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この作品のラスボスは神でした。

  第258話  神

 上り終わるとそこには多くの者。

『いらっしゃい』

 涼しげな声を掛けてくる女性。


『よう来たな』

 撃てば響く声で歓迎する男性。


 それから次々と声を掛けてくるかつて魔王か勇者だった者達。


『まさか来るとは思ってなかった』

『そうよね。私は勇者だけに賭けていたのに』

『私は魔王』

『どっちも来ないにしていたわよ』


 次々と告げられる声。


『賭け?』

 どういう事だと勇者が尋ねると、

『そのままの意味』

 神の一人が告げる。


『私達は賭けをしていたのよ。この世界。獣の王が支配する地域でね』

 くすくす

『きっかけはあの司祭と呼ばれていた男ね。あれが面白い変化を起こしたからつい興味が湧いて力を与えたのよ』

『我らの力の一部。神の力をね』

『そしたら、小娘一人の真名を奪って神に仕立て上げたのよ。あんな感じで神が出来るなんて思っても見なかったわ』

『一応神の末端に居たし、それも賭けに混ぜて似たが、いやはやまだ消えるはずのない魔王を退治させるために勇者を召喚したり、色々してくれてね』

『オモロかったな』


『それが神のする事なのかよっ!!』

 勇者が叫ぶが、

『――無理だよ。この者らにしてみれば怒りも娯楽にすぎない』

 どんな反応をしてもこの者らにしてみれば退屈しのぎにしかならない。


『――で、賭けはどうなったんですか?』

 もう終わっている筈でしょう。

 そう尋ねるとくすくすと笑い。


『ある意味世界の崩壊。ユスティの勝ちね』

 勝ち逃げよあの子。

 そう罵る姿も娯楽の一つ。


『あんたらは…⁉』

 怒りで叫び出している勇者を抑え、

『――賭けの景品はなんだったの?』

 冷静に冷静にと自分に言い聞かせて、問い掛ける。


『……』

『………』


 そこで反応に少し変化が起きる。

 答えないのだ。


 何かある。

 そう思わせるだけの沈黙。


『賭けって……』

 勇者もそれに違和感を覚えて尋ねる。


 ………蛇の尾を踏むようなものかもしれないが、試してみる価値はあるかもしれないと判断して勇者を止めない。


 一人の女神が答える。

『――利口な子は好きよ』

 にこり

 微笑む姿に毒が感じられる。


 婀娜花。


 その美しさで男を魅了して、領土の男全てを惑わして、女性の恨みを買い、勇者に倒されたかつての魔王が笑う。


『わたくしたちの望みは一つ。終わる事』

 終わる事?


『世界の崩壊……?』

『――あら、違うわよ。世界なんて興味がない』

 首を傾げて告げられる。


『世界に興味ないって、神なのに……』

『いい子ね。今代の勇者は』

 子供に対してのように告げる声。


『砂漠から砂金を探すのをどう思う?』

『海底に居る。新種の魚を見付けるのはどれくらいの確立?』

『星空を眺めて、消える寸前の星は見れると思う?』

 次々と告げる声。


『我らにとって人を見るのはそういう感覚だ』

『興味を持つ方が難しい』

 ましてや、勇者や魔王みたいに特徴的な力があればともかく目印が無ければ見落としてしまう。

『それでも……世界は?』

『同じ事の繰り返しで?』

 勇者の問い掛けに答える。


『欲があって魔王が生まれて、人の都合が悪くなったら勇者が現れて、人同士が争って、平和を望むという欲が生まれて。また魔王が現れて世界は一つになって、魔王の支配に人が都合悪く思い、また勇者が生まれて……』

 同じ事の繰り返し、

『平和を望めば魔王が生まれ、魔王が邪魔だと思えば勇者が現れる』

『何度も同じ事の繰り返し』

『学習しない世界に興味を持てと?』

 無理でしょう。


 神の言葉に返す言葉はない。

『だから終わりたかった。繰り返しを』

『すなわち神を辞める事』

『一人の神ではかなわない願いでも神全ての力があれば』

『望みは叶う』


 それが賭けの景品だった。






真緒『……どう倒そう』

勇者『無理ゲーじゃない?』

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