歴史が開かれる日
今までの流れと違う世界がそこにあるのを信じて
第266話 歴史が開かれる日
その日。重要な仕事をしている人々を除いて手を止めて、その映像に釘付けになった。
魔族の王――魔王。
人間の女王。
その二人が平和のための条約を結ぶ事になったのだ。
「警備と化している者以外は仕事を臨時休業してるんだろうな」
勇者の仲立ちという事で向かい合った両者をもう関係者じゃないからと遠くで眺めている。
「貴方はいかなくていいんですか?」
表に出たらいろんな意味で危険な立場になっている巫女が同じように離れたところでその様子を眺めて尋ねてくる。
「何で?」
「……貴方の立場は」
「魔族の勇者じゃろ」
巫女の傍にはカミーユ。
「人間になって正解じゃな。わっちが生きていた頃はこんな美味しい物はなかったのじゃ」
また別の神が身体を使っているようだな。
「魔族の勇者……ユスティの言っていたあれですか?」
「そうじゃ。魔王が現れるまでの繋ぎ。いや、お前が居なきゃ生まれなかった魔王じゃろ」
………。
「そうですね……」
人だった。
生き返らせて魔人にしてしまった。
「勇者が人の勇者ならそなたはかつて魔王じゃった魔族の勇者じゃ。そなたが動かなければ魔王も動かなかったじゃろうし」
パクパクとお菓子をつまみながらの発言。
会見には形ばかりの警備として女騎士と魔法少女。魔法少女の肩にはミニミニサイズの龍が乗っている。
和平のための話し合い。
形として残り、記憶として残るためのパフォーマンス。
長く争っていた両者が勇者と言う仲立ちで平和に向かっていく。
「それ考えるとあれもいい仕事したのう」
あれとは司祭の事だというのは分かった。
忌々しいのでさっさと忘れたい存在だ。
「――でどうする? 獣の王」
声が変わる。
「我らが人で遊ぶのを中止したが、あくまで停止ではなく中止だ」
宿っている神が変わったのだろう。
「勇者は甘い。人が恐怖体験をしても世代が変わると忘却する」
それでは変わらない。
「………」
まあ、確かに勇者の考えは浅い。だけど、
「人に執行猶予が出来たと考えればいいでしょう」
人になったけど私も魔王だなと自嘲気に笑って、
「遊びも時折休憩を挟むから面白いんじゃない」
告げる。
「――違いない」
笑う神。
「我らを面白がらせるかは人次第か」
「それの方が賭け事としてはいいんじゃない」
試してみれば?
「そうさせてもらう」
神は笑う。
「……それでいいんですか?」
巫女は不安そうだ。
神の真実を知って神職者である彼女は戸惑うが、
「いいんじゃない。この神たちを満足させれば」
滅びは遠ざけられる。
少なくても、
「美味しい物があるってだけで滅びも消滅もある程度回避できるでしょう」
そうそこから神の考えを変えるのはこの世界の住民がする事だ。
勇者も私も関与しない。
そう思いつつ、今までとは違う歴史の流れを見守った。
さてそろそろ




