勇者は逃げたかった。
もう時期終わります
第263話 勇者は逃げたかった。
勇者は逃げたかった。
勇者として煽てられ、崇められて、魔王を退治したら。その魔王によって保たれていた平和が壊れた。
その事実を認めるのも辛かったが、その魔王の転生が実は密かに思いを寄せていた――周りにはバレバレだったが――新庄で、色々踊らされて新庄を殺してしまったという思い込みで魔王になりそうになったり、まあ、その後もいろいろあって責任を取るために傀儡の勇者になったのだが。
「逃げたい……」
自分の声が周りに聞こえないと思うから漏れる本音。
「逃げちゃだめだよ」
諸悪の根源――冥王が明らかに面白がっている。
「そうそう。逃げても面白いかもしれないが、逃げない方がいい」
幼女――神の実体化している存在――カミーユと偽名を付けたが、彼女(?)は娯楽に為に傀儡の勇者であるのを知りつつも見物を兼ねて一緒に行動すると言い出して。
今、正規の仲間と新庄さん。王女と精霊王。冥王。龍。そして、幼女。
何この異色な組み合わせ。
いくらラノベでもあるけど組み過ぎだ。
因みにあの後。僅かに生き残っていた国の騎士が現れて、事の次第をわずかに残っていた国の上層部と他国の使者に説明をして――何で他国の使者が来たのか分からなかったが、新庄に言わせると、
「司祭の魔人ぶりと勇者の活躍。それら諸々を同時中継されれば慌てて事実を確認しに来るでしょう」
と言われた。
「人の都合の悪い所も流れたらどうするつもりだったのよ!! まあ、これで、この国を責めてくる輩を牽制できるだろうけど」
とも、言われた。
正直、牽制の意味は分からなかったけど。
それを新庄に尋ねると、
「攻める事で自国が不利益を被る。それだけ言っておく」
…………よく分からなかった。
顔に出ていたんだろう。新庄の目が冷たかった。
そして、それから何があったのか分からないが、あれよかれよという間に勇者の凱旋パレードが盛大に行われたのだ。
どういう事……。
「盛大でもないでしょう。これでもかなり自粛してるわよ」
隣でモブに徹してる新庄が呆れたように――新庄さん。毒舌になってますね――告げる。
「それでも、王族や重鎮が殺されたという事で暗くなりそうなのを勇者と言う広告塔を利用して話しをすり替えるつもりでしょう」
呆れたように、
「これで他の国が攻めてきたら勇者を敵に回したって言われるわね」
賢いわね。まさか生贄にした時はここまで化けるとは思わなかった。
そう告げる新庄。そして、
「湯島君が今巷でどういわれているか知ってる?」
「……? いや…」
「司祭と言う真の魔王を倒し、封じられていた女神を解放して、傀儡にされていた哀れな魔人の魂を救った。そして、司祭に抵抗していた魔族と手を組み。新たな魔王と人の同盟を築く最強の勇者だって」
どんな気分。
そう尋ねられて、
「逃げていい?」
と本気で逃げたくなった。
真緒様「勇者を隠れ蓑にして、ひっそりこっそり世界を安定させる計画が上手く言ったわ」
勇者「あれっ? そんな話だっけ?」




