勇者の決着
”勇者”の決着。
ここテストに出ま~す
第254話 勇者の決着
「………」
勇者に止められて、どうして止めるのかと言いたくもなった。
と、同時に冷静に自分がそれをしてはいけないと気付いた。
「………頼める?」
声を掛ける。
「――任せて」
勇者は応える。
勇者の剣が輝く。
「さあ、司祭――」
「あっ、言っとくけど、ダサい中二病台詞禁止ね」
そこだけはっきり言っておく。
「………」
あっ、固まった。
「……力を使用する。大事なプロセスなんだけど」
「無詠唱でもいいでしょう。前から思っていたけど、漫画とかヒーロー物で必殺技を叫ぶと敵に逃げられると思うんだよね。何で叫ぶの?」
叫ばなきゃ発動できないものじゃないのに。
「新庄さん……」
お願いだからヤル気を削がないで。
そう懇願される。
「ああ。気にしないで。――単に自分の手で敵を討ちたいけど、立場とか諸々で敵を取ってはいけない事を思い出して、色々腹が立って八つ当たりしているだけだから」
「………それをこちらに向けないでよ」
誰だよ散々人に向かって苦手苦手言っていたヒトは。
「全然苦手じゃないよね。どちらかと言えば人をおちょくってる」
「いや、苦手だけど。……やっぱあれかな。私の対じゃなくなったからかな」
苦手意識が弱まったのかも。
改めて考えるとそう言えば苦手意識弱まった……。
「あっ!!」
謎は全て解けた。
「なっ、何っ⁉」
「いや~。もっと苦手というか嫌いなモノが出来たからじゃない?」
ある方向を見る。
「ああ……」
ずっと放置していた。
「じゃあ――頼む」
告げると一歩下がる。
「――任せて」
剣を構え、
「勇者は――多くの人に託されているから前に立てるんだ」
そう宣言する。
「………」
中二病台詞だね。うん。
もう突っ込まないけど。
(正直面倒だし)
「視線がいろいろ言ってるから!! 後、みんなものダサいと思うなら突っ込んでいいから!!」
勇者が叫んで、切なくなったのか。
「あっ、司祭に八つ当たりしてる」
司祭との戦い。
勇者は言葉ではなんだかんだ言っているが、その戦いは見ていて迫力がある。
――司祭が勇者を見ないでこっちを見ているのが腹立つが。
うん。
(こっち見んな!!)
「――羨ましいんだろう」
勇者が司祭に向かって告げるが、
(羨ましい?)
何が?
司祭も同じ思いだったのか――被りたくなかった――こちらを凝視していた目が勇者に向けられる。
「新庄さんに弱体化したとか散々言ってるけど、本音はあいつは未だに新庄さんの傍に居るあいつが羨ましいだけだろう」
私の傍に居るって?
あいつと言うのは……。
「その死を嘆かれ。必要とされ、死してから取り込むように喰われた。――羨ましいんだろう」
そこまで必要とされたリムクラインを。
「そして、今新庄さんの姿をかつての魔王に近付けたのもリムクラインの魔力だ」
だからこそ許せないのだろう。認めたくないのだろう。
「でかでかと売約済みって書いた紙が貼られているようなものだからね」
「黙れ!!」
司祭の攻撃が勇者に当たる。
「「「勇者!!」」」
勇者のハーレム組――もとい、勇者の仲間が叫ぶ。
「残念だな。あんたの望みは叶わない」
勇者の宣言。
形を持たないスライムの様に身体を変形させる司祭の身体が剣を避けようとするが剣は聖なる力を放ち、
逃がさず、追い込んでいく。
司祭の身体は溶けていく。
「勇者……⁉ 湯島正樹ッ!!」
真名を持って動きを封じようとしたのだろう。だけど、封じられない。
「――無理だよ」
今はお前の対だけど。
「俺はお前を対だと思ってない」
対は対等。
「俺はお前を対等だと思ってない」
お前だって俺を認識しようとしてなかったからお相子だよな。
司祭は四散する。
「我が君…」
消えていく身体で手を伸ばしてくる。
「我が君。我が君……」
勇者は睨む。
そして、私は。
司祭を一瞥せず。
ある方向を見ていた。
勇者はいじられたけど一応勇者として見せ場がありました。
めでたしめでたし。
(真緒様が活躍取りそうで冷や冷やしましたが)




