庄さんのその考えに、
「それに」
「んっ?」
「私が迷ったらリムの死が無駄になる」
犠牲を受け止め悔やまない。死んだ者に失礼だから。
「それに――」
新庄が声なき声で囁いた。
日本で心配している者がいる気がして。
光が包む。
周りがぼやける。
そして。
そして。
「お帰り」
――声が届いた。
次で終わりの予定です。年内で終わるかな。




