諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます
別に最終回じゃないです
第262話 諸事情につき、勇者ハーレムの中に居ます
目が覚めたら、勇者のハーレムと魔王組に囲まれていた。
「あっ……」
帰されたんだと――どんな気まぐれか――実感して、
「姿が……」
狼じゃなくなっている。人に戻っている。
リムクラインの魔力が尽きたのだ。
「勇者!!」
そうだ。勇者は戻ってこれたのだろうか。
慌てて確認すると、
「新庄さん……」
困ったように勇者がある方向を見る。
そこには――。
「新たな賭けで、人の姿で見聞する事になった」
勇者にくっ付く幼女。だけど、その正体は――。
「高位の者……」
何したいんですか。これ以上この地で遊ばないで下さい。
文句を言おうとするが、その言葉が出ない。
見えない力で封じられたのだ。
「命で遊ぶな。終わらせるな。そう言ったので、要望を叶えてやろう。まあ、努力賞と言うものだな」
目の色がころころ変わる。おそらく一人じゃないのだろう。この身体を使っているのは。
「退屈でな。次の退屈しのぎは人間ごっこだ」
全然解決してない!!
「新庄さん……」
「私もう魔王じゃないから」
頑張ってね。
うん。
「見捨てないで!!」
「見捨てる? 私巻き込まれただけの女子高生だよ」
てへっ
「新庄さん!!」
わあ、勇者がぶち切れだ。珍し~(他人事)。
「まさか、高位の者をこうするとは……」
「侮れぬな」
冥王と精霊王が告げてくるが、あれっ?
「なんで二人とも女の格好……」
精霊王が妖艶美女の成るのはよくあるけど………。
おいっ、冥王!!
「面白いしね」
腐乱死体なのはわからないけど、片眼鏡をかけて知的な印象の少女に化けてる。
「獣の王……」
竜の末っ子が泣きそうな声で呼んできて、現実逃避をしたくて振り向くが、
「………っ⁉」
現実逃避出来なかった。
「冥王……」
お前だろう犯人は。
女物の服を着せられて――しかも似合っている――涙目になっている龍の末っ子。どっからどう見ても、
(男の娘だね)
うん。似合ってるよ。
「あの…冥王様………」
うん。勇者もドンびいてる。
「僕の考えではこれから勇者は冥王。精霊王。龍の子を惚れさせて助力を願い出た。という事にしたいんだ」
前例を作りたくない。
きっぱりと告げる声。
「別に、性別とか関係ないと思うけど……」
「大いにある」
冥王の言葉に精霊王も頷く。
「ハゼット? 千華?」
「人は性別でさえ優越を付ける。見た目でもね。僕や精霊王が男だとしたら、勇者を崇める者はこう喧伝するだろうね。勇者は冥王。精霊王を力を見せ付けて下に従えたと……」
ふざけてるよね。
「だけど男女ではそれが逆転する。勇者は冥王精霊王を惚れさせて、懇願すると惚れた弱みで願いを聞き届けた」
面白いだろう。
「その手の話は男の方が好きだし、いくら主役は男の勇者でも人々は冥王。精霊王を注目する」
だから、
「勇者は冥王達すらハーレムに囲ったという事実が必要なんだ」
冥王の言葉に、それは面白いなと判断して、
「ああ。それなら私が目立たなくなるね」
「新庄さんっ!!」
助ける勇者の言葉は端から無視してその手に乗る事にした。
がんばれ勇者(棒読み)




