日本
誰も知らない。二人が消えた二本にて
幕間 日本
――どこからか歓声が聞こえる。
外の部活の様だ。
「サッカー部の丸岡君。かっこいいよね」
「それを言うならバスケ部の庄司君も」
きゃあきゃあと話す声。
「………」
バタバタ廊下を走っていく音に彼は苦笑する。
「先日まで『湯島君。湯島君』だったのにな」
仕方ないか。
湯島正樹。
新庄真緒。
この学校に在籍していたはずの二人を覚えている者はいない。
二人の席や名前はそのままになっているが、誰もそれに目を通さない。
見えてないのだ。
自分以外……。
はぁ~。
「早く帰ってこい」
二人の名前を見つめ自分は呟くと、飼育小屋に足を向ける。
鶏・ウサギ。
新庄の世話していた動物が人の気配に反応して――。
がっかりしている姿がはっきりと――他の人は無理だが――見て取れる。
「悪いな。真緒じゃなくて」
真緒以外世話をしてなかった飼育小屋。
何かあるとここに入って落ち込んでいた真緒。
「帰ってくるから。それまで我慢しろ」
告げると文句が――普通の人には無理だが――聞こえてくる。
真緒は本当に帰ってくるのか。
あちらの世界に定住しないのか。
死んでないか。
心配する声。当然だろう。
――あの日。
校舎内で奇妙な力を感じて二人の姿が消えたのを感じたのは自分と動物達だけだった。
自分はそういう日が来るのは分かっていたから不安も心配もあったけど冷静でいられたが、動物達はそうもいかなかった。
消えた新庄を案じる日々。
――餌も水も量が減っている。
「死なさないよ」
そう自分の身がどうなってもいいと新庄を守る者は居る。
・・
――自分は、それを信じればいい。
「信じて待つ。か……」
言うのは簡単だけど、実行するのがこれほど難しいとは思わなかった。
小屋の掃除。
水を換え。
そして餌の補充。
「帰ってくるからお前達はいつも通り生活していろ。――痩せ細ったら心配するだろう」
誰とは言わないが伝わっただろう。
ゆっくりと餌を食べる彼らに安堵して、健康状態をチェックしていく。
「……卵は産んでない」
餌を食べている鶏を横目に、確認する。
「まあ、それぐらいは仕方ないが、身体で詰まらせてないよな?」
詰まらせるとそれで病気になる。
「この学校は飼育小屋だけ立てて世話の事を考えてないからな。獣医に診せるなんて事になってもすぐに対応してくれないかも知れないからな。体調に気を付けろよ」
餌とかは脅して用意させたけど、獣医に診せるならそのまま安楽死にさせたらどうかと言い出す恐れがある。
まあ、そう言いださないためにもICレコーダーを用意して、録音できるようにしておくが――。
言い出したら動物愛護を訴えている所とかに出せばいいんだし。ああ、教育委員会とかでもいいか。
情操教育とか何らかの理由で作ったんだ。それくらいしてもらわないと――。
そんな事を考えながら、一通りチェックして小屋を出る。
「あの……里村君」
そんな自分に声を掛けてくる女子高生。
「お話が……」
おずおずと告げてくるその生徒は先日まで湯島ファンクラブの末席に居た子だったな。
「あの…その…」
またか。
湯島正樹の記憶が消えると女性達の人気がばらけてこうやって自分にも来るようになった。
湯島がいる頃は地味とかオタクとか散々罵っていたのにな。
呆れつつ、一応の流れを待って。
「悪いけど。……待っている人が居るんだ」
寂しげに遠くを見る。
嘘ではない。
そうやって面倒な事を片付けていった。
……彼の事は少しお待ちを




